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断言だよ!
しおりを挟むちいさく笑ったヴィルは、衛士たちが引いてきてくれた2頭の馬の首をやさしく撫でた。
「ではすぐ王都へ──」
「だめだめだめだめだめですお兄さま! そっちの子の言い訳、まだ聞いてないから! 詐欺とか、ほんとに絶対絶対絶対絶対許さないんだから──!」
拳を握ったエヴィに叫ばれたノィユも発言の許可を受けて、ちっちゃな拳を握る。
「僕は、ヴィルを、心から、愛しています──!」
絶叫した。
ロダがによによしてる。
耳まで真っ赤になったヴィルが、ちっちゃな顔を大きな掌で覆った。
あんぐり口を開けたエヴィに凝視される。
笑ったトートは、やさしくエヴィの肩を叩いた。
「僕たちは、お邪魔みたいだよ」
「そ、そそそそんなの、絶対、絶対ゆるさな……」
泣きだしそうなエヴィの前に進み出た両親が頭を下げる。
発言の許可を求める低頭に、エヴィは唇を噛んだ。
「……発言を許す」
「ありがたきしあわせ。バチルタ家の窮状は、ひとえに我が祖先と我が身の不徳によるところにございます。ノィユに借金はございません。カビの生えたものしか食べさせてやれぬ我が家の窮状を憐れんでくださったヴィル・ヴァデルザさまのご厚情によるご縁でございます」
ありがたくヴィルを拝んだ母と一緒に拝んだ父が続ける。
「ヴィル・ヴァデルザさまだけが、ノィユに手を差し伸べてくださいました。その御恩をとてもありがたく思っております。契約書にもございますが、バチルタ家の借金でご迷惑を決してお掛けしないことを、ここにお誓い申しあげます」
父が差しだした契約書を熟読したエヴィが、唇を噛む。
一緒に目を通したトートは微笑んだ。
「きちんとした契約ですね。よかった、お義兄さまに伴侶ができて」
ほくほくうれしそうなトートを、エヴィの涙目が睨みつける。
「トートなんて、大きらい!」
「エヴィ──!」
泣いてる。本気だ。
エヴィとトート、ロダとヴィル、両親を見あげたノィユは、拳を握る。
「ヴィルに迷惑を掛けないためなら、ヴィルと結ばれるためなら、僕、莫大な借金も何とかします!」
今まで逃げてばかりだったけど、何の根拠もないけど、希望的観測しかないけど、断言しなきゃいけないと思って、断言した!
「絶対、絶対、ヴィルを、しあわせにします!」
叫んだら、あたたかな腕が降ってくる。
「……もぅ、しあわせ」
あまい瞳で、笑ってくれた。
「ぐぬぬぬぬぬぬ!」
エヴィの愛らしいかんばせが、ものすごいことになってる。
「エヴィ、お義兄さまは、おしあわせになられるんだから、祝福しないと」
やさしくエヴィの肩を抱くトートが、めちゃくちゃうれしそうだ。
「僕の不幸を笑うトートなんて、大きらい!」
「エヴィ──!」
涙目で睨まれたトートが絶望の顔になってる。
ヴィルは弟の陽の髪を、わしゃわしゃ撫でる。
「エヴィの大きらいは、大すき」
微笑むヴィルに、トートが真っ赤になって、目を剥いたエヴィはぶんぶん首を振った。
「ぜ、絶対絶対絶対絶対違うんだからぁあァアア──!」
ツンデレですね、理解しました。
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