【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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のれません




 皆で、ネメド王国ヴァデルザ領との国境に向かうことになりました。

「フィリ先生は、いらっしゃらないのですか?」

 手を挙げるキーアに、ゼァル将軍が眉をあげる。

「先に行ってくれている。森に入っているかもしれない民の探索、保護と避難を」

 なるほど。
 既にご活躍中でした。


 騎馬で、国境まで向かうことになったのだけれど、残念ながら前のキーアは両手にトマどーなつを持って頬張ることだけに一生懸命で、ニューキーアはロデア大公立学園の入学試験に合格することで精いっぱいだったので、乗馬スキルを磨く余裕はなかったのでした。


「……すみません、馬に乗れません……!」

 申し訳なく挙手するキーアと一緒に、ネィトも手を挙げる。

「僕も、馬はちょっと、自信ないです……ごめんなさい」

「僕も乗れないので、どなたか乗せてください♡」

 マェラの瞳が、輝いてる! やる気だ! 攻略対象の攻略をね。


「キーアは僕の馬にのせてあげる♡」

「俺が乗せる」

「え、ここは学園長の僕でしょ」

 ルゥイとレォとハゥザ学園長が、バチバチしはじめて

「あー、もー、じゃんけんしろ」

 ゼァル将軍の一声で、じゃんけんになりました。
 この世界でも、ちょっと手の形とか違うけど、じゃんけんがあるんだよ!


「でりゃあぁあアァア──!」

「うぉおおお!」

「ふんぬうぅうう!」

 じゃんけんの時の心構えじゃない気がする、たいへんな気魄で行われたじゃんけんで

「勝ったぁあアア──!」

 ルゥイが拳を突きあげました。


 さらさらはちみつポジなルゥイのキャラが、ちょっと崩壊してる気がするよ? 気のせいかな?



「じゃあネィトは俺が」

 ひょいとレォに抱きあげられたネィトが

「ありがとう、レォさま」

 ふつうにお辞儀してる。
『きゃー♡ きゃー♡』してないよ、ネィト! 悪役令息なのに!

 心配するキーアの隣で、マェラのぴんくの目が輝いた。

「じゃあ僕は、ハゥザ学園長の馬に──」

 腕に抱きつかれそうになったハゥザが、さっとマェラを避けてる!

「ガダ、乗せてあげて」

「ほーい!」

「わー♡ ガダ先輩、よろしくお願いしまーす! マェラです♡」

 切り替えの早いマェラ! さすが主人公!



 というわけで、キーアはルゥイが乗っけてくれました。

「だいじょうぶ? こわくない?」

「びっくりするほど高いし、思ったよりずっと揺れるけど、ルゥイと一緒だから。へいき」

 ふわふわ熱い頬で笑ったら、とろけるはちみつみたいにほわほわ朱いまなじりでルゥイが笑ってくれる。



 前のキーアの記憶によると、ロデア大公国はネメド王国の王兄が身分制度に反対して興した国、ということになっているし、その通りなのだけれど。

 大陸一のかんばせの平民(男)とネメド国王(男)の間に生まれた第一子である王兄が、王の血を継ぎながらも蔑まれ、差別されつづけ、王兄であるにも関わらず、魔物のはびこる大陸の魔界とも呼ばれるヴァデルザ領の隣の領地に押しこめられたことに憤激して興した国が、ロデア大公国だ。

 無くなっても痛くも痒くもない僻地で、特筆する産業も農産物も特産品も何もなかったために、激おこな王兄が離反して国を興しても『ああ、はいはい、ご勝手にどうぞ』スルーされたらしい。

『下賤な民の血と王の血を継ぐ穢らわしい存在を国外追放できて、うれしーな!』喜ばれる事態だったという。ひどすぎる。

 泣きながら離反した王兄は、ひどい差別に苦しんでいた下位貴族や領民たちと一緒に、ロデア大公国を興したんだよ。

 何にもなかった荒れ地を開墾し、今までなかった場所に宿場町をつくり交易網を整備し、顔面力を駆使して外交も頑張った結果、ちゃんと大陸で国として認められるようになりました。

 というわけで大公家は、すさまじい顔面力を誇り、ロデア大公国は大陸三大不思議のひとつである、なぜか魔物が湧くネメド王国ヴァデルザ領と隣接している。

 ネメド王国ヴァデルザ領は、敵国ドディア帝国とは地獄の天蓋とまで呼ばれるエベレストを超えるような山々に隔てられているので、ドディア帝国側では被害がないらしいけれど、森で繋がっているロデア大公国には、ヴァデルザ領主のすさまじい狩りをくぐり抜けた魔物が逃げてくることがあるのです。

 とくに秋から冬にかけては、厳しすぎるヴァデルザ領の冬から逃れてくるためなのか、食糧を求めてなのか、ロデア大公国に逃げてくる魔物がいる。

 毎年の恒例行事みたいに、騎士団と魔導士団が魔物討伐に向かうことになっていて、それがBLゲームの最終イベントに組み込まれたみたいだよ。

 今は春なので、ロデア大公立学園も始まったばかりなので、かなり異例です。


「ひどい立地だけど、ネメド王国のヴァデルザ領で魔物が湧くのを討伐し続けてくれているから、ロデア大公国の被害はこれだけで済んでるんだよね」

 ルゥイの馬に乗っけてもらったキーアは、後ろを見あげる。

 あったかいルゥイのぬくもりと、ルゥイのとろける香りに包まれて、頬が熱くなってしまうのは、攻略対象効果なので、どうか、ゆるしてください。

 ほわほわ朱いまなじりで、ルゥイが頭をなでなでしてくれると、やっぱりうれしくて、ふわふわ笑ってしまうのです。







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