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真紀ちゃんの気もち
どうしてだろう
しおりを挟む滝の近くにあるお土産物屋さんで、手ごろなお菓子でも買って会社に持っていこうとした俺は、停止する。
……彼氏とデートする場合でも、職場にお菓子を持ってゆくべきなのか……?
たしか、テーマパークに行ってきたとかで、お菓子をもらった記憶が……
え、デートのときも、会社へのお土産とか考えなくちゃいけないの!? やばくない!?
この後、デートの間中、会社への土産を持って歩くことになるんだぞ。愛希との愛のデートなのにぃい──!
も、もしかして、抱っことか、ちゅうとかするときも、片手に会社への土産があるの……!?
──いやだ。
いやすぎる……!
デートのときだけは、ゆるして。
今度何かお菓子を買ってゆくから!
今日は、どこにも行かなかったことにしよう。
ちょっと涙目になっている俺に、愛希がちいさな胸を叩いてくれる。
「今日は俺が真紀ちゃんに、おごってあげるからね!」
なんて凛々しい彼氏なんだろう。
惚れちゃう!
「愛希、かっこいー」
「ほ、ほんと!? えへへへへ」
とろけるように笑って、俺と手をつないでくれる愛希が、かわいすぎて困る。
「この近くにね、おしゃれなカフェがあってね、ふあふあパンケーキと、すっごいパフェがおいしいんだって!」
きらきらの目で見あげてくれる愛希は、とびきりかわいい。
「じゃあお昼ご飯を食べたら行ってみようか」
りすみたいに可愛い愛希の瞳が、まるくなる。
「……え? お昼ご飯が、パンケーキだよ?」
な、なるほど?
「お昼ご飯を食べたら、パンケーキもパフェも、食べられないよね?」
「そ、そうか? デザートは別腹なんじゃ──」
「無理でしょ! カロリーも!」
ちっちゃな拳をにぎる愛希は、りすみたいに可愛い。
かわいすぎて、会話ができなくなりそうなので、あわてて頭を旋回させる。
「え、愛希、カロリーとか気にする?」
「全然してなかったけど、やっぱり、ぷよってなったら真紀ちゃん、引いちゃうかなって──」
「めちゃくちゃかわいー!」
拳を握った。
「……え……?」
「ちょっと、ぷよってして、ぷにぷにの、もっちもっちの頬になった愛希は、絶対めちゃくちゃかわい──!」
叫んだ。
だんだん紅くなってゆく愛希が、かわいい。
愛希は何をしてても、かわいい。
かわいいしかない。
「おやつだけだと、身体によくない。愛希は成長期なんだから、ちゃんと食べないと」
愛希のちいさな頭をなでなでしたら、ぷくりと愛希の頬がふくれた。
かわいい。
「毎日おやつばっかりで、ご飯を食べなかったら身体によくないと思うけど、一食くらいなら平気だよ!
真紀ちゃんと、パフェ『あーん♡』するんだもん!」
泣いちゃいそうな愛希が、かわいい。
「……な、なるほど……?」
愛希はかわいいから、パフェを『あーん♡』しても、かわいい。絶対かわいい。
……しかし俺、だいじょぶか……?
24歳はまだまだ、まだまだ若いと思うけど……高校生と援助交際してるおじさんに見えたりしない……?
泣いちゃう……!
「真紀ちゃん、いや……?」
しょんぼりする愛希も、めちゃくちゃ可愛いけど、そんな顔をさせたら絶対だめだ──!
「いやじゃない、ただ……俺は似合わないっていうか……援助交際に見えたらどうしようって──」
ぽかんと愛希が口を開けた。
「モデルさんみたいにかっこいー真紀ちゃんが、援助交際なんてするわけないじゃん。何言ってるの」
「いやだって愛希がめちゃくちゃ可愛くて若いから……!」
「ちゃんと彼氏に見えるよ! さっき、ちっちゃな子どもまで『いちゃいちゃしてる!』って言ってたもん」
くすぐったそうに愛希が笑う。
「だから、だいじょうぶ。
自信もって、真紀ちゃん」
ちゅ
愛希のくちびるが、頬にふれる。
「真紀ちゃんは、俺の最高の彼氏だよ!」
笑ってくれたら
抱きしめてくれたら
どうしてだろう
泣きたくなるんだ。
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