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おぉ?
「アーシェさん、大変申しわけないのですが、ユィリおぼっちゃまは今日はもうほんとうに限界なご様子です。
くわしいお話は、どうぞ後日に」
うやうやしく、でもはっきり、ばっきり割りこんでくれたカイの言葉に、ちょっと泣きそうだったアーシェが僕の肩を揺さぶるのをやめてくれました。
ぐらんぐらんになりそうだったので、助かったよ。
ありがとう、カイ──!
「僕、ちょっと気持ちわるくなっちゃったから、もう帰るね」
よわよわな僕、撤退です!
「くわしいお話は、ケーキと一緒にね!
どんなケーキを食べたいか、考えておいてね」
「チョコレートケーキ!!!」
即答されました。
拳をにぎられました。
「……え、いや、チョコレイト、きびしくない……?」
この世界で見たことないよ!
たぶん!
「……え……お貴族さまは、こっそり食べてるんじゃないの……?」
アーシェの目がうろんだよ。
……貴族に、いやな目に遭わされたのかな……?
は……! 僕だ──!
あわあわ僕は首をふる。
「食べてません!
あ、王族なら食べてるかも?
今度、セゥス殿下に聞いてみたら?」
ちょっとちくちくする胸で言ってみたら、アーシェのとびきり可愛い顔が複雑になった。
「……その話も、ケーキと一緒にするよ。
とりあえず甘いケーキをお願いします。クリームたっぷりで!」
「まかせといて!」
どんと胸を叩いてみました。
ぴんくの髪を揺らして笑ってくれるアーシェが、とびきり可愛い主人公です。
こんなに可愛くて優しくて一生懸命頑張るアーシェが可愛すぎて、やきもちを焼いてしまった、記憶がよみがえる前の僕のことも、ちょっとわかった気になったのでした。
そしてせっかく学校に来たのに、全く講義を受けないどころか、校舎の中にさえ入らずに撤退する僕!
いやもう一生懸命、謝ったら、僕、いっぱいいっぱいになっちゃったよ……!
学校はまた今度ね!
今日は謝罪という一大事業を成し遂げたから、もう帰ります!
「もう帰っていいよね」
いちおうカイに確認してみました。
「もちろんでございます、ユィリおぼっちゃま」
しゃっと、おひめさま抱っこしてくれようとするカイを止める。
「だいじょうぶ、歩けるよ。
御者さん、まだ待ってくれてるかな」
「きっと。馬車を回してもらって参りますので、ユィリおぼっちゃまは、こちらの木陰でお待ちくださいね」
校門の近くにある緑の木々に囲まれる白いベンチに僕を座らせてくれたカイが、馬車を呼びに駆けてゆく。
木漏れ日の差しこむ、気もちのいい春の朝に、目を閉じた時だった。
「……うぅ……」
うめき声が聞こえた。
びっくりした僕は目を開ける。
「うぇええぇ……ぎぼぢわるぃよう……がっこう行きたくなぃよう……!」
切ない嘆きが聞こえました。
「……え、いやもう学校に来てるよ?」
突っこんでしまいました。
「ここまでは何とかなるんだよ! 校門が限界なんだよ! 校舎の中に入るとか真剣に無理──!」
もしゃもしゃの月の髪で目も顔も覆われている、僕とおそろいの制服を着た背の高い青年が、校門でお腹を抱えてうずくまってた。
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