物理系魔法少女は今日も魔物をステッキでぶん殴る〜会社をクビになった俺、初配信をうっかりライブにしてしまい、有名になったんだが?〜

ネリムZ

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物理系魔法少女、変わらぬ結果

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 シロエさんに向かってバットを振り下ろす一瞬、空間が僅かにだが歪んだ。

 現れたミカエルが手を伸ばすと、俺の攻撃は完璧に弾かれた。

 「なんだ、それっ!」

 一瞬で出て来て、ただ手を伸ばしただけだと言うのに、俺の攻撃を完璧に弾きやがった。

 そんな事が可能なのか? いや、今は関係ない。

 「どうしてお前が出張って来るんだ!」

 怒りのままに叫ぶ。

 それに警戒する様子も怯む様子もなく、ただ事実と言わんばかりにミカエルは言葉を出す。

 「不穏分子の処分に来た。早急に処分するべきだと判断したのだ」

 「ミカエル様。ここはわたくしにおまかせ⋯⋯」

 「あくまで手助けだ。確実に処分する」

 「⋯⋯分かりましたわ。それでは、助力お願いします」

 厄介な相手に凶悪な相手が合わさってしまった。

 だけど俺に引く選択肢なんてない。

 クロエさんを自分の都合の良い状態になるまでリセットする? その工程のために何回もクロエさんを殺してる。

 殺しては食ってを繰り返している、双子の姉をだ。

 そんなシロエさんは歪んでいる。

 「どんな道理であれ、殺人は許容できない。ミカエル、お前だけは⋯⋯天使全てを俺は否定する」

 「くだらんな」

 ミカエルがゆっくりと俺に向かって歩いて来た。

 対して俺は全力で走る。

 一撃に感情を乗せて、殺意と怒りで気持ち的に増したスイングをお見舞する。

 天使はそれを躱す事はせず、手で受け流そうとする。

 「うがっ」

 違った。

 受け流すのではなく弾いたのだ。

 その衝撃が全身に周り、麻痺った感覚に陥る。

 その一瞬の隙を許してはくれない。

 間髪入れずに繰り出される追撃の一手。

 腹にミカエルの手のひらが触れるだけで、俺は面白いように吹き飛んだ。

 その先上空に広がる白い魔法陣から雨のような闇の槍が落ちて来る。

 「くっそ」

 バックステップで回避する。

 「苦しみを得た子供を自分達の都合で道具のように利用する。俺はそんなやり方を否定する。だからお前を、一発殴る!」

 「この世界は腐っている。全てをやり直さなければ修復は不可能だ。そのための礎だと思え」

 「思えるか! 人間は短い人生の中で一人一人が生きているんだ! 天使の役目のために差し出せってのがおかしいんだよ!」

 「くだらんな。その怒りがあるなら、そんな道具は使わずに拳でかかって来たらどうだ? 喧嘩と言うのはそうだろう?」

 なんか挑発に聞こえなくもないが、腹が立っているのは事実だし、殴りたいのもその通りだ。

 だから俺はステッキに見た目を戻して、懐にしまった。

 「行くぞ!」

 俺は地面を強く蹴った。加速した拳をミカエルに伸ばす。

 対してミカエルも俺に向かって拳を突き出す。

 ああ、一緒だ。

 前の時と同じ展開。前は俺が一方的に吹き飛ばされてボロボロになっただけだ。

 だけど、今の俺はレベルアップしてスキルのレベルも上がっている。

 「くらえやああああ!」

 さすがに一方的な戦いにはならないだろう。

 そう思った。

 「がああああ!」

 俺は一方的に吹き飛ばされた。

 相手には一切のダメージが入っておらず、俺にだけダメージが存在する。

 パンチの技術なのかなんなのか。

 殴るために突き出した右手が肩までボロボロになってしまった。

 血を流しながらも、歯を食いしばり立ち上がる。

 「あらあら。これはもう終わりでしょうね」

 シロエさんから変幻自在の闇の刃が伸びて来る。

 それを左手と蹴りを利用したがら破壊し、ミカエルの魔法を紙一重で回避する。

 直線的な光の魔法攻撃。単純だが火力と速度が高い。

 だけど、魔法陣を展開する動作があるために、回避は可能だ。

 「なんだこの違和感は」

 前と全く同じように俺だけ吹き飛ばされた。

 相手の殴る力はそんなに強いのかと、その時は思ったが今はそれに違和感を感じる。

 俺はレベルが上がって数値的には強くなっているはずなのだ。

 だと言うのに、全く同じ展開に⋯⋯それがおかしいんだ。

 なんで全く同じ展開になるんだ。

 相手の強さが変わった感じはしない。

 前は手加減していたって事も無いだろう。

 ならばなぜ、前と全く持って同じ結果になるのだろうか?

 「ああ、なるほど」

 わかったぞカラクリが。

 俺が強くなったけど、同じようなダメージを受けた理由が。

 攻撃が高くなった分、防御も強くなる。

 そして、ミカエルがパンチを繰り出すから力で負けたのかと錯覚していた。

 「物理攻撃反射をパンチに合わせていたんだな。殴って来いと挑発したのも、この状態に持ち込ませるため」

 バットを手のひらで弾かれた時の衝撃も、今考えたら物理攻撃反射だったのだろう。

 くっそ。厄介な力を持ってやがる。

 「分かったからなんだと言うのだ」

 「そうですわね」

 「分かったら、対策ができんだよ!」

 俺は足で地面を抉るように蹴り飛ばし、地面のブロックがミカエルに飛ぶ。

 ミカエルが魔法で砕こうとする前にシロエさんが魔法で破壊した。

 「反射攻撃への対策は知っておりますわよ?」

 「ああ、そうかい」

 だったら、俺は前に進む。

 ミカエルは大量の魔法陣を顕現して魔法を放つ。俺はステッキを鉄板にしてそれを防ぐ。

 シロエさんも魔法を飛ばすが、それは蹴りで破壊する。

 「また目の前に迫って来たぜ」

 「だからどうしたと言うのだ」

 俺とミカエルは同時に拳を伸ばす。
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