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ゼァル
ふたりで
しおりを挟む「遠乗りに行かないか」
ゼァル将軍が誘ってくれたら、キーアにはもちろん「はい!」しかない。
デートだよ……!
きゃ──!
いや、ゼァルにとっては、ただ単に暇だったから、手近な学生を誘ってみただけかもしれない。
キーアのことなんて、きっと、何とも思ってない。
最愛の推しに実際に逢えたから、近くにいてくれるから、手をのばせばふれられるかもしれないからといって、はき違えたりしない。
でもでも、誘ってくれたのは泣いちゃうくらいうれしくて、できるなら、最高にかっこかわいー自分を見てほしいと望んでしまうのです。
ゼァル将軍とふたりでお出かけなんて、一生に一度かもしれないから──!
というわけで、おすがりするのは、ヤエさまです。
「ヤエさま、遠乗りに行くための、最高にかっこかわいー服を作ってください、お願いします──!」
泣いて頼んできらきらひらひら可愛い白い乗馬服を作ってもらった。
風になびくようにフリルがついてて、でも乗馬の邪魔にならないように考えてくれたんだよ。さすがヤエさま!
ヤエが作ってくれる服は、いつだってすごい。
でも可愛い服を着るたびに思うんだ。
自分には分不相応、似合わないんじゃないかって。
「ちょっとはましに見える?」
ものすごく心配して聞いたキーアに、トマもヨニも微笑んでくれる。
「だいじょうぶですよ、キーアおぼっちゃま」
「大変お可愛らしゅうございます」
やさしいしわの手で頭をなでてくれるヨニに、照れくさい頬で笑った。
キーアの渾身の祈願の成果が出たのか、約束の日はよく晴れた。
ほんのり霞むような春の空を背に、白馬に乗ったゼァルがお迎えにきてくれるとか、輝きすぎて、まぶしい──!
BLゲームにはなかったゼァルのお迎えに感激したキーアは、もちろん拝んだ。
「おはよう、キーア」
白馬から飛び降りるゼァルが、かっこよすぎて、つらい……!
鼓動が駆けてゆく音を聞きながら、キーアは熱い頬でゼァルを見あげる。
「おはようございます、ゼァルさま」
眼帯をしなくなったゼァルの鋼と紫の瞳が、キーアの装いに見開かれた。
「白か」
「だ、だめですか……!」
泣きそうなキーアに、ゼァルのほうが、ぎょっとしたようだ。
「いや、汚れるぞ。舞踏会用の服ではなく、平服でいいんだ」
紀太と融合したキーアは思う。
こういうところが、BLゲームで『イベントが楽しくない』言われてしまった原因なのだろうと。
『自分に逢うために、おめかししてくれたのか』
『かわいいな』
『見違えた』
とか一言もなく
『汚れるぞ』
確かに間違いなくそうでした──!
しょんぼりうなだれたキーアに、凛々しいゼァルが、わたわたしてる。
「……い、いや、その……よ……く、似合って、いる、と……思う。だから、汚れたり、破れるのは……」
ぽそぽそつぶやかれる声に、ぴょこんとキーアは跳びあがる。
「ありがとうございます!」
「……いや……うん、その、着替えてくると、いい」
「はい!」
たかたか駆けだすキーアの後ろで、スーパー従僕のトマが微笑んでくれる。
「おはようございます、ゼァルさま。もしよかったら、お茶菓子を。揚げたての、どーなつです」
みはられたゼァルの鋼と紫の瞳が、あつあつドーナツを見つめてる。
「……これが……皆が夢中になるという、魔性のどーなつか──!」
魔性になったらしいです。
さすがトマ。
────────────────
ずっと読んでくださって、心からありがとうございます!
ゼァルルートです!
きーちゃんはすべてそんな感じですが(笑)突貫でお書きしています(笑)
今、ゼァルが『白か』と突っこんでいるのに、表紙のゼァルが白いことに気づきました……!(笑)
えー、光の加減で、灰色っぽいのを着ているということでお願いします!(笑)
せっかく10話もあるので、きーちゃんとゼァルがくっつくまで、どきどきをお届けできたらいいなと思います。
いちゃらぶもちゃんとあるので(笑)楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
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