おひめさまな俺、帝王に溺愛される

  *  ゆるゆ

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ひさしぶり!




 というわけで、ラザさまのお仕置きを見られなくなった俺は、ラザさまの宮でひとりで、お暇になるよりは、魚を愛でたいだろうと、北の果てのボロ宮へと帰してもらえることになりました。

 ラザさまの宮より、警備が厳重らしい。
 女の子以外は入れないはずだからね。

 ……男の俺が入ってて、ごめんね……!


 今日も北の果てで、雑草のそよぐ、ボロ宮が輝いてる!

 いや、修繕は、してるんだけど、修繕な感じでね……そんなに見た目はね……変わっていないというか、うん……

 しかし、ドロドロっぽかった池は、一生懸命きれいにして、ちょこっと澄んだ池になったんだよ!

「ひさしぶりー! 元気だった?」

 ちいさな池に駆け寄ったら、ぱしゃぱしゃ跳ねてくれる魚が、かわいい。
 きっと俺のことを、ごはん係だと思って歓迎してくれているだけだと思うけれど、それでも、かわいー!

「ごはんだよー。
 たっぷり、お食べー」

 にこにこしながら、雑穀をふりまく。
 ぱくぱく口を開ける、愛らしい魚の頭を、そうっと、なでなでしていたら、草を踏む音がした。

 ヤヤの音じゃない。
 し、きつい香水の匂いがする。

 顔をあげたら、キンキラの衣で、従僕を五人引きつれた、おひめさまが、眉をつりあげて立っていた。

「あなたね、最小国レィゼの最終兵器は──!」

「ちがいます」

 手をあげてみた。
  

 今まで平和に過ごしてきたことが、奇跡だったのかもしれないと思う。

 まあ、こんな北の果て、ぼろっぼろの宮に、従僕のひとりもいない『ひめなの、ほんとに……?』みたいな俺がいることは、他のひめは、まったく知らないだろうし、帝王陛下の弟君が、可愛がってくださって、いる……? ことも、知らないと思う!

 だって

『帝王陛下の弟君、ご来臨!』

 ぱらりらら~♪
 音楽が鳴って、皆がうやうやしく膝を折って、みたいなの、ないよ?

 ラザさまが、ここに来ていることも知らないだろうし、俺の存在も、医士のおねえさんくらいしか知らないと思うのだけれど。

 ……なぜ来た──?

 びっくりする俺の胸元で、ラザがくれた青い魔石が、ちかりと赤く輝いた気がした。


『どうして来たんだろう、この人たち』
 顔に大書きしてしまったと思う俺に、気づいたのか、気づいていないのか、本物のおひめさまらしい人は、口を開く。

「メゼア帝国の高位貴族のひめ、大国のひめを差し置いて、最小国レィゼの卑しい民が、帝王陛下のご寵愛を得るだなんて、ありえぬということが分からぬのですか!
 分をわきまえなさい!」

「そうよ、そうよ!」

「顔だけひめ!」

「ド田舎の卑しい民のくせに!」

「恥を知りなさい!」

 わあわあ、叫ばれました!


 おぉ! これは、小説で読んだことがある、悪役ひめなのでは!?


 ……いや、うん、他のひめにとっては、男の俺が、悪役ひめ……? かもしれないね。うん……!





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