【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
162 / 209
ゼァル

ふたりで

しおりを挟む



「遠乗りに行かないか」

 ゼァル将軍が誘ってくれたら、キーアにはもちろん「はい!」しかない。


 デートだよ……!

 きゃ──!

 いや、ゼァルにとっては、ただ単に暇だったから、手近な学生を誘ってみただけかもしれない。


 キーアのことなんて、きっと、何とも思ってない。


 最愛の推しに実際に逢えたから、近くにいてくれるから、手をのばせばふれられるかもしれないからといって、はき違えたりしない。

 でもでも、誘ってくれたのは泣いちゃうくらいうれしくて、できるなら、最高にかっこかわいー自分を見てほしいと望んでしまうのです。


 ゼァル将軍とふたりでお出かけなんて、一生に一度かもしれないから──!


 というわけで、おすがりするのは、ヤエさまです。

「ヤエさま、遠乗りに行くための、最高にかっこかわいー服を作ってください、お願いします──!」

 泣いて頼んできらきらひらひら可愛い白い乗馬服を作ってもらった。

 風になびくようにフリルがついてて、でも乗馬の邪魔にならないように考えてくれたんだよ。さすがヤエさま!

 ヤエが作ってくれる服は、いつだってすごい。
 でも可愛い服を着るたびに思うんだ。
 自分には分不相応、似合わないんじゃないかって。

「ちょっとはましに見える?」

 ものすごく心配して聞いたキーアに、トマもヨニも微笑んでくれる。

「だいじょうぶですよ、キーアおぼっちゃま」

「大変お可愛らしゅうございます」

 やさしいしわの手で頭をなでてくれるヨニに、照れくさい頬で笑った。







 キーアの渾身の祈願の成果が出たのか、約束の日はよく晴れた。

 ほんのり霞むような春の空を背に、白馬に乗ったゼァルがお迎えにきてくれるとか、輝きすぎて、まぶしい──!

 BLゲームにはなかったゼァルのお迎えに感激したキーアは、もちろん拝んだ。


「おはよう、キーア」

 白馬から飛び降りるゼァルが、かっこよすぎて、つらい……!

 鼓動が駆けてゆく音を聞きながら、キーアは熱い頬でゼァルを見あげる。


「おはようございます、ゼァルさま」

 眼帯をしなくなったゼァルの鋼と紫の瞳が、キーアの装いに見開かれた。


「白か」

「だ、だめですか……!」

 泣きそうなキーアに、ゼァルのほうが、ぎょっとしたようだ。

「いや、汚れるぞ。舞踏会用の服ではなく、平服でいいんだ」

 紀太と融合したキーアは思う。
 こういうところが、BLゲームで『イベントが楽しくない』言われてしまった原因なのだろうと。

『自分に逢うために、おめかししてくれたのか』
『かわいいな』
『見違えた』
 とか一言もなく

『汚れるぞ』

 確かに間違いなくそうでした──!

 しょんぼりうなだれたキーアに、凛々しいゼァルが、わたわたしてる。

「……い、いや、その……よ……く、似合って、いる、と……思う。だから、汚れたり、破れるのは……」

 ぽそぽそつぶやかれる声に、ぴょこんとキーアは跳びあがる。

「ありがとうございます!」

「……いや……うん、その、着替えてくると、いい」

「はい!」

 たかたか駆けだすキーアの後ろで、スーパー従僕のトマが微笑んでくれる。

「おはようございます、ゼァルさま。もしよかったら、お茶菓子を。揚げたての、どーなつです」

 みはられたゼァルの鋼と紫の瞳が、あつあつドーナツを見つめてる。


「……これが……皆が夢中になるという、魔性のどーなつか──!」


 魔性になったらしいです。

 さすがトマ。







────────────────

 ずっと読んでくださって、心からありがとうございます!

 ゼァルルートです!

 きーちゃんはすべてそんな感じですが(笑)突貫でお書きしています(笑)

 今、ゼァルが『白か』と突っこんでいるのに、表紙のゼァルが白いことに気づきました……!(笑)

 えー、光の加減で、灰色っぽいのを着ているということでお願いします!(笑)


 せっかく10話もあるので、きーちゃんとゼァルがくっつくまで、どきどきをお届けできたらいいなと思います。

 いちゃらぶもちゃんとあるので(笑)楽しんでくださったら、とてもうれしいです!




しおりを挟む
感想 201

あなたにおすすめの小説

妹を救うためにヒロインを口説いたら、王子に求愛されました。

藤原遊
BL
乙女ゲームの悪役令息に転生したアラン。 妹リリィが「悪役令嬢として断罪される」未来を変えるため、 彼は決意する――ヒロインを先に口説けば、妹は破滅しない、と。 だがその“奇行”を見ていた王太子シリウスが、 なぜかアラン本人に興味を持ち始める。 「君は、なぜそこまで必死なんだ?」 「妹のためです!」 ……噛み合わないはずの会話が、少しずつ心を動かしていく。 妹は完璧令嬢、でも内心は隠れ腐女子。 ヒロインは巻き込まれて腐女子覚醒。 そして王子と悪役令息は、誰も知らない“仮面の恋”へ――。 断罪回避から始まる勘違い転生BL×宮廷ラブストーリー。 誰も不幸にならない、偽りと真実のハッピーエンド。

【完結】悪役令息の従者に転職しました

  *  ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。 依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。 皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ! 透夜×ロロァのお話です。 本編完結、『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけを更新するかもです。 『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も 『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!(笑) 大陸中に、かっこいー激つよ従僕たちを輸出して、悪役令息たちをたすける透夜(笑) 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

無能の騎士~退職させられたいので典型的な無能で最低最悪な騎士を演じます~

紫鶴
BL
早く退職させられたい!! 俺は労働が嫌いだ。玉の輿で稼ぎの良い婚約者をゲットできたのに、家族に俺には勿体なさ過ぎる!というので騎士団に入団させられて働いている。くそう、ヴィがいるから楽できると思ったのになんでだよ!!でも家族の圧力が怖いから自主退職できない! はっ!そうだ!退職させた方が良いと思わせればいいんだ!! なので俺は無能で最悪最低な悪徳貴族(騎士)を演じることにした。 「ベルちゃん、大好き」 「まっ!準備してないから!!ちょっとヴィ!服脱がせないでよ!!」 でろでろに主人公を溺愛している婚約者と早く退職させられたい主人公のらぶあまな話。 ーーー ムーンライトノベルズでも連載中。

なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?

詩河とんぼ
BL
 前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?

処理中です...