【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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じゅわじゅわ




『きー?』

 不思議そうな風の精霊さんの声に、キーアは手をあげる。

「俺、キーア・キピアです。愛称は、きーちゃんです!」

 楽し気に風が揺れた。

『きーか。よろしくな。俺は風の──』

 不思議な音が、頭の奥に響いてく。
 やさしく厳しい、風の音だ。

「あの、お名前、聞き取れないみたいです。闇の精霊さんのも、風の精霊さんのも。人間が聞いたら、だめなのかも」

 名前には、力が宿るっていうからね!

「闇さんと、風さんとお呼びしてもいいですか?」

 聞いてみました。

『そこは様だろ』

 風さまに突っこまれました!

 あわあわキーアは、丁寧に頭をさげる。

「ごめんなさい、風さま!」

『よきにはからえ』

 ふふんと鼻を鳴らす音がした。

 ヒュアァ──!

 清かな風が、渦を巻く。

 目の前で、ちっちゃな3等身くらいの男の子の短い群青の髪がほわほわ揺れた。
 おっきくも凛々しい群青の瞳が見あげてくれる。

 群青の衣をまとう、うさぎさんくらいの大きさの、ちっちゃな精霊さんが、びっくりするくらいきらきらだ!

「風さま! すごい! かっこかわいー!」

『さもあらん』

 うむうむ腕組みしてる。かわいー!


『ぼぼ、ぼく、も……!』

 きゅるると闇が集束する。

 ふわふわの短い闇の髪が、キーアの鼻をくすぐった。
 おっきな闇の瞳が、キーアを見あげてくれる。

 真っ暗な闇のローブをまとう精霊さんが、心配そうに、ふるふるしてる。


『ぼ、ぼく、みえる?』

「見える! ぎゃ──! かわい──!」

 もだもだした。


「抱っこしていーですか!」

 聞きながら腕を伸ばしてた!


『……だ、だっこ?』

「ぎゅう!」

 抱っこしてしまいました。

 ほんのり、ひんやりしてる。
 ふわふわしてる。

 かわい──!
 ぎゃ──!

 ぎゅむぎゅむしました。


『お、おお俺も!』

 風さまが、ちっちゃな手を伸ばしてきたので

「ぎゅう!」

 一緒に抱っこして、笑う。


「か──わ──い──!」

『そうだろう、そうだろう』

 真っ赤なほっぺで、風さまが、うむうむしてる。


『……だっこ』

 きゅう

 ちっちゃな手で抱きついてくる闇さまが、天使だ──!

 きゃ──♡♡♡♡♡

 両手にちっちゃなとびきりかわいい精霊さん!
 天国か!

 もだもだしてたら、清かな水の音がした。


『なんか楽しそうなんだけど。逢ったこともない僕のこと、冷たそうとか思うなんて、ひどくない?』

 パシャン──!

 水の弾ける音がして、透きとおる水の髪が流れた。
 大きな水の瞳が、すねたようにキーアを見あげる。

「ご、ごごごごめんなさい、水さま!」


 ドゴォァア──!

 岩の砕ける音がして、黄土の短い髪が舞いあがる。
 切れあがる黄土の瞳が、キーアをにらみつけた。

『俺は、頑固』

「ご、ごごごごめんなさい、地さま!」


 ゴォオァアァオオ──!

 目の前で、炎が噴きあがる。
 灼熱のなかから、炎の髪が揺らめいた。
 おっきな炎の瞳が、うるうるしてる。

『……僕のこと、いかついって。偏見だよ!』

「ご、ごごごごめんなさい、炎さま!」


 心のなかで思うだけでも、だめだめでした!
 ごめんなさい!


『あ、闇ちゃんだ』

『俺らのこと、いやなんじゃねえの?』

『ちっとも交流ないよね』

 水さまと、地さまと、炎さまに言われた闇さまが、ちいさくなるのを、キーアは思わず背にかばう。


「闇さまが、皆さまと仲良くしたいと、おっしゃったので、俺がお逢いできないかと、お願いしたんです!」

『そうだぞ。一番に呼ばれたのが、俺さま!』

 風さまが、えへんと胸を張ってる。かわいー!


『……ああ、一番呼んだらいけないのを……』

『風か……』

『なるほど……』

『ちょ、ひどくない!?』

 涙目になる風さまを抱っこした。


「風さま、おやさしかったです!」

『そ、そうだよな!?』

 うるうるな風さまに、こくこく頷いたキーアは、皆を振りかえる。


「あの、よかったら、皆さんでお話しませんか? おいしいお茶を淹れますから」

 ヨニが!

 と思ったけど、ここ、大公立学園で、授業中だったよ。

 いや、今、闇のなかだけど。
 たぶん、まだ授業中のはず……!


「家に帰ったら、トマがドーナツを揚げてくれて、ヨニがお茶を淹れてくれます。よかったら是非、いらしてください」

 にこにこして、丁寧に頭をさげた。


『どーなつ?』

 色とりどりのちっちゃな精霊さんたちが、そろって首を傾げてる。

 か、かわい──!

 もだもだして拝んだ。
 反射です。

『よき。祈るがよい!』

 風さまが、うれしそうだよ。

『……きー、どーなつって?』

 ちょこちょこ、闇さまが、キーアの袖をひいた。

 か、かわい──!

 また拝んだキーアは、しゃっと起きあがる。

「あつあつで、じゅわじゅわで、あまあまのお菓子です!」

 揚げたてはね!


『おぉお!』

 風さまの目が、とろけてる。


『はぅ……!』

 闇さまのほっぺも、とろけてる。






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