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物理系魔法少女、もう終わろうよ
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「支部長! 私に行かせてください!」
休み時間でアカツキのライブを観て、危険だと判断した私は支部長に出撃許可を貰いに来た。
レベル5なので私の魔力を浴びても問題ないはずだ。だから許可は出る。
「ん~ダメっ!」
「今すぐ行って来ます!」
「ダメって言ったよね?」
私には「気張って行けよ」と聞こえたんだけど、どうやら違うらしい。
「なぜですか?」
「まずはギルドの仕事が残っているのと、ピンチじゃないから」
「ピンチのタイミングで行っても意味無いじゃないですか! 問題は早期解決、起こる前に正す!」
私が熱弁すると、支部長は一旦瞼を閉じて、考え込むように唸り始める。
時間稼ぎをされている気がして、イライラとして来る。
「ピンチを乗り越えないと、探索者としての成長は無いんだよ」
「もっともらしい事を言わないでください。もしもの時はどうするんですか!」
「え~配信観てるけどさ。星夜くんを敵視している感じはないから放置してるけどさ、この白い女の子魔法少女っぽいんだよね。近づいて欲しくない」
私がどうにかして許可を貰うと思考を巡らせていると、支部長は珍しい真剣な顔をしている事に気づいた。
魔法少女の誕生を知っている支部長が把握してない魔法少女が現在二名いる。
その事を危惧しているのだろう。
「とにかくダメだよ。最悪蘇生は可能だからさ」
「一度でも死んで欲しくない嫁心を分かってください!」
「ワカンナーイ」
◆
ドラゴンゾンビに向かって魔法を投げ返したが、それでちゃんと倒せただろうか?
確認したいところだが、それを可能にできる程の体力が俺に残ってない。
つーか、あの一撃が今まで以上に重い。
肉は一瞬で腐敗し、今では手から骨が見えているレベルだ。
何とか自力で腐食は遅らせているが、いつまで持つかは分からない。
「ダメですわアカツキさん! ドラゴンゾンビに負けてはダメですわ!」
シロエさんが必死に回復魔法を使ってくれるが、中々治らない。
頭だけの攻撃からは想像もできない火力の一撃。
もしかしたら、頭を再生させた後に攻撃するまでの時間、必死に溜めていたのかもしれない。
「アカツキさん! アカツキさん!」
『ちょ、マジでやばい?』
『いつも通りだと思ってたけど、違うの?』
『嘘やろ?』
『アカツキがこの程度でへばる訳ない!』
『さっさと立てよ脳筋魔法少女』
『なんで寝てるの? 早く帰ろうぜ』
ホログラム映像で見えるコメント欄。励ましや心配のコメントばかり。
ありがたい限りだな。ここまで真剣に観てくれて。
でもさ、脳筋魔法少女とか言わないで欲しいかな? それで笑える余裕すらないのに。
あ~身体中が痛いけど回復魔法でその痛みも和らいでるな。
てか俺、ずっと意識あるな。
案外余裕だったりするのかな?
「うごか、せる」
「アカツキさん! 復活しましたの!」
「ひでぇ。しんで、ない」
全身に力を入れて、腐食の進行を遅らせる。魔法と自己再生のスキルで回復をする。
骨がどんどんと筋肉に包まれて行く。
『復活のA!』
『良かった』
『生きてた!』
『知ってた』
『アカツキがこの程度でくたばる訳ないよな』
『さっさと立てよ』
『魔石回収しないと』
『ドラゴンソンビもさすがに復活しないよね?』
『もう大丈夫だろ』
『自力でドラゴンソンビになるなんて初めて観たぜ』
『もしも自分だったらって考えるとゾッとする』
『アカツキと助っ人さんだから勝てたバトル』
嬉しいコメントが流れるな。
「ぁー痛みに魔法が勝った」
「良かったですわ!」
治って座ると、シロエさんが飛びついて来た。
「良かったですわ! こんなところで死なれては困りますわ! 嫌ですわ!」
「魔法助かったよ」
シロエさんがいなければ俺は普通に死んでいただろう。
っと、まだ油断できる段階じゃない。
「確実に倒した確信を得るまでは油断しないようにしないとな」
もう何回痛い目にあっている事か。しかも同じ敵に。
魔石を回収してこんなところはさっさとおさらばだ。
最初の目標なんてもう眼中に無い。
今必要なのは安全に帰る事と、きちんと金を手に入れるために魔石を回収する事だ。
今回の報酬は折半だな。さすがにシロエさんがいないと勝ててない。
「魔石も腐って見つかりませんってオチはやめてくれよ?」
「あんだけ命を張りましたのに、それは嫌ですわね」
シロエさんと魔石を探す。
「緑色の液体は腐食属性が残っているかもしれませんので、触らないようにしてくださいまし」
「もちろん」
それくらいは分かる。
これってドラゴンゾンビの血なのだろうか?
そうだったらこの異臭も納得できるな。
新鮮なドラゴンソンビの血⋯⋯それは果たして新鮮と言えるのだろうか?
近くに奴がいる感じもしないし、魔石も見当たらない。
アイツの血で溶けたりしてないよな?
『しつもーん! 血って本体倒すと一緒に消えると思うんだけど、どうでしょうか!』
『おまっ!』
『アカツキ気をつけろ!』
コメントを流し見してたら、とんでもない事実を思い出した。
そうだった。血も一緒に消滅するはずだ。
それが残っている。それ即ち⋯⋯。
強風が吹き荒れた。
休み時間でアカツキのライブを観て、危険だと判断した私は支部長に出撃許可を貰いに来た。
レベル5なので私の魔力を浴びても問題ないはずだ。だから許可は出る。
「ん~ダメっ!」
「今すぐ行って来ます!」
「ダメって言ったよね?」
私には「気張って行けよ」と聞こえたんだけど、どうやら違うらしい。
「なぜですか?」
「まずはギルドの仕事が残っているのと、ピンチじゃないから」
「ピンチのタイミングで行っても意味無いじゃないですか! 問題は早期解決、起こる前に正す!」
私が熱弁すると、支部長は一旦瞼を閉じて、考え込むように唸り始める。
時間稼ぎをされている気がして、イライラとして来る。
「ピンチを乗り越えないと、探索者としての成長は無いんだよ」
「もっともらしい事を言わないでください。もしもの時はどうするんですか!」
「え~配信観てるけどさ。星夜くんを敵視している感じはないから放置してるけどさ、この白い女の子魔法少女っぽいんだよね。近づいて欲しくない」
私がどうにかして許可を貰うと思考を巡らせていると、支部長は珍しい真剣な顔をしている事に気づいた。
魔法少女の誕生を知っている支部長が把握してない魔法少女が現在二名いる。
その事を危惧しているのだろう。
「とにかくダメだよ。最悪蘇生は可能だからさ」
「一度でも死んで欲しくない嫁心を分かってください!」
「ワカンナーイ」
◆
ドラゴンゾンビに向かって魔法を投げ返したが、それでちゃんと倒せただろうか?
確認したいところだが、それを可能にできる程の体力が俺に残ってない。
つーか、あの一撃が今まで以上に重い。
肉は一瞬で腐敗し、今では手から骨が見えているレベルだ。
何とか自力で腐食は遅らせているが、いつまで持つかは分からない。
「ダメですわアカツキさん! ドラゴンゾンビに負けてはダメですわ!」
シロエさんが必死に回復魔法を使ってくれるが、中々治らない。
頭だけの攻撃からは想像もできない火力の一撃。
もしかしたら、頭を再生させた後に攻撃するまでの時間、必死に溜めていたのかもしれない。
「アカツキさん! アカツキさん!」
『ちょ、マジでやばい?』
『いつも通りだと思ってたけど、違うの?』
『嘘やろ?』
『アカツキがこの程度でへばる訳ない!』
『さっさと立てよ脳筋魔法少女』
『なんで寝てるの? 早く帰ろうぜ』
ホログラム映像で見えるコメント欄。励ましや心配のコメントばかり。
ありがたい限りだな。ここまで真剣に観てくれて。
でもさ、脳筋魔法少女とか言わないで欲しいかな? それで笑える余裕すらないのに。
あ~身体中が痛いけど回復魔法でその痛みも和らいでるな。
てか俺、ずっと意識あるな。
案外余裕だったりするのかな?
「うごか、せる」
「アカツキさん! 復活しましたの!」
「ひでぇ。しんで、ない」
全身に力を入れて、腐食の進行を遅らせる。魔法と自己再生のスキルで回復をする。
骨がどんどんと筋肉に包まれて行く。
『復活のA!』
『良かった』
『生きてた!』
『知ってた』
『アカツキがこの程度でくたばる訳ないよな』
『さっさと立てよ』
『魔石回収しないと』
『ドラゴンソンビもさすがに復活しないよね?』
『もう大丈夫だろ』
『自力でドラゴンソンビになるなんて初めて観たぜ』
『もしも自分だったらって考えるとゾッとする』
『アカツキと助っ人さんだから勝てたバトル』
嬉しいコメントが流れるな。
「ぁー痛みに魔法が勝った」
「良かったですわ!」
治って座ると、シロエさんが飛びついて来た。
「良かったですわ! こんなところで死なれては困りますわ! 嫌ですわ!」
「魔法助かったよ」
シロエさんがいなければ俺は普通に死んでいただろう。
っと、まだ油断できる段階じゃない。
「確実に倒した確信を得るまでは油断しないようにしないとな」
もう何回痛い目にあっている事か。しかも同じ敵に。
魔石を回収してこんなところはさっさとおさらばだ。
最初の目標なんてもう眼中に無い。
今必要なのは安全に帰る事と、きちんと金を手に入れるために魔石を回収する事だ。
今回の報酬は折半だな。さすがにシロエさんがいないと勝ててない。
「魔石も腐って見つかりませんってオチはやめてくれよ?」
「あんだけ命を張りましたのに、それは嫌ですわね」
シロエさんと魔石を探す。
「緑色の液体は腐食属性が残っているかもしれませんので、触らないようにしてくださいまし」
「もちろん」
それくらいは分かる。
これってドラゴンゾンビの血なのだろうか?
そうだったらこの異臭も納得できるな。
新鮮なドラゴンソンビの血⋯⋯それは果たして新鮮と言えるのだろうか?
近くに奴がいる感じもしないし、魔石も見当たらない。
アイツの血で溶けたりしてないよな?
『しつもーん! 血って本体倒すと一緒に消えると思うんだけど、どうでしょうか!』
『おまっ!』
『アカツキ気をつけろ!』
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それが残っている。それ即ち⋯⋯。
強風が吹き荒れた。
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