【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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おまけのお話

むにゅう




 むにゅう!

 ネィトに、つぶされたままの口で、キーアは推しを見あげる。

「こ、こにゃにゃちにゃ! ゼァルしゃま!」

 ……うん。いたい。

 わかってる……!

 しかし、せっかく推しに逢えたのに、あいさつしないとか、ありえないから!

 ごあいさつしたキーアに、ちょっと笑いかけたらしいゼァルは、凛々しいかんばせを引きしめた。

「……いや、うん、その、こんにちは。
 これはキーアの店なのか?」

 ふしぎそうなゼァルに説明しようとするのに、ネィトが、ほっぺから、手を離してくれないよ!

「ね、ネィト、おきゃくひゃま、だひゃら……!」

 懇願してみた。

 すうっと、ネィトの目が細くなる。

「きーちゃんは、僕が見てる前でも、堂々と浮気するから」

 半眼だよ……!

「い、いにゃ、うわきゅ、じゃ、なきゅて、推し……!」

 ゼァルのごつごつの手が、ちょっと、おこらしいネィトの頭と、涙目なキーアの頭をなでなでしてくれる。

「まあ、うん、仲よしそうで、よろしい。
 じゃあな、キーア」

 かるく手をあげて行ってしまいそうなゼァルを、跳びあがったキーアは、あわてて止めた。

「ゼァルさま……! 果実湯作ってるんです。よかったら、ぜひ飲んでいってください!
 あったまりますから!」

 ネィトの手を振りきって叫んだキーアに、きびすを返そうとしていたゼァルが止まる。

「いや、でもネィトが泣きそうだから、別の機会に」

 微笑んでくれるゼァルが、大人だ……!

 こしこし目をぬぐったネィトが、キーアの背中にくっついた。

「……あ、あの、ゼァルさま、僕、態度がわるくて、ごめんなさい。……こんにちは。
 きーちゃんの作った果実湯、飲んでいってあげてください」

 キーアの背中から、ちょこっと顔をだして、赤い頬で謝る伴侶(予定)が、かわいいです……!

 思わず、ちっちゃい頭をぽんぽんした。
 紫の瞳がとろけて、ネィトが笑ってくれる。

 見つめたゼァルは、ちいさく笑った。

「……そうか。では、いただこうか」

「ぜひぜひ! お肌も、つやつやになりますよ!」

 たぶん!

 にこにこして果実湯をつくろうとするキーアを止めたのは、ヨニだ。

「キーアおぼっちゃま、差しあげてばかりでは、たいへんな赤字に!」

「そうです、キーアおぼっちゃま、俺たちは稼ぎに来たんですよ!」

「え、でもゼァルさまは推しだから──」

 推しは無料だよ!

 胸を張るキーアに笑ったゼァルが、ふところを探った。

「500だな」

「わー! お金を持っていらっしゃるなんて、さすがゼァルさま!」

「ありがたくいただきます」

 トマも、ヨニも、大喜びです!

「ネィトさまは?」

 にこにこするトマに聞かれたネィトが、目をそらした。

「ぼ、ぼぼぼ僕は──」

「お金を持ち歩かないんだろ。知ってる。ネィトには伴侶(予定)割引で無料。だからゼァルさまも推しで無料!」

 にこにこするキーアの頭を、ぽこんしたのは、みーだ。


『きー、あげすぎ、なのー!』

 きゅうっと、かわいい3つの瞳をつりあげた、みーに、しかられました……!


 みーに、しかられるなんて……!

 めちゃくちゃ、できない子みたいです……!






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