【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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まねっこ

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「そのお話で、こちらに……?」

 まだちょっと涙目なキーアは、ぷるぷるしながら聞いてみた。

『両方の講義を受けてね♡』というお話は、入学式の後でもいいんじゃないかな?

 せっかくのルゥイ殿下とレォさまの、はじめての真の生スチルを拝む、期待とよろこびまで、吹き飛んじゃうよ!

 ラスボスの圧で──!

 ひどすぎる!

 ずっとずっとずっとずっと楽しみにしてたのにぃいイ──!


「……僕に、こんなにおびえる子、初めてなんだけど……」

 ちょこっとハゥザ学園長が、しょんぼりしてる!

「ご、ごめんなさい、あまりに素晴らしいご尊顔に、ちょっとびっくりして……!」

 あわあわフォローしてみました。

「僕もキーアにびっくりしたから、お相子だね」

 微笑むハゥザ殿下の顔面が、輝いてる──!

 まぶしい!

「叔父上、質問に答えてあげてください」

 眉を寄せるルゥイは、ハゥザ殿下の輝くかんばせにも、ふつうの反応だ。すごすぎる。

「あ、あの、ルゥイ殿下は、何ともないんですか?」

 ラスボスオーラが、ものすごいよ!

 きょとんとしたルゥイは、微笑んだ。

「いちおう叔父上にも、ほんのすこしは倫理観があるらしくて、おいには手を出さないつもりなようで、僕は、範疇外なんだ」

『魔王を倒した』みたいに晴れやかな顔で宣言された!

「……そんなに喜ばないでくれる? さみしいんだけど」

 ふくれるハゥザ殿下が、かわいーです……?

 なんだこの人!
 ラスボスなのに可愛いのか!
 最強かよ!

 あわあわキーアは、ルゥイの背中に隠れた。

「ルゥイ殿下は、ハゥザ殿下の輝くかんばせも、平気なんですね」

「ああ、うん、自分に向いていないと『きらきらしてるなー』くらいだね。生まれたときから見慣れてるしね」

「す、すごいです、ルゥイ殿下!」

 尊敬の目で拍手した。

 いつも生あたたかい目で見つめてくれるレォも、クノワ先輩も、一緒に拍手してくれた。

 若葉の瞳を瞬いたルゥイが、ちょこっとうれしそうに胸を張ってる。

「えへん」

 ……え、ちょ……!

 か──わ──い────♡♡♡

 拝みました。
 反射です。

「キーアのまね♡」

 抱っこしてくれるルゥイ殿下が、とろけそうに甘いです……!

 きゃ──ぁ──あ──♡♡♡


「面白くない」

 ハゥザ殿下が、ぶっすりしてる。


「…………キーア…………?」

 レォの声が、大地をえぐってる。


「楽しい」

 クノワ先輩は、楽しくなってる!




「キーアの質問に答えていませんよ、叔父上」

 ハゥザ殿下に突っこめるのもルゥイ殿下だけだよ!

 すばらしい!

 拍手と尊敬で見あげるキーアに、ルゥイのまなじりがほんのり朱くなる。

 なでなでしてくれた。
 やさしい。

「ああ、キーアをここに呼んだ理由ね。
 騎士科と魔法科、両方の講義に出るなんて、きみが初めてだから、新入生代表であいさつしてもらおうと思って」

「………………は…………?」

 あんぐり口を開けるキーアに、ハゥザ学園長が微笑む。

「ルゥイとレォと一緒に、壇上であいさつしてね」

 何でもないことのように言われました。

 顔も名前も声もないモブが、ルゥイ殿下とレォさまの輝かしい新入生代表あいさつの生スチルの次に、あいさつぅう──!?

「…………はぁあァア…………!?」

 顎が落ちるんですけど──!


「……え、ちょ、ひどくない……? この僕に、なんて反応するの、この子──!」

 ハゥザ殿下が、ドン引いてる。

 よかった。


「その反応も、ひどすぎるんだけど──!」

 抗議されました。


「いやいやいや、ハゥザ殿下、それはあんまりにも無茶振りなんじゃ? 入学式、もうすぐですよね? あいさつって、事前に考えて、教員の方にご指導いただいて修正してから読みあげるものなんじゃ……」

 そういうものだよね?
 新入生代表のあいさつって。したことなんて、勿論ないけど!


「大公立学園の入学式だよ? それくらいできて、当然でしょう。次席合格の子があいさつするんだから」

 ぎゃ──!


「ま、間違いです! 俺が次席とか、そんな……!」

 ないないないないない!
 顔も名前も声もないモブだよ!?


「入学試験で、キーアは、とても立派だった」

 さらさらの青磁の髪を揺らして、レォが微笑んでくれる。


「大公立学園はじまって以来の、双方の講義を受講できる生徒なんだ。あいさつするに、ふさわしいよ」

 ルゥイのごつごつの手が、頭をやさしく撫でてくれる。


「キーアなら、できるよ」

 はちみつの微笑みで、励ましてくれる。


 やさしい言葉は、大変、大変うれしいのですが……!


 ………………。


 …………無理じゃね……?





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