【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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BLゲーム、はじまるよー!

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 ヤエさまの服を宣伝するという目的もちょこっと果たした、春の大公宮舞踏会が終わりました!

 ら!

 次は、大公立学園の入学式だよ!

 とうとうBLゲームが、はじまっちゃうよ──!

 どきどきする……!

 悪役令息の伴侶(予定)って、何か役目あるのかなー?
 ……とりあえず、無言……?

 さみしい!

 もだもだしたキーアは、入学式に着てゆく服が、ヨニが縫い直してくれた、お古しかないことに気がついた。

 この間、ルゥイ殿下やレォやヤエさまに逢いにいったときの服くらいしか無地のがなくて、おでかけの時に着倒してたら、穴が開いちゃったよ!

 ひじと、ひざに、ヨニ特製のパッチワークが入りました。

 かわいい♡

「ヨニの腕は素晴らしくて、とっても可愛い!
 でも、これで入学式に出たら、ちょっと、貧乏炸裂じゃないかな……?」

 どう見ても、穴が開いたのをつくろいました、だよね?

「……前のキーアの服は、あんまり趣味じゃない……」

 あぅう。

 変な、うずまきとか入ってるよ。
 無地のほうがかっこよく見えるのに、なぜか変な柄を入れて売ってる変なパジャマみたいになってる。

 なぜ、この柄を選んだ──!?

 ヒョウ柄を失敗して、謎のゲル状物質型モンスターが繁殖しましたっぽい柄まであるよ! 泣いちゃう!

 いやモンスター柄が似合う人はいいんだよ!
 顔も名前も声もないモブだよ!?

 お家で着る分には、変なパジャマでいいけど、入学式で、うずまきは、なくない!?


「これで入学式は……ちょっとやだ」

 涙目になったキーアを、ヨニとトマが、ぽふぽふ慰めてくれる。

「ここはやはり、ヤエさまに頼みましょう!」

 お財布を握りしめたヨニが決断してくれたので、トマとヨニと一緒に、ヤエさまのお店までやってきました。

 しかし入学式、もうすぐだよ。
 縫ったりしてる時間は、ないと思うなー。だいじょぶかな?

「ヤエさまー、大公立学園の入学式に着ていく服が、欲しいですー。無地の簡単なのでだいじょうぶ! 見本とかに縫ったの、あるかなあ?」

 だぼだぼとか、ぴちぴちじゃなくて、着られたらいい!

 お願いするキーアに、ヤエの目が、きらんと光る。

「もしかして壇上で挨拶とかしちゃう?」

「しない。ただの合格」

 次席って書いてあったけど、間違いじゃないかなー?
 採点ミス? 他の人と書き間違い?

 首席じゃないし、名前も顔もないモブがあいさつすることなんて、絶対にない。
 声がなかったからね、ありえないよね!

 ルゥイ殿下と、レォの首席挨拶スチルは揺るがないぜ!

 はー♡ 今から楽しみだよー!
 今までは想像スチルだったけど、ほんとの生スチルだよ!

 よだれが垂れそうなキーアに、ヤエが笑う。

「楽しそうでよかった。でも、あいさつなしかあ、残念。大公宮舞踏会ほどじゃないけど、注目を集めるよね、大公立学園の入学式。キーアにどうかなって、試作で作ってた服が──」

 作業場に引っ込んだヤエが、白に青の刺繍が入った服を持ってきてくれる。

「これどう? ちょっと着てみてよ。調整するから」

「あの、この間の金額が精いっぱいなんですが……」

 お財布を握りしめながら相談するヨニに、ヤエが笑う。

「気にしなくていーって。これは調整して貸すだけ。ね? 貸衣装代は『ヤエが作った服だよ』って言ってくれたら大丈夫!」

「めちゃくちゃ宣伝します! ヤエさま、ありがとうー!」

 歓喜のあまり、超絶イケメンに抱きついてしまいました──!

「うわ。細くてちっちゃいのに、しっかり重量あって、かわいー♡」

 おしりに伸びてきそうなヤエの手に、トマとヨニの剣が刺さりそうになってる。
 




 どきどきの入学式、というより、ルゥイ殿下とレォさまの生スチル鑑賞会だよ!

 異世界転生、ありがとうー!

 はー♡ これからBLゲームが始まるんだよ。
 主人公と攻略対象がいちゃいちゃする、きらっきらのスチルが、目の前で生きてて動いてて、いー匂いがして、近くで拝めるんだよ!

 最高だ──♡

 歓喜にふるえるキーアは、ヨニとトマに着つけてもらった白い衣に身をつつむ。

「白を着る人って、勇気あるよねー。モブなのに、だいじょぶかな」

 ヤエさまの服を着られることがうれしすぎてあんまり気づいてなかったけど、真っ白なつややかな衣に青の刺繍が袖口と襟と裾、腰にもされていて、とても華やかだ。

 ……ものすごく目立ちそう。

 なんか、新郎みたいじゃない?
 だいじょぶか、顔も名前もないモブなのに──!

『ぷぷぷ』
『なにあの勘違い野郎』
『顔面と服が合ってなくない?』

 仲間のモブたちの声が、既に聞こえるよ──!

 幻聴を撃ち砕くように

「キーアおぼっちゃま、大変、大変お似合いです!」

「かんぺき!」

 ヨニとトマが赤い頬で拍手してくれる。


「……え、そ、そうかな?」

 照れ照れな頬が熱い。

 ちょろいのは解ってる!

 でも、大すきなヨニとトマがほめてくれたら、胸があったかくなって、だいじょぶかな、と思えるのです。


「まあ、一生に一度の大公立学園入学式だから、いっか!」

 ヤエさまの服を着るなんて、ファンとして涙が出るくらいうれしいよ!

 似合ってないとか、理性の声は聞こえないぜ──!


「ヤエさまに感謝ですね!」

 微笑むトマに、ヨニもうなずく。

「こんなにご立派になられたキーアおぼっちゃまのお姿を、魔道具で録画して、ご両親にお送りしましょう!」

「おお!」

 たぶん、ぶいぶいしてた先代の時に買ったのだろう、ちょっと古い型の、でも立派な魔道具をヨニが出してきてくれる。
 埃なんてかぶってない。さすが、ヨニ!

 せっかくなので、トマと一緒に魔道具の前に立った。
 録画のボタンを押したヨニが、ささささと早足で戻ってきてくれる。

「キーアですー」

「ヨニでございます」

「トマです」

 画面におさまるように、3人で、くっついた。
 くすぐったくて、笑みがこぼれる。

「皆で元気にやってますー! 今日は大公立学園の入学式だよ! いってくるね!」


 遠い両親に届くように、皆で笑って手を振った。






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