47 / 155
おでかけです
見送ってくれるヴィルに、ロダに、エヴィに手を振った。
「はあ──! 離れるのつらい──!」
顔を両手で覆うノィユの隣で
「僕も──!」
一緒に号泣してくれるトートがいい人だ。
「しゅ、出発してよろしいでしょうか?」
御者さんが戸惑ってる。
「やってくれ」
トートの声に、ノィユと両親を乗せた馬車が走り出す。
ああ、最愛の伴侶の姿が、ちいさく、遠くなってゆく──!
「ヴィル──!」
車窓から身を乗りだして、涙ながらに手をふるノィユに
「最期の別れじゃないから」
恥ずかしそうな赤い頬で、おかあさんが腰を抱いて落ちないようにしてくれる。
やさしい。
父が肩を揺らして笑ってる。
すんすん鼻をすするノィユの頭を、母の、父の、トートの手がなでなでしてくれた。
やさしい。
朝の貴族たちの出勤時間は民も解っているのだろう、道を空けてくれていて、さくさく馬車が進んだ。
王宮の近くにそびえる、巨大な白亜の建物が、王立図書館だ。
「帰りも迎えにくるから」
「ありがとうございます!」
「お気をつけて、いってらっしゃいませ!」
バチルタ家一同に見送られたトートが王宮へと向かう。
残されたノィユと両親は、天高くそびえる書の宮を見あげた。
図書館の前には槍を掲げた衛士までいる。
本は大変貴重で高価なので、護衛が必要らしい。
朝からお疲れさまです。思いつつ、ノィユは手を挙げた。
「バチルタ家です、本を見せてください」
いちおう貴族の家紋を掲げたノィユに、顔を見合わせた衛士たちは槍を交差させた。
ガシャン──!
鋼の音が鳴り響く。
「借金まみれの家だな!」
「本を盗んで売り払う気だろう、だめだだめだ!」
バチルタ家の悪名が轟いている!
門前払いを喰らいました。
たぶん、入れてはいけない危険な家リストのなかにバチルタ家も入っているらしい。
ブラックリスト入り。
せつない。
「……応援してくれるって仰ったし、国王陛下にちょっとお願いしてみようかな……」
ヴァデルザ家とネァルガ家には頼れないが、国王陛下に頼ろうとする母が強い!
「だ、だいじょぶなのか?」
珍しく父のほうが不安そうだ。
「だって、これ以上ヴィルさまやトートさまにご迷惑を掛けられないよ!」
「たしかに」
項垂れた父のおひざを、ノィユの手がぽんぽん慰める。
届くのがおひざなんだよ、肩までゆかないよ、せつない!
「これから御恩を、お返ししましょう!」
ノィユの励ましに、両親は拳を握る。
「そ、そうだな、がんばろう!」
「そのためにも、ここは申し訳ないけど、国王陛下にお願いを──!」
母が、大人のお話の時にもらったらしい、国王陛下直通だという魔法陣を取りだした。
携帯電話みたいな感じで、離れたところにいる個人に声を届けて会話ができるらしいよ。
「そ、それはまさか、国王陛下の魔紋──!?」
「図書館に入る認可を、国王陛下から貰うつもりか──!?」
「待て待て待て、それ、俺らの首が飛ぶ事態じゃないか──!?」
衛士の皆さんがざわざわしてる。
「し、しばらくお待ちください!」
「国王陛下に連絡しないで!」
涙目で止められました。
あなたにおすすめの小説
【完結】悪役令息の従者に転職しました
* ゆるゆ
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
『悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?』のカイの師匠も
『悪役令息の伴侶(予定)に転生しました』のトマの師匠も、このお話の主人公、透夜です!
表紙は、Pexelsさまより、Abdalrahman Zenoさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!
文章にはAIを使用しておりません。校正も自力です!(笑)
【完結】双子の兄が主人公で、困る
* ゆるゆ
BL
『きらきら男は僕のモノ』公言する、ぴんくの髪の主人公な兄のせいで、見た目はそっくりだが質実剛健、ちいさなことからコツコツとな双子の弟が、兄のとばっちりで断罪されかけたり、 悪役令息からいじわるされたり 、逆ハーレムになりかけたりとか、ほんとに困る──! 伴侶(予定)いるので。……って思ってたのに……!
表紙は、Pexelsさまより、Julia Kuzenkovさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!
【完結】転生した悪役令息は、お望み通り近付きません
カシナシ
BL
「お前など、愛す価値もない」
ディディア・ファントム侯爵令息が階段から落ちる時見たのは、婚約者が従兄弟を抱きしめている姿。
(これって、ディディアーーBLゲームの悪役令息じゃないか!)
妹の笑顔を見るためにやりこんでいたBLゲーム。引くほどレベルを上げた主人公のスキルが、なぜかディディアに転生してそのまま引き継いでいる。
スキルなしとして家族に『失敗作』と蔑まれていたのは、そのスキルのレベルが高すぎたかららしい。
スキルと自分を取り戻したディディアは、婚約者を追いかけまわすのを辞め、自立に向けて淡々と準備をする。
もちろん元婚約者と従兄弟には近付かないので、絡んでこないでいただけます?
十万文字程度。
3/7 完結しました!
※主人公:マイペース美人受け
※女性向けHOTランキング1位、ありがとうございました。完結までの12日間に渡り、ほとんど2〜5位と食い込めた作品となりました!あああありがとうございます……!。゚(゚´Д`゚)゚。
たくさんの閲覧、イイね、エール、感想は、作者の血肉になります……!(o´ω`o)ありがとうございます!(●′ω`人′ω`●)
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
【完結】お義父さんが、だいすきです
* ゆるゆ
BL
闇の髪に闇の瞳で、悪魔の子と生まれてすぐ捨てられた僕を拾ってくれたのは、月の精霊でした。
種族が違っても、僕は、おとうさんが、だいすきです。
表紙は、Pexelsさまより、MAG Photographyさまによる写真をお借りしました。ありがとうございます!
文章にはAIを使用しておりません。校正も自力です!(笑)
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!