能力者とダンジョンがありふれた世界の最高位迷宮管理者〜ようこそ神が救いし世界へ

ネリムZ

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二章 能力専門学校

7話 新たな進展

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「良いじゃないですか。先生」

「ダメなものはだめです」

 先生は緑谷と言われた男の言葉を断固として拒否していた。

 先生の事をただ見守る俺達。

 緑谷は先生に接近して頭に手を乗せる。次の瞬間、先生の目から光が消えた。手から力が抜けたように、ストンと下がる。

 誰が見ても何かあったと分かる光景。そんな中緑谷は笑顔で言葉を出した。

「先生、教室の交換、良いですか?」

「はい、勿論です」

 先生が折れた。何かされたのは明白なのだが、アビリティを使っている様子はなかった。

 だからこそ混乱する。

「担任もこう言っているんです。皆さん、他の人の荷物もまとめて、僕達の教室に移動してください」

 加藤並と言う事が分かっているから、誰も文句を言わず、荷物をまとめ始めた。

 俺もただの高校生なので、同じように荷物をまとめる。だが、そこで反論する人が一人いた。

「いやいや、何かしらのアビリティ使ったでしょ! そんなの許されないよ!」

「ちょ、千秋」

 千秋との席は離れており、すぐに止める事が出来なかった。

 他の人の目は「面倒事起こすな」と言う目だった。

 俺は千秋に近づき、腕を引っ張って暴走を止める。

「だ、だけどさ天音。先生の目、洗脳系のアビリティ使ってるよ」

「⋯⋯金髪の君、言い掛かりはやめてよ。何か証拠はあるの?」

「うっ」

 アビリティは証拠が残りにくい。

 特に外的障害が出ない洗脳となると、余計分からない。

 しかも、アビリティを使った気配もないのだ。

「そう言う事だ千秋。こいつらは何かしたのは確かだろうけど、その証拠がない。変に問題起こすのは良くない。素直に下がろう」

「いやいや、なんでこっちが下がるのよ!」

「はぁ。そっちのモブ君は分かっているようだね。さっさと教師に従って移動するんだ。それと、変な言い掛かりを付けた僕に謝ってくれ」

 モブ君ってなんだよ!

「⋯⋯すみません」

「誠意が足りないよ?」

「おい、その辺で良いだろ」

 俺達は移動する。その途中で、他の生徒から俺への苦情が入った。

「なんでお前がリーダー気取ってんだよ」

「そうだよ!」

 少しイラッと来るが、深呼吸して落ち着く。

「この中でアビリティを持っているのは俺だけだ。アイツらと対等で話せるのは俺くらいだろ」

「その割には先に口出したのは千秋ちゃんだったけど」

「そ、その辺にして、私が悪かったし。皆に迷惑掛けてごめんね」

 千秋がしょんぼりしている。

 正面を歩く先生を見ながら、俺達の来た教室は汚かった。

 元々埃は溜まっていたのだろう。

 だが、加藤並のアイツらと、廊下の途中ですれ違い、ニヤニヤしていた他の生徒達のせいでさらに汚く成っていた。

「やり過ぎでしょ」

 千秋が呆れと怒り混じりの言葉を漏らす。その意見に賛成しつつ、俺は一枚のスペルカードを取り出す。

 これがあればすぐに解決だ。

 そう言えば、あの管理者はどうなってるんだろ?

 目を瞑り、集中する。

「天音?」

 あ、この学校に居ない。管理者がただのアビリティ保有者に負けたのか? ま、アイツ自体弱いだろうし、アビリティ保有者の方が強かったのだろう。

 一瞬で綺麗になった教室に驚きの声を漏らすクラスメイト。

 少し時間は掛かったが、今の担任担当の教科である公共を終え、俺は先生を呼び出した。

 他の教科もそこそこ担当教師が代わっている所があった。

 虚空を見つめる先生を人気ない場所に誘って、スペルカードを取り出した。

 最近では沢山のスペルカードを何時も手持ちに入れているが、管理が面倒くさくて、前はこんなに入れてなかった。

 だが、念の為、最近では沢山入れている。

 腐らないように毎日残ったスペルカードはメンテナンスをやって貰っている。

 ダンジョン内ではスペルカードを保存する倉庫があるのでメンテナンスの必要はないんだけど。

 俺の取り出したスペルカードは『状態異常回復』である。

 洗脳のアビリティは魔法系、状態異常の枠に入る。

「発動」

「⋯⋯む? どうした? 確か、雨宮君だ。⋯⋯あれ? なんだ、この記憶⋯⋯ッ!」

 先生が混乱している。

「覚えている事、ありますか?」

「ああ。すまない。勝手にこんな事に成って」

「先生のせいじゃないですよ。操られていたんですから」

「雨宮君、君も能力者だろ? アビリティについて詳しいか?」

「ん~そこそこ知っているつもりですけど、千秋の方が詳しかもですね」

「まぁいい。放課後、時間あるか? 覚まさせてくれた君に対して、相談がある」

 見た目に反して大人びしている坂月先生。

「分かりました。落ち着いてくださいね」

「ああ。少し休んでから調べ事をするよ」

 放課後、俺は坂月先生のもとを訪れた。

 千秋には念の為先に帰って貰い、護衛を隠れて付かせている。

「相談とは、なんですか?」

「そうだな。なぁ雨宮君、魔法系のアビリティを発動する時に、何かエフェクト的なモノはないのか?」

「ありますね。魔法を使う時は魔法陣、あるいは光のようなモノがあります」

「その例外は?」

「基本はないと思います」

 そんなのがあったらスペルカードに使っている。

 ウチの魔法研究チームが出来ないモノを人が使えるとは思えない。

 特殊能力であっても、魔法系なら何かしらの前触れはある。

「そう言えば、先生が洗脳された時、何もなかったですね」

「そう。そこが気がかりなんだ」

「確かに⋯⋯まぁ、何となく分かりますが」

「分かるのか?」

「はい。魔道具《マジックアイテム》です」

 アイテムを使えば、前兆無く魔法が発動したりする。

 スペルカードは魔道具では無い。

 火魔法『火球』を例に挙げると、スペルカードだと魔法陣が浮かび上がり、魔法を発動させる。
 魔道具の場合、火球そのモノが瞬時に飛んで行く。

 ただ、魔道具は後から制御が出来ないのが難点だ。

「魔道具⋯⋯持ち込み禁止の筈だが?」

「相手はヤンキー校ですよ? 校則なんて破ってなんぼでしょ」

「凄い偏見だな。だが、魔道具なんて持ってたか? そもそも、あの一瞬で洗脳出来るのか?」

「洗脳された時、相手の事をどう思いましたか?」

「え、それは⋯⋯とても愛おしく思った。この人の言う事ならなんでも聞いていいと思う、そんな気分に成った。盲目的に、彼を意識していた気がする」

 洗脳には相手に与える認識がある。今回の場合は好意を与える感じだったらしい。

 それもかなり強力。

 アビリティ保有者が作ったのか、迷宮管理者が作ったのか。分からない。

 もしかしたら道具を使う時にデメリットがあるかもしれない。

 だが、そもそもどこに装備していた? 分からない。

「そもそも、彼のアビリティはなんなんだ? 高校の関係上、能力者だろう?」

 他校の生徒の事は調べる事は許されないのか?

 緑谷⋯⋯ダメだ。こっちも調べてないから分からない。

 だが、あの青界的なポジションを見ると相当な強さを持つのだろう。ま、一般基準だけど。

「先生、気をつけてくださいね。今の、ウチの高校は、何かと物騒です」

「ああ、肝に命じてとく。君も彼女に気をつけるように言うんだな?」

「彼女?」

「千秋君の事だよ。あの子、気さくで良いよね。私もすぐにクラスに馴染めたよ。ま、君はある程度の距離をおいて居たが」

「陰キャなだけですよ。それと、千秋は幼馴染です」

「それにしては距離感が⋯⋯まぁいい。これからも何かあったら君に相談するよ」

「その心は?」

「君は、強いだろう?」

「何を根拠に?」

「逃げながらノールックでモンスターの攻撃を、しかも幼馴染共々躱す事が出来るのに、弱いって事はないだろう? しかも、君のアビリティはまだ隠している事があると思う」

「そうですか。ま、担任ですからね。守りますよ」

「私もそこそこ強い自信はあるぞ。もうこんなヘマはしない。ただ、入院中の担任も守ってやって欲しかったよ」

 夫婦喧嘩をどう守れと? どうして入院しているのか知らないとでも?

 嫁さんは身体を強化する強化系のアビリティ保有者で、喧嘩が行き過ぎて担任は入院。

 嫁さんは厳重注意となった。

 なので、無理です!
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