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若き向井の悩み.2
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今日の織さんはデレが強かった。
最近は店でも話しかけられることが減ったし、部屋にいる時も前より目が合わなくなった。
さすがにウザがられたと思いきや、僕のために怒ってくれてありがとう的なことを言いながら真っ赤になってクッキー出してくるし。
(大人だよなあれ?中二の女子とかじゃないよな?)
今朝は遂に俺が無意識に織さんに手を出したようで、遂に終わった…と思っていたら終始ニコニコして、鼻歌まじりに紅茶の準備を始めた。
(怒ってそうなときに限ってデレてくるな…俺をぶん回しやがって…)
それでも俺にとっては可愛いんだからもう末期だった。
「お待たせしました!」
「あざす」
カウンターに紅茶の香りが漂った。クッキーなのかタルトなのか、丁寧な感じのお菓子は確かに紅茶に合った。
「あの店、そんな遅くまでやってたんすね」
「ね。羽場を送った後にまだやってるかなぁと思って行ったら23時半まででびっくりした」
(新宿の花屋みたいだな)
「昨日はついでみたいに言ったけど、気になっててさ。前に行ったお店みたいじゃない?」
「あ、そうっすね。てか織さん紅茶淹れるの上手いっすね」
「任してって言ったじゃん。お店で飲んだのにはかなわないけどね…」
(これ俺のこと好きだろ)
俺は恥ずかしそうな織さんの顔に弱いのかも知れない。うっかり勃ってしまったのをごまかすため足を組んだ。
(あぁ、でも良いな)
この状態で何だが、織さんが俺の隣で笑ってるだけで幸せで、笑えてくる。
織さんの恋愛対象が男だと分かったし、羽場事件も友情でフィニッシュしたところだ。
織さんも吹っ切れて元気そうだし、この押しかけ下宿生活もいったん終了するのが良いだろう。
俺は組んでいた足を戻し、自称おうちデートを満喫した。
織さんが湯船にinしている間に、俺は洗い物を仕上げていた。
(この同棲感がなくなるのは寂しい、が…下宿とか言われてるしな。筋トレでもしたら見る目も変わるか?)
俺が織さんからのモテを意識していると、湯上りの織さんが出てきて俺の番になった。
(俺は織さんの前髪にも弱いのかもしれない)
浴室で煩悩と汗を流して部屋に戻ると、織さんが珍しくスマホを凝視しながら、何やら操作していた。
「ゲームでも入れたんすか」
「え!?あ、ううん、何か、広告から飛んだやつ」
「うん?珍しいっすね」
織さんがソファに座っていたので、俺は手前のカーペットに座り、ざっとSNSチェックをした。
「ふぅ…」
後ろから小さなため息が聞こえた。
「どしたんすか」
「え?…あぁごめん、やっぱり自分はスマホとかアプリとか苦手だなと思って」
(それ以前にテレビのリモコンからダメだろ。変な字幕モードになってたぞ)
思っても言わないのが愛なので、適当に慰めた。
「良いじゃないすか、俺でわかることならやりますし」
「…いつまでも、いると思うな親と向井って言うし」
「俺の方が長生きしますよ、織さん不養生が過ぎるから」
「…」
反応が無かったので、振り返って織さんを見た。
「織さん?」
「いや、ほんとそう。心配してくれてありがとう」
(ほっとけないんだよな…)
織さんの寂しそうな笑顔は好きじゃないのに、目が離せなくなる。
俺の視線から逃れるように、織さんはトイレに行ってしまった。
と、織さんのスマホがビービー震え出した。
(電話?)
あまりに鳴るので、テーブルからソファに動かそうと持ち上げた。
画面を見るつもりは無かったが、ふと目に入ったアイコンが気になった。
「織さん、電話かもっす」
「ん?あ、通知?だね。こわぁ…」
織さんはまたソファに座ってスマホを操作し始めた。
俺は視線だけ前のテレビに向けて、後ろにいる織さんに話しかけた。
「織さんは恋人探してるんすか?」
「えっ」
「婚活アプリとか。ああいうのも最初、通知めっちゃ来るなと思って」
(それを聞いて、俺どうすんだろう)
「あー…まだ、登録してみただけだけどね」
(目の前に俺がいるのに?)
情けない顔をしてそうで、振り向けなかった。
「そんなに俺って対象外っすか?」
「え?」
(分かってるだろ。羽場のLINEに負けてんだよ)
一人で浮かれていた自分が馬鹿だった。
俺が思うほど織さんは俺の事なんて意識してなかったんだから。
「どうしたの、向井君」
織さんがソファから降りて、隣に来た。
(俺だけこんなドキドキしてるんだ)
何も知らずに寄ってきた織さんの手を取って、後ろのソファに上体を押し付けた。
ひどい顔を見られたくなくて、織さんの首元に顔を埋めた。
「こんなに近くに男がいるじゃないすか」
(どうしたら俺を見てくれる?)
織さんの答えは残酷だった。
「向井君は学生だし、自分なんかよりもっと良い人と一緒になって欲しいから」
織さんをソファに押し付けていた手の力が抜けた。
(俺そんなにガキなんだ。好き嫌いの土台にも乗ってないじゃん)
「急にどうした…」
「俺じゃダメなら、もう…」
「殺して…」
最近は店でも話しかけられることが減ったし、部屋にいる時も前より目が合わなくなった。
さすがにウザがられたと思いきや、僕のために怒ってくれてありがとう的なことを言いながら真っ赤になってクッキー出してくるし。
(大人だよなあれ?中二の女子とかじゃないよな?)
今朝は遂に俺が無意識に織さんに手を出したようで、遂に終わった…と思っていたら終始ニコニコして、鼻歌まじりに紅茶の準備を始めた。
(怒ってそうなときに限ってデレてくるな…俺をぶん回しやがって…)
それでも俺にとっては可愛いんだからもう末期だった。
「お待たせしました!」
「あざす」
カウンターに紅茶の香りが漂った。クッキーなのかタルトなのか、丁寧な感じのお菓子は確かに紅茶に合った。
「あの店、そんな遅くまでやってたんすね」
「ね。羽場を送った後にまだやってるかなぁと思って行ったら23時半まででびっくりした」
(新宿の花屋みたいだな)
「昨日はついでみたいに言ったけど、気になっててさ。前に行ったお店みたいじゃない?」
「あ、そうっすね。てか織さん紅茶淹れるの上手いっすね」
「任してって言ったじゃん。お店で飲んだのにはかなわないけどね…」
(これ俺のこと好きだろ)
俺は恥ずかしそうな織さんの顔に弱いのかも知れない。うっかり勃ってしまったのをごまかすため足を組んだ。
(あぁ、でも良いな)
この状態で何だが、織さんが俺の隣で笑ってるだけで幸せで、笑えてくる。
織さんの恋愛対象が男だと分かったし、羽場事件も友情でフィニッシュしたところだ。
織さんも吹っ切れて元気そうだし、この押しかけ下宿生活もいったん終了するのが良いだろう。
俺は組んでいた足を戻し、自称おうちデートを満喫した。
織さんが湯船にinしている間に、俺は洗い物を仕上げていた。
(この同棲感がなくなるのは寂しい、が…下宿とか言われてるしな。筋トレでもしたら見る目も変わるか?)
俺が織さんからのモテを意識していると、湯上りの織さんが出てきて俺の番になった。
(俺は織さんの前髪にも弱いのかもしれない)
浴室で煩悩と汗を流して部屋に戻ると、織さんが珍しくスマホを凝視しながら、何やら操作していた。
「ゲームでも入れたんすか」
「え!?あ、ううん、何か、広告から飛んだやつ」
「うん?珍しいっすね」
織さんがソファに座っていたので、俺は手前のカーペットに座り、ざっとSNSチェックをした。
「ふぅ…」
後ろから小さなため息が聞こえた。
「どしたんすか」
「え?…あぁごめん、やっぱり自分はスマホとかアプリとか苦手だなと思って」
(それ以前にテレビのリモコンからダメだろ。変な字幕モードになってたぞ)
思っても言わないのが愛なので、適当に慰めた。
「良いじゃないすか、俺でわかることならやりますし」
「…いつまでも、いると思うな親と向井って言うし」
「俺の方が長生きしますよ、織さん不養生が過ぎるから」
「…」
反応が無かったので、振り返って織さんを見た。
「織さん?」
「いや、ほんとそう。心配してくれてありがとう」
(ほっとけないんだよな…)
織さんの寂しそうな笑顔は好きじゃないのに、目が離せなくなる。
俺の視線から逃れるように、織さんはトイレに行ってしまった。
と、織さんのスマホがビービー震え出した。
(電話?)
あまりに鳴るので、テーブルからソファに動かそうと持ち上げた。
画面を見るつもりは無かったが、ふと目に入ったアイコンが気になった。
「織さん、電話かもっす」
「ん?あ、通知?だね。こわぁ…」
織さんはまたソファに座ってスマホを操作し始めた。
俺は視線だけ前のテレビに向けて、後ろにいる織さんに話しかけた。
「織さんは恋人探してるんすか?」
「えっ」
「婚活アプリとか。ああいうのも最初、通知めっちゃ来るなと思って」
(それを聞いて、俺どうすんだろう)
「あー…まだ、登録してみただけだけどね」
(目の前に俺がいるのに?)
情けない顔をしてそうで、振り向けなかった。
「そんなに俺って対象外っすか?」
「え?」
(分かってるだろ。羽場のLINEに負けてんだよ)
一人で浮かれていた自分が馬鹿だった。
俺が思うほど織さんは俺の事なんて意識してなかったんだから。
「どうしたの、向井君」
織さんがソファから降りて、隣に来た。
(俺だけこんなドキドキしてるんだ)
何も知らずに寄ってきた織さんの手を取って、後ろのソファに上体を押し付けた。
ひどい顔を見られたくなくて、織さんの首元に顔を埋めた。
「こんなに近くに男がいるじゃないすか」
(どうしたら俺を見てくれる?)
織さんの答えは残酷だった。
「向井君は学生だし、自分なんかよりもっと良い人と一緒になって欲しいから」
織さんをソファに押し付けていた手の力が抜けた。
(俺そんなにガキなんだ。好き嫌いの土台にも乗ってないじゃん)
「急にどうした…」
「俺じゃダメなら、もう…」
「殺して…」
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