【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
12 / 155

はじめての夜




「あ、あの、あのあの、ヴィルさま、内緒で、しましょう、僕、大歓迎です──!」

 燃える頬で拳を握るノィユに、ヴィルの眉が哀し気に下がる。

「だめ」

 怠ることなく鍛え続けたのだろう逞しい腕が、抱きしめてくれる。


「だいじにする」

 やさしい声が、耳朶に降る。


 あたたかなぬくもりに、ヴィルの香りに、つつまれる。
 うっとり目を閉じたノィユは、そっと、ヴィルの背に腕を回した。

 ちっちゃい手では抱きしめるというより、しがみついてるみたいだけれど、それでもきゅっと抱きしめる。


「……ヴィルさまが、だいすきです」

 広やかな胸で囁いたら、抱きしめてくれる力が強くなる。


「さま、いらない」

「……え?」

「呼んで、ノィユ」


 あなたに呼ばれる僕の名が、あまく、あまく、とろけてゆくように

 僕が呼ぶあなたの名も、あなたの心を揺らすといい


 祈るように、ささやいた。


「ヴィル」


 瞳が、かさなる。
 指が、からまる。

 抱きしめて
 抱きよせて


 見あげる瞳に映るのは、あなただけ


 そっと

 そっと

 唇が、かさなる



 はじめての夜に、はじめてのキスをしました。







「はにゃ──……!」

 蕩けてくずおれるノィユを、ヴィルの逞しい腕が抱きとめてくれる。


「す、すまない、ノィユ、まだ、早かった?」

 あわあわするヴィルに、ぶんぶん首を振った。


「うれしくて、熔けちゃう」

 ぽふりと抱きついたら、安堵だろう吐息をこぼしたヴィルが、ちいさく笑う。


「……俺も」

 ぎゅ、と抱きしめてくれるヴィルを抱きしめたら、きらきら月の光をはじくように、雪の髪から雫が降りてくる。

 そっと指を伸ばしたノィユは、雫をまとう髪を指にからめて、微笑んだ。


「ヴィルの髪、乾かしてあげる」

 えへんと胸を張るノィユに、瞬いたヴィルがすまなそうに眉を下げる。

「冷たかった? ごめん」

 ふるふる首を振ったノィユはヴィルの真っ白な髪に手を伸ばす。


「ほわほわ!」

 ほわほわほわ~

 ノィユの手のひらから零れる温風が、ヴィルの髪を揺らした。

 ぼんやり記憶のある前世のドライヤーが手でできる感じだよ。
 チートな魔法とか、魔法の素質とか全然ないみたいだけど、ドライヤーはできる!
 ちょこっと便利だ。


「………………え?」

 ヴィルの藍の瞳が、まんまるだ。

「僕の魔法、変なんだよね? 母上も父上も、人前でしちゃいけませんって。でも、ヴィルは伴侶だから」

 照れ照れ熱い頬で笑ったら、ヴィルの頬も赤くなる。


「……他にも、魔法を?」

「魔術書でちょこっと練習したことあるけど、両親が3歳で練習したらだめって」

 ヴィルも頷いた。

「身体が、小さいうちは、魔力が、安定しない、んだ。危険だから、あまり、使わないほうが、いいと、言われてる。魔力の制御が、でき、なくて、暴走を、起こして、大変なことに、なることが、ある、から」


 ぽつぽつ心配そうに話してくれるヴィルが、かわいー!


「……俺、話すの、下手で……解った?」

 もっと心配そうになったヴィルに、あわあわしたノィユはぶんぶん頷く。


「わ、わかった!」

 あわあわ魔法を止めたけど、ヴィルの髪は乾いたみたいだ。よかった!





感想 339

あなたにおすすめの小説

【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません

カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」 ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。 (これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!) 妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。 スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。 スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。 もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます? 十万文字程度。 3/7 完結しました! ※主人公:マイペース美人受け ※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。 たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

恋人に好きな人が出来たと思ったら、なにやら雲行きが怪しい。

めっちゃ抹茶
BL
突然だが、容姿も中身も平凡な俺には、超絶イケメンの王子と呼ばれる恋人がいる。付き合い始めてそろそろ一年が経つ。といってもまだキスもそれ以上もした事がない健全なお付き合い。王子は優しいけど意地悪で、いつも俺の心臓を高鳴らせてくる——だけどそれだけだ。この前、喧嘩をした。それきり彼と話していない。付き合っているのか定かじゃない関係。挙句に、今遠目から見つけた王子の側には可憐な女の子。彼女が彼に寄り掛かって二人がキスをしている。 その瞬間、目の前が真っ黒になった。もう無理だ。俺がスイッチが切れたようにその場に立ち尽くした、その時だった。前にいる彼から聞いたこともない怒声が俺の耳に届いたのは。 ⚪︎佐藤玲央……微笑みの王子と呼ばれ、常に笑顔を絶やさない。物腰柔らかな姿勢に男女問わずモテる ⚪︎中田真……両親の転勤で引っ越してきた転校生。平凡な容姿で口が悪いがクラスに馴染めず誰とも話さないので王子しか知らないし、これからも多分バレない ※全四話、予約投稿済み。 本編に攻めの名前が出てこないの書き終わってから気が付いた。3/16タイトル少し変更しました。 ※後日談を3/25に投稿予定←しました。Rを書くかはまだ悩み中

【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる

ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。 この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。 ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。

捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~

水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。 死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!? 「こんなところで寝られるか!」 極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く! ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。 すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……? 「……貴様、私を堕落させる気か」 (※いいえ、ただ快適に寝たいだけです) 殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。 捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!

繋ぎの婚約を契約通り解消しようとしたら、王宮に溺愛軟禁されました

こたま
BL
エレンは子爵家のオメガ令息として産まれた。年上のアルファの王子殿下と年齢が釣り合うオメガ令息が少なく、他国との縁組も纏まらないため家格は低いが繋ぎとして一応婚約をしている。王子のことは兄のように慕っており、初恋の人ではあるけれど、契約終了時期か王子に想い人が現れた時には解消されるものと考えていた。ところが婚約解消時期の直前に王子宮に軟禁された。結婚を承諾するまでここから出さないと王子から溢れるほどの愛を与えられる。ハッピーエンドオメガバースBLです。