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なかまです
不安と期待でどきどきしながらも、ノィユはヴィルとエヴィと両親と一緒に、ネァルガ家の馬車で王都の奥へと運ばれた。
都の境に広がる森にいだかれるようにひっそりと佇むのは学究の宮らしい。
ネメド王国の叡智が集結しているという。
もしかしてもしかすると今は天才に見えるかもしれないが中身が30代なだけの凡人ノィユに最も縁がなさそうな場所に辿り着いた瞬間
ドガァアァオォン──!
爆発音とともに馬車が揺れた。
「ぎゃあぁ──!」
涙目でビビったのはバチルタ家だけだ。
ヴァデルザ家のふたりは平気な顔をしている。
さすがヴァデルザ、轟音が鐘の音みたいな無反応だ──!
「よくあるんだよ。ここ、変人の巣窟だから」
エヴィの言葉にノィユはぽかんと口を開ける。
「………………え…………?」
だ、だだだだだって、ヴィルのお友達だよね?
こんなにやさしいヴィルが仲良くしてる人に、変な人なんて、いないよね?
「防御魔法、すごいの、ついてる、から、平気。振動はある、けど、気にしないで」
微笑んでノィユを抱きあげて馬車から降ろしてくれるヴィルの後ろで
ドォオァォオン──!
何かが吹っ飛んで、大地が揺れてる。
「……こ、こわい……!」
ノィユの父が涙目で母の腰に抱きついて、ぷるぷるしてる!
抱きつかれた母がちょこっとうれしそうに赤くなってる。かわいい。
おそるおそるノィユが足を踏み入れた学究の宮は、薄暗い。
書物や書類が折り重なるように積みあがり、よく解らない瓶が所狭しと並んでいる。傾いた瓶から紫の液体が滴り落ちて綿埃の降り積もる床を濡らしていた。
あちこちに魔法陣が輝き、ふしぎな色で明滅する。
反射で光る両親の顔が、精霊のはずなのにホラーになってる──!
「……こ、こわい……!」
抱きあったバチルタ家がぷるぷるしてる。
「いちおう勉強してるだけだよ。取って喰ったりは……たまにするのか」
「ひぃい──!」
エヴィがおどしてくるよ!
「だいじょうぶ」
ヴィルがぽふぽふ頭を撫でてくれる。
それだけで、何もかもが大丈夫な気がして、ほっとする。
ごちゃごちゃ色んなものが積みあげられた迷路のような廊下を抜けて、地下への階段を下りてゆく。
暗い大広間の壁には魔法だろう青い炎が揺れていた。
悪の秘密結社にしか見えない……!
こわい──!
ぷるぷるなバチルタ家の向こうから声が降る。
「おお、ヴィル!」
「ひさしぶりぃ」
「元気に売れ残ってるかー!」
「………………」
にこにこ手を挙げてくれたのは、どう見てもわるい魔法使いにしか見えない、真っ暗なフードで顔のほとんどを覆い邪悪そうな杖を持った陰気なおじいちゃんと、はにかむ笑顔で手を挙げる白い服を着た愛くるしい青年と、よく陽に焼けた筋肉を強調するように極度に布面積の少ないタンクトップ+ビキニな短パンのガチムチ青年と、土色のフードの奥に光る瓶底眼鏡から無言でヴィルを見つめるおじいちゃんだった。
………………可愛い青年だけは、ふつーに見える。
わたわたするノィユに、ヴィルは胸を張る。
「売れ残り、仲間」
………………たしかに…………?
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