【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ

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到着だよ




 馬車には当主が乗っていることを示す意匠の家紋が掲げられていて、王宮に近づくとすぐに衛士が鋼鉄の門を開いてくれた。

「ネァルガ家当主さま、ご来臨!」
「ヴァデルザ家当主さま、ご来臨!」

 ぱっと見て、しゃっと言える衛士の皆さんが、すごい。

 ネメド王国には電話も携帯もないけど、魔法が発達しているので『ネァルガ家当主が来ました』というのはすぐに上に伝わるらしい。


「……呼んでないけど?」

 馬車寄せまで迎えに来てくれた年若い侍従さんらしき人のデカすぎる態度におののくノィユをよそに、馬車から降り立ったトートが、ふんと鼻を鳴らす。

「大切なお義兄さまが伴侶契約をなさるから、付き添いだよ、付き添い!」

 エヴィとヴィル、ロダと両親がこうべを垂れているのに、あわててノィユも頭を下げた。


 若くて侍従さんみたいな質素な白い服を着てるのに、たぶん、めちゃくちゃ偉い人っぽい。

 馬車寄せにまで偉い人が来るなんて、王宮、こわい。


 とりあえず、会う人すべてに頭を下げておけば、いいんじゃないかな!
 王宮の侍従さんはたいてい貴族だからね。ということはバチルタ家よりは絶対えらいからね!

 丁寧に頭をさげたノィユのつむじに、声が降る。


「へぇえぇえ。ヴァデルザ家当主を落とすなんて、どんなのかと思ったら、これはこれは」

 楽しげな声がした。


「おもてをあげよ」

 涼やかな若々しい声に、そこはかとなく漂うのは、威厳だ。

 堂に入った『おもてをあげよ』があまりにも熟練で、ひきつる。


 …………あの、めちゃくちゃ、めちゃくちゃ偉い人なんじゃ……?

 ノィユの隣で、両親もカタカタしながら顔をあげた。


「うわ、紫の目だ」

 顔をあげたノィユのすぐ前に、青年の顔があった。
 あざやかな空の長い髪の向こうで、透きとおる空の瞳が閃いた。

 ヴィルには負けるけど(正直でごめんよ)涼やかな凛々しいかんばせに息をのむ。

 いや、近いから!
 珍しいからって、そんなに目を覗き込まれても──!
 近い近い近い──!
 
 仰け反るのも失礼だし、内心わたわたでヒクヒクするノィユの隣から、低い声が降る。


「ザイア陛下」

 …………………………。

 へいか。

 へいかって、陛下?


 きゃあぁあぁああ──!

 卒倒しそうになりながら踏ん張るノィユの顔をしげしげと覗き込んだザイアがつぶやく。

「ふぅん、透ける肌に月の髪に、精霊の瞳かあ。……魔物の目とも言うけどね。
 ぷっくりほっぺも、ちっちゃな手足も、とっても美味しそうな、月の精霊と陽の精霊の子どもね。
 これはこれは、我が国の最高峰だな」

 ザイアの目が、ノィユの瞳を覗きこむ。


「ヴィルを落とすんだから、ただしく魔性か」

 なでるようにノィユの身体をたどる視線が

「陛下」

 ヴィルの低い声に離れてく。

 王に謁見するときも、もしゃもしゃのままの髪と髭のヴィルを見つめたザイアは、とてもとても楽しそうに唇の両端をあげた。


「なるほど。ヴィルはちいさな男の子が大すきだったんだな。
 ……すまなかったな、今まで全く趣味にあわぬ縁談を勧めて」

「違う──!」

 叫ぶヴィルの雪の髪が、逆立ってる。

 とても申しわけなさそうに眉を下げるザイアの目が、最高に楽しいものを見つけたように輝いてる。







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