【完結】双子の兄が主人公で、困る

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
19 / 32

こわくても

しおりを挟む



 ルティには、トトしかいなかった。


 トトだけがルティとカティを見分けて、ルティを守って闘ってくれた。


 トトだけを信じて、トトだけを愛してきた。



 一度、捨てられただけでも衝撃だったのに。

 二度めは、こわれる。




「…………むりだ…………」

 自分は、勇敢だと思ってた。

 ぴんちの時には立ちあがれる。
 卑怯なことなんてしないし、敗戦確実だろうと決死の覚悟で闘えると。


 でもほんとうに窮地に立たされたら、足がすくむ。

 指がふるえて、こわくて、声が出ない。


 ──……ああ、じぶんは、ほんとうは弱くて。

 トトにかっこわるいところを見せたくないから、頑張ってこられたんだ。


 そのトトがいなくなってしまったら。
 弱い自分が、たちのぼる。


「……トト」


 こんなにも、依存して

 こんなにも、頼って

 こんなにも、だいすきで



 絶対、伴侶になるんだと思ってた。



 ぜんぶ、自分のひとりよがりだったなんて



 こわれる







 茫然とルティは砦を見あげる。


 最後通告を聞きたくなくて、よろめくようにきびすを返した。


「え、兄ちゃん、帰っちゃうの? 来たばっかりなのに?」

 帰りの馬車に乗ろうとしたら、御者のおじさんにあんぐりされた。

「……なんか、気後れしちゃって……」


 …………もう……いい…………

 カティのところに行く。
 泣いてなぐさめてもらおう。

 ちいさな手を、おそろいの手を、離れたことなんてなかった手を思いだしたら、泣けてきた。



 うじうじして、後ろ向きで、みっともなくて、情けない。

 そんな自分がいるなんて、知らなかった。


 恥ずかしくて、情けなくて、ちいさくなる。

 だらしないとか、勇気を出せとか、根性見せろとか糾弾されてしまう人たちの気もちが、ようやくわかった。



 だって、拒否されたら、こわれてしまう。

 何もかも、お終いになってしまう。




 ふるえる指をにぎりしめるルティに、おじさんは眉をあげた。

「彼氏でも追いかけてきたのかい」

「……え……?」

 思わず、ルティは顔をあげていた。


「そういう顔をしてる。乗合馬車をやってると、色んな人たちを乗せるんだ。色んな人生を乗せる。
 輝く笑顔の人もいれば、亡くなった人を乗せて故郷に帰ることもある。駆け落ちの人もな。
 色んな人がいて、色んな人生があるんだ」

 おじさんは、微笑んだ。


「ぜったい後悔するんだ。後悔しない人生なんて、ない。どうあがいても、失敗も恥も山になる。
 だから思いっきり、やりたいことを、やりなさい」


 ルティの頭を、ごつごつの手が撫でてくれる。

「年長者からの、おせっかいだ」

 しわの目じりで、笑ってくれた。
 





 恥ずかしいし、情けないし、ふるえるし、捨てられたら、こわれる。

 それでも、ここでトトに逢えなくて、他の男に走っても、トトを忘れられない。



 絶対、後悔する。

 わかっているなら、こわくても、前へ。




 捨てられて、くだけても。

 また、ひろいあつめて、立てばいい。




 生きてるかぎり、何度だって、やり直せる。

 何度だって、立ちあがれる。



 そう思って、王都を出てきたんだ。



 もう一度、あなたに逢うために





 ふるえる指で、ルティは目をぬぐった。


「……ありがとう。俺、いってきます!」


 あたたかな手が、背を叩いてくれる。



「がんばれ!」

 ごつごつの手をあげて、笑ってくれた。
 






しおりを挟む
感想 44

あなたにおすすめの小説

Sランク冒険者クロードは吸血鬼に愛される

あさざきゆずき
BL
ダンジョンで僕は死にかけていた。傷口から大量に出血していて、もう助かりそうにない。そんなとき、人間とは思えないほど美しくて強い男性が現れた。

聖女召喚の巻き添えで喚ばれた「オマケ」の男子高校生ですが、魔王様の「抱き枕」として重宝されています

八百屋 成美
BL
聖女召喚に巻き込まれて異世界に来た主人公。聖女は優遇されるが、魔力のない主人公は城から追い出され、魔の森へ捨てられる。 そこで出会ったのは、強大な魔力ゆえに不眠症に悩む魔王。なぜか主人公の「匂い」や「体温」だけが魔王を安眠させることができると判明し、魔王城で「生きた抱き枕」として飼われることになる。

沈黙のΩ、冷血宰相に拾われて溺愛されました

ホワイトヴァイス
BL
声を奪われ、競売にかけられたΩ《オメガ》――ノア。 落札したのは、冷血と呼ばれる宰相アルマン・ヴァルナティス。 “番契約”を偽装した取引から始まったふたりの関係は、 やがて国を揺るがす“真実”へとつながっていく。 喋れぬΩと、血を信じない宰相。 ただの契約だったはずの絆が、 互いの傷と孤独を少しずつ融かしていく。 だが、王都の夜に潜む副宰相ルシアンの影が、 彼らの「嘘」を暴こうとしていた――。 沈黙が祈りに変わるとき、 血の支配が終わりを告げ、 “番”の意味が書き換えられる。 冷血宰相×沈黙のΩ、 偽りの契約から始まる救済と革命の物語。

追放オメガ聖帝の幸せな結婚〜クールなスパダリ騎士に拾われて溺愛されるまで〜

あきたいぬ大好き(深凪雪花)
BL
ノルディーナ王国の聖帝サーナは、教皇のありもしない嘘のせいで聖宮から追放されてしまう。 行く当てがないサーナが国境に向かうと、そこで隣国ルミルカ王国の騎士であるムーシュと出会う。ムーシュから諸事情により偽装結婚を提案されて、サーナは期限付きの偽装結婚ならばよいと承諾し、一時的に保護してもらうことに。 異国暮らしに慣れていく中で、やがてムーシュから溺愛されるようになり……?

【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。

明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。 新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。 しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…? 冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。

使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。

ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と 主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り 狂いに狂ったダンスを踊ろう。 ▲▲▲ なんでも許せる方向けの物語り 人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。

俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。

黒茶
BL
超鈍感すぎる真面目男子×謎多き親友の異世界ファンタジーBL。 ※このお話だけでも読める内容ですが、 同じくアルファポリスさんで公開しております 「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」 と合わせて読んでいただけると、 10倍くらい楽しんでいただけると思います。 同じ世界のお話で、登場人物も一部再登場したりします。 魔法と剣で戦う世界のお話。 幼い頃から王太子殿下の専属護衛騎士になるのが夢のラルフだが、 魔法の名門の家系でありながら魔法の才能がイマイチで、 家族にはバカにされるのがイヤで夢のことを言いだせずにいた。 魔法騎士になるために魔法騎士学院に入学して出会ったエルに、 「魔法より剣のほうが才能あるんじゃない?」と言われ、 二人で剣の特訓を始めたが、 その頃から自分の身体(主に心臓あたり)に異変が現れ始め・・・ これは病気か!? 持病があっても騎士団に入団できるのか!? と不安になるラルフ。 ラルフは無事に専属護衛騎士になれるのか!? ツッコミどころの多い攻めと、 謎が多いながらもそんなラルフと一緒にいてくれる頼りになる受けの 異世界ラブコメBLです。 健全な全年齢です。笑 マンガに換算したら全一巻くらいの短めのお話なのでさくっと読めると思います。 よろしくお願いします!

オレにだけ「ステイタス画面」っていうのが見える。

黒茶
BL
人気者だけど実は人間嫌いの嘘つき先輩×素直すぎる後輩の (本人たちは気づいていないが実は乙女ゲームの世界である) 異世界ファンタジーラブコメ。 魔法騎士学院の2年生のクラウスの長所であり短所であるところは、 「なんでも思ったことを口に出してしまうところ。」 そして彼の秘密は、この学院内の特定の人物の個人情報が『ステータス画面』というもので見えてしまうこと。 魔法が存在するこの世界でもそんな魔法は聞いたことがないのでなんとなく秘密にしていた。 ある日、ステータス画面がみえている人物の一人、5年生のヴァルダー先輩をみかける。 彼はいつも人に囲まれていて人気者だが、 そのステータス画面には、『人間嫌い』『息を吐くようにウソをつく』 と書かれていたので、うっかり 「この先輩、人間嫌いとは思えないな」 と口に出してしまったら、それを先輩に気付かれてしまい・・・!? この作品はこの1作品だけでも読むことができますが、 同じくアルファポリスさんで公開させていただいております、 「乙女ゲームの難関攻略対象をたぶらかしてみた結果。」 「俺が王太子殿下の専属護衛騎士になるまでの話。」 とあわせて「乙女ゲー3部作」となっております。(だせぇ名前だ・・・笑) キャラクターや舞台がクロスオーバーなどしておりますので、 そちらの作品と合わせて読んでいただけたら10倍くらい美味しい設定となっております。 全年齢対象です。 BLに慣れてない方でも読みやすいかと・・・ ぜひよろしくお願いします!

処理中です...