【完結】最愛の推しを殺すモブに転生したので、全力で救いたい!

  *  ゆるゆ

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おかえし

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 速攻僕に頼られて、胡乱な目になったキュトは、首を振った。


「世界の果て、ゼルア大陸の果てまでは、魔法が使える。
 この先、海のうえでは、魔法は使えない。
 大地の加護が、消え失せる」


「羅針盤も効かない。
 雷雲の向こうに、星も陽も隠される。
 沈黙の海、ドボゥゾァ。
 陸の生き物にとっては、死の海だ」


 レトゥリアーレの言葉に、皆の顔から色が消えた。


 ゲームに、そんな怖い海はなかった!
 海自体が、出て来なかったよ。

 ゲームでは、ちらりとさえ出なかったジァルデ、かすりもしなかった時魔、全く出なかったラスボス、辿りつくことさえできない、時魔の里。


 がんばりたい。

 がんばらなきゃ。


 思う心が、くずおれる。



 僕には、できないんじゃないかな。

 世界一むかつくモブだし。
 レベルも、スキルも、チートも、何にもないし。

 頭はよろしくないし。
 勇気もない。


 僕が、あんなに何でもできるジァルデさえ打ちのめす敵から、ジァルデを救うなんて。

 僕が、魔王を、たすけるなんて。


 無謀、だ。


 泣きたくなる気持ちに、蓋をする。


「ジアは、僕を救ってくれた!
 僕を生かして、育ててくれた。
 僕は、ジアを救いたい────!」


 言うだけなら、誰でもできる。

 実行しなきゃ、意味がないのに。

 そのための策を考えなきゃ、いけないのに。


 真っ白になる頭に、涙の滲む僕に、グィザが頷く。


「行こう、ひめ」

「ひめじゃないよ」

 僕は、鼻を啜った。
 グィザは、微かに笑う。


「キュトた、この山、飛べる?」

 世界地図を指したグィザに、キュトは目を剥いた。

 グィザが指したのは、世界の中央だ。



「……虹の龍が住まう、巌壁の霊峰ザァラバーリ……
 ────近づく者は、皆殺しだ!」


 キュトの悲鳴に、グィザは頷く。


「ナハロ、血をひく、以外」

 僕は、茫然と、グィザを見あげる。


「グィザ・フォル・ナハロ。
 ナハロの血を継ぐ者、グィザ」

 獣人の言葉の意味を、レトゥリアーレが教えてくれる。

 グィザは微笑んで、頷いた。


「昔、昔、傷ついた龍、ナハロ、たすけた。
 龍、ナハロ、困た時、たすける。約束した。
 でも、霊峰、遠い。
 困た時、行けなかた。
 ひめさま、グィザ、たすけた。
 グィザ、ひめさま、たすける」


 グィザの手が、僕の手を握ってくれる。

 滲む涙で、ぎゅうぎゅう、グィザの手を握った。


「──でも、獣人さんたちと龍の、大切な約束だ。
 ジァルデを、たすけたい。
 そのために、獣人さんたちの未来まで潰すのは────!」


 唇を噛み締める僕の手を引いて、グィザが魔王の家を出る。

 エルフの弔いがあったから、心配そうに集まってくれていた獣人さんたちが、駆けつけてくれた。


「ひめさま、困る。
 ナハロ、龍、約束、使う」

 グィザの言葉に、顔を見合わせた獣人さんたちが、頷いた。


「ひめさま、困る。
 我ら、たすける」

 グィザの弟と兄が、胸に手をあて、微笑んでくれる。


「ひめさま、ぴんち。
 僕ら、たすける!」

 ちっちゃい獣人さんの子たちが、僕と手を繋いでくれる。


「──……僕の身で、何がお返しできるか、わかりませんが。
 僕のすべての力を、獣人の皆さんのために」


 胸に手をつき、膝をついた僕の頭を、グィザが撫でた。


「ひめさま、我ら、たすけた。
 我ら、ひめさま、たすける」


「おかえし!」

「おかえし!」

 僕と手を繋いで、笑ってくれる。




 あふれる涙で、頭をさげる。

 地につくほど、頭をさげた。







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