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ほんもの
あわあわ槍を投げ捨てた衛士が図書館の中へと走ってゆき、図書館の責任者みたいな、ちょっと重そうな衣を着た人を連れてきてくれる。
走らされた司書さんが、えっちらおっちら、長い衣を引きずりながらよれよれ来てくれた。
目の前に来てくれた司書さんに、ノィユも両親もあんぐり口を開ける。
ちっちゃ!
衣がでかいとかそういう話ではない。ちっちゃい。
ノィユとおんなじくらいしか背丈がないよ!
「はあはあ、い、いらっしゃいませ、バチルタ家の皆さんですね」
「……え、あ、あの、司書さん、ですか……?」
ぽかんとする3歳児のノィユに聞かれたくないかもしれないけど、図書館の利用者が3歳児はあるあるだけど、図書館の司書さんが3歳児なのは、この世界ではあるあるなのかな!?
「あ、あの、今日は僕、おかあさんの代理です。弟が熱を出しちゃって、おとうさんがいなくて、僕に弟のお世話はできないので、僕が代わりに来ました」
「えらい!」
拍手するノィユと一緒に、うむうむした両親も拍手してる。
「病気なのかな、だいじょうぶ?」
心配そうに顔を覗き込む母に、短い夜の海のような髪を揺らした少年はこくりと頷いた。
「熱が出たときは、不安でさみしいから、おかあさんが傍にいてあげたほうがいいと思って」
「えらい!」
拍手するノィユと一緒に両親も拍手してる。
髪とおそろいの夜海の瞳を瞬いて、ちょっと赤くなった少年が、照れくさそうに笑った。
「ご挨拶がまだでしたね。僕、ネニ・ポーテです」
にこにこしていたノィユと両親が硬直し、ザッと頭を下げた。
「上位貴族であられるポーテ家ご長子であられるネニさまに、不敬なふるまい、誠に申し訳ございません!」
首が飛ぶふるまいだよ。きゃ──!
これが最底辺貴族の切ないところだ。
上位貴族なんてお目に掛かる機会が全くないから、お名前だけは頭に叩き込んであるけど(不敬で首が飛んでゆくので、命懸けで記憶するんだよ! こわい)お顔を全く知らないんだな!
カタカタするノィユと両親に、ネニは首を振る。
「い、いえ、今の僕は司書代理ですから、お気になさらず」
微笑んでくれるネニが、やさしい。
「上位貴族であられるポーテ家当主さまが王立図書館の司書をなさっているとは、寡聞にして存じあげず誠に申し訳ございません」
丁寧に頭をさげる母の謝罪が、なめらかすぎる。
……たぶん、領地からあんまり出ないから、王都のことを何にも知らなくて、あちこちで『ぎゃあ!』謝っているに違いない。
一緒に頭をさげる父のタイミングも頭の角度も、母と完璧におそろいだ。
両親が謝罪に慣れすぎてる──!
せつなくなりながらノィユも角度をあわせて一緒に頭をさげた。
ネニがふるふる首を振る。
「おかあさんが趣味で王立図書館の司書をしているのです。僕も本がすきで図書館に入り浸っているので、今日は司書代理を務めます。よろしくお願いします」
3歳児と思えない!
そうだよ、これが本物の天才だよ。
ノィユは間違いなく、10年たったらふつう以下だ!
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