【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

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トマといっしょに里帰りだよ!

じゃーん!

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「じゃ──ん! 醤油もどき!」

 きのこ汁を掲げるキーアに、透夜が拍手してくれる。

 さっきまでの殺伐モード『愛するトマをたぶらかした、にっくき敵』から『くっちゃい醤油を持ってきた、ちっちゃい天使』モードに移行してるよ!

 変わり身はやすぎだよ、透夜──!


 ちょっと、うろんな目になってしまったキーアだけれど、気もちはわかる。

 この世界、洋風な食べ物はまあまあ似た味覚があるんだけど、和風がないんだよ!

 味噌とか醤油とかみりんとか絶望的だ。かつおぶしとか、昆布だしとかも、勿論ない。煮干しも、むり!

 この醤油も大豆じゃなくて、キノコだもんな。魚醤、ナンプラーが醤油っぽいみたいに、キノコ汁もいける、はず! くちゃいけど!


「お土産です。トマを救ってくれて、育ててくれて、ありがとう」

 きのこ汁といっしょに、丁寧に頭をさげて感謝を述べたら、透夜がちいさく笑った。

「トマを大事にしてくれて、ありがとう」

 ぴょこんとキーアは跳びあがる。

「大事にしてるって、わかってた!?」

 透夜は高い鼻を鳴らした。

「見ればわかる。当たり前だろ」

「なのに喧嘩売ってきた──!」

 涙目なキーアに、透夜が笑う。

「当たり前だ。トマを奪われたんだから。
 でも醤油は感謝する。真剣に! さっそく醤油ラーメン、作ってみよー!」

「おー!」

 キーアも一緒に拳を掲げてしまって、ふたりで笑った。


 トマのお父ちゃんと、ちょこっとなかよく、なれそうです……?



 キーアの見守る前で、透夜がそうっと瓶の蓋を開ける。

 むわんと立ちのぼる、異様な香気……!

「うわ、これくちゃいな……!」

 のけぞる透夜に、キーアはうなずいた。

「だばだば入れると、やばいっぽい」

「だな。ちょっと入れて、味を見て……なあ、山吹、これの匂いを消せそうな果物とか、香草とかわかる?」

 山吹色の髪の少年が来てくれて、キノコ汁を嗅いで、仰け反った。

「うわあ!」

 涙目だよ。かわいいよ!

「……どう? 消せそうなの、ある?」

 ものすごく真剣な透夜に、一瞬鼻をつまんだ山吹が、遠くから匂いを確かめた。

「すごいね。ああでも、これなら……」

 立派なキッチンにそびえたつ棚から、ちいさな手が次々に香草や果物を選んでくれる。

「こんなところかなー」

 おお、すごい!

 透夜といっしょに拍手したキーアは、しゃんと背を正す。

「キーア・キピアです。トマの家族です。よろしくね」

「ヤマブキだよ。よろしくー!」

 握手してくれました。かわいい。やさしい!

 激おこだったのは、トマのお父ちゃんな透夜だけみたいだ。ほっとしたよ!


「ありがと、山吹。キーア、醤油ラーメンに合いそうなのを探せ」

 命じられたキーアは、任務を遂行する。お父ちゃんだからな。

「お、これ、コショウだよ、こしょう!」

「おお!」

「あと意外にさんしょっぽい、さわやかなのもいけそう。これとか?」

「やるな、キーア!」

「ふふふん」

 おもわず胸を張ってしまいました。

「さすがキーアおぼっちゃま」

 トマとヨニが拍手してくれる。やさしい!



 鍋を火にかけ、香草と鳥スープと、ちょっぴしのキノコ汁を合わせて、味見した透夜が飛びあがる。

「醤油ラーメンだ! ほれ!」

 差しだされた小皿から、そうっとスープをすする。

 鼻につく匂いはだいぶやわらかになって、さわやかな香草の香りと、なつかしいしょっぱさが舌に広がる。

「おぉおおお!」

「ここに、麺を入れてー、焼き豚ないから、焼き鳥入れて、メンマとかまぼこないから、もどきを添えたら、どうだ──!」

「醤油ラーメンだぁああア──!」

 ふたりで手を取りあって、飛びあがって喜んだ。

 皆の目がなまあたたかくなってるけど、見えないことで!


 ひとつの丼から、ふたりでずるずるすする。

「うまあ!」

「醤油だ」

「ラーメンだ!」

「すごい!」

 ふたりで、泣いてしまいました。



 なつかしい、なつかしい前世の記憶。

 今はもう遠くて。

 でも、味覚を刺激されたら、涙がにじむ。



 わかちあえる人が、トマのお父ちゃんだなんて、すごい。








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