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一章 同格の管理者

38話 タクヤとロボの戦闘

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 管理者が居る管理ダンジョンの中身は様々な物がある。

 オーソドックスな迷路型、空中に居るような、空中を移動する形の飛行型。専用の機会などがある。

 そのような機械は外では使用禁止である。

 他にも野原のような広い空間でもあったりする。

 そんな様々なダンジョンがある中で、迷宮型のダンジョン、それはまだSSSクラスと言われて間もない頃の出来事。

 東京タワーの入口付近にあるゲートが活性化とは違う現象を起こした。それは、人々を恐怖させるには十分の現象であった。

 命名されたのは、ダンジョンバグであった。

 消えたり、また出現したり、ぐにゃぐにゃ揺れたりと、バグのような形に成ったのでダンジョンバグ。

 その原因は一人のモンスターによるモノだった。


 現在タクヤは人並みの長さがある針を持ってロボットと対峙していた。

 バトルノイドではなく、本当にロボットである。

 機械の見た目をしたロボットは表情が変わる事が無かった。

「対策されているようですが、それでどのようにわたしに対抗する訳ですか? 機械程度に負ける予定はないですよ?」

『カカカカ。所詮は綿の塊。その機械程度に負ける屈辱を味わうが良い』

「そうですか」

 タクヤは指パッチンをして、タクヤの背後から数体の小さな人形が躍り出てロボットへと飛来して行く。

『カカカカ。爆弾人形か。行け』

 ロボットは手を前に伸ばし、その手から小さな機械が出て来て、人形に触れて爆発する。

『綿と金属、力量は歴然だな』

「ふむ」

 タクヤは量産型の爆弾人形を毎秒六個作成出来る。

 三秒で十八個の人形を生産して、ロボットに放つ。

 しかし、ロボットはそれを瞬時に上回る数の機械を生産して爆散させた。

『物を大事にしないな』

「それは貴方もでしょう。それに、わたしの人形達の魂は生きている」

『それって、要は魂のリサイクルか』

「そうですね。わたしは人形を作ったその瞬間に魂が宿りますから」

 そう言う会話をしながら大きめの人形を作った。

 人形は剣を持ってトテトテと進む。

 そのコミカルな動きは普通に可愛らしいが、ロボットはその人形の繰り出す雷の如き斬撃をひらりと躱し、頭を掴む。

『さらばだ』

 手から火炎放射器が展開され、人形を火炎で包み込む。

「火、ですか」

『そうだ。お前の最大の敵である炎だ』

 タクヤの体は綿、人形である。

 高熱の炎で包まれたらタクヤでもタダでは済まないだろう。

 ロボットはそろそろ本番と言いたげに動くと、高速で移動する。

 足から展開された放射口から炎が伸びて、ロボットの動きを加速させる。

 ロボットは拳を作り、タクヤに向けて放つ。

 タクヤはバックステップしながら針でそれを防ぐが、それは良くなかった。

 炎で少し浮かび上がっていたロボットの加速によって、タクヤごと後方へと進む。

 拳の上辺りから放射口が出現して、そこに熱が溜まる。

 赤い銃口が出来て、高熱の炎がタクヤに向かって放たれた。

 タクヤは瞬時に加速して何とか躱すが、服装のタキシードが焼ける。少し先っぽが焦げた程度で終わった。

「⋯⋯」

 一瞬キレたタクヤだが、深呼吸して落ち着く。

 タクヤの背後に機械が出現して、刃を手にした機械達はタクヤに刃を振るう。

 それをスラスラ躱すタクヤ。時々針で攻撃を防いだりしていた。

 タクヤの懐からコロりと人形が落ち、空気が吸収されて大きくなった人形が剣を取り出し、機械を破壊する。

 ロボットが人形に向かって、上半身だけが回転する回転斬りを放ち斬ろうとするが、人形はそれを剣で防いだ。

『ぬ? ただの人形ではないようですね』

「タクヤ様の敵は排除する」

『流暢ですが、魔力の思念波ですね』

「ええ、そうですよ」

 ロボットの攻撃が防がれている隙にタクヤは瞬時にロボットの背後に周り、針を高速で突き出す。

 その連撃の速さは残像を生み出し、六本の針が同時にロボットに襲いかかろうとしているようだった。

 しかし、それはあくまで同時に見えるだけで同時では無く、連撃。

 そこの隙間を縫うようにロボットの背後から展開された数本の蜘蛛の足のような刃が防いだ。

「様々な武器が内蔵されているようですね」

『当然ですよ』

 ロボットの背中の武器が格納され、再び高速で展開されたのは大砲の口の大きさがある放射口。

 空気が凝縮され、赤き灯りを持つ。

「戻りなさい」

「御意」

 剣を再びしまい、小さな掌サイズの人形に戻り、内ポケットに入る。

 その瞬間にタクヤは大きく後ろに飛び退くが、ロボットの放った炎のレーザーはそんなタクヤの場所まで余裕で届く程だった。

「シュッ!」

 気迫と共に加速してその炎のレーザーの射線上から外れ、針を槍投げの要領で放つ。

 空気を切り裂くスピードを持った針をロボットは躱す。

 タクヤは針を放った手を強く引いて、それに合わせるように針はタクヤの元に戻り、ロボットには糸が絡まる。

『太い糸ですね。しかし、貴方の意図がどんなだろうが、関係ありません』

 ロボットの全身が高熱を帯びて、糸を焼き切る。

『貴方の攻撃は基本的に燃える。貴方の生産するゴミも燃える。つまり、貴方では勝てないのですよ』

「ゴミ、ですって」

『そうですよ。燃えるゴミ。貴方の作る人形はその程度の力で、結局はゴミなんですよ。ロボット、機械人形と比べると古風で、とても弱い』

「⋯⋯では無い」

『はい? 上手く聞き取れません。きちんと機械のマイクに届くように大きくはっきりとした声で話してください』

「人形達はゴミではない。わたしの大切な子供達です」

 タクヤが本気でキレた。

 しかし、それはロボットとしてはとても嬉しい事だった。
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