【完結】最愛の推しを殺すモブに転生したので、全力で救いたい!

  *  ゆるゆ

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弟の愛

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 ぐすぐす泣くズァビエのちいさな頭を、僕の手が、ぽんぽんする。


「くるしかったのに、殺して、ごめんね」

 ズァビエは、ちいさく頷いた。


「ジァルデの傍に、いたい」

 溢れる涙と囁くズァビエに、僕は首を振る。


「ズァビエだけの誰かは、他にいる。
 胸が千切れても、くるしみの血を吐いても、離れなきゃ。
 同じことを繰り返して、またきみを殺すなんて、僕はいや」

 僕の手を握って、ズァビエはちいさく頷いた。


 さりげなく、レトゥリアーレが、ズァビエの手から僕の手を奪う。
 キュトとグィザとゼドが笑って、ジァルデがそっと、目を伏せた瞬間だった。

 キュトの瞳が、見開かれる。


「攻撃されてる──!
 まさか……!?」

 ズァビエは、ここにいる。
 攻撃してるのは、ズァビエじゃない。


 お話のとおり、死すべき者に、死を齎そうとする、歪んだ闇の残滓だ。


 僕を、レトゥリアーレを、ゼドを殺せなかったから、最後の力で向かった先は────


 死すべき者。


「チチェ──……!
 勇者の村の皆が──!!」

 僕の悲鳴に、目を瞠ったジァルデが、4次元の扉を開く。

 切り裂かれた時空の向こうで、僕の前にも過去が広がった。





 ゼドの家の、夜のリビングに、チチェとエォナの姿が見える。
 テーブルのうえには、僕の書いた、ゲームのお話の本が広げられていた。

『ひめさまは、言ってた。
 この世界には、強制力っていうのがあるかもしれないって。
 ひめさまの書いた、この本の通りになろうとする力だ』

 チチェの言葉に、ちいさな勇者エォナは頷く。


『もしそうなるなら、狙われるのは、生き残ってる俺と、村の皆だ。
 エォナはここで、風磨と一緒に、獣人の皆を守ってくれ。
 俺が、村に帰る。
 絶対に、村の皆を守ってみせる』

 勇者エォナと同じ、奥に金の光がひらめく瞳で、チチェが告げる。
 目を瞠ったエォナは、叫んだ。


『もう僕は、にいちゃを見殺しにしたくない────!!』

 ちいさな身体から迸るのは、絶叫だった。


『かあちゃととうちゃが死んで、にいちゃだって子どもだったのに、僕を守って、育ててくれた。
 にいちゃは、僕の世界のすべてで、ずっと、僕の、最愛だった。
 ひめさまが、にいちゃを、村の皆を守ってくれたのに、毎晩、毎晩、夢に見る。
 にいちゃが襲いくる魔物軍から僕を守って、勇者の力をすべて使い果たして、僕の目の前で、死ぬ夢を』

 エォナの瞳が、震顫する。

 息をのんだチチェは、ちいさなエォナを抱きしめた。


『大丈夫だ、エォナ。
 俺はここに──……』

『にいちゃは、死ぬ気だ!
 ひめさまと、同じだ!
 皆を守って、すべての力を使い果たして、死んでしまう。
 残された僕が、どんなに絶望して、どんなに世界を怨んで、憎んで、すべてを滅ぼしたくなるか、考えもしないで──!!』


 叫ぶエォナの瞳から、涙が溢れた。


『夢は、にいちゃの死で、終わらない。
 復讐に燃えた僕は、村の皆を、にいちゃを殺した魔物たちを皆殺しにして、魔王を斃す。
 ひめさまに似た、真っ暗な人が、僕の目の前で、エルフの長を殺す。
 ずっと僕を守ってくれた、一緒に旅をしてきたエルフの長が殺されるのを、僕は黙って見てた。
 精霊の樹が滅んだ世界で、エルフの長の血が、必要だったんだ。
 にいちゃを、よみがえらせるために』


 ちいさなエォナの指が、震えた。


『エルフの長の血を使って、僕の勇者の力をすべて捧げても、にいちゃは、蘇らなかった。
 僕は、ずっと僕を支えてくれた唯一の友を、見殺しにして、にいちゃを死から呼び戻そうとして、すべての力を失い、皆の血のなかに倒れる。
 復讐と裏切りの血と、絶望のなかで、死ぬんだ。
 毎晩、毎晩────!!』


 悲鳴を、チチェの腕が、抱きしめる。


『……ごめん、エォナ。
 ごめん』


 チチェの涙が、エォナの頬を濡らした。









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