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だいすき
もしこれが、夢じゃないなら。
僕に都合のいい、幻想じゃないなら。
あなたが、僕のために、今まで懸命に築きあげてきた何もかもを、捨てる決意をしてくれたみたいに。
僕が応えるかどうか、わからなくても、それでも
『あいしてる』
言ってくれたみたいに。
ただそれだけのために、今まで大切にしてきたすべてに、さよならしようとしてくれたみたいに。
今じゃないと、きっと、伝えられないから。
今じゃないと、きっと、届かないから。
他の言葉じゃ、やさしいあなたは僕のために、僕を残して、行ってしまいそうだったから。
『そばにいて』
伝えるためだけに、最後の魔力を振り絞った。
魔力がなくなったら、僕は、しんでしまう。
いくら勉強をしない、あんぽんたんな僕でも、それくらいは、わかってる。
だから、カイも、のーすちゃんも心配して、セゥスさまを遠ざけようとしてくれた。
昏睡も3度目だ。僕がまた衝撃を受けて、今度こそ、しんじゃうんじゃないかと。
うれしいことも、よろこびも、ストレスだから。
あまりにも強い感情は、心も、身体も、撃ち倒してしまう。
魔力が欠乏して、世界の魔素をうまく取りこめない僕は、危険だ。
それをセゥスさまも分かって、僕から遠ざかろうとしてくれたのに。
みんなで心配してくれたのに。
無茶をして、ごめんなさい。
でも、きっと、一瞬のために命をかけたくなるから
あなたのために、すべてを捧げたくなるから
きっと
『だいすき』
というのです。
『そばにいて』
僕のきもちは、僕の想いは、あなたに、届いたかな。
最後の魔力を振り絞った僕の身体が、冷たくなる。
僕の命が、消えてゆく。
「ユィリ──!」
あなたが、泣いてる。
抱きしめてくれるぬくもりが、遠くなる。
あなたの、ひかりが、遠くなる。
ずっと、あなたに、ふさわしくない僕でした。
それでも。
ふんぞり返って、人を見くだして、何にも頑張らない、さいていだった悪役令息の僕も。
前世の記憶の衝撃で、ぼんやりしていた僕も。
前世の記憶も、あなたへの気もちも、思いだした今も。
ずっと
ずっと
あなたが
だいすきでした。
「ユィリ──!」
呼んでくれる声が、遠くなる。
「あいしてる……!」
ささやきが、僕にふれた瞬間、あたたかなひかりが、舞いあがる。
「ユィリ……!」
涙と、ふわふわのくちびるが、僕のうなじにふれる。
やさしいひかりが、流れこむ。
あなたの、ひかりが
あなたの、想いが
僕をつつんで、舞いあがる。
『あいしてる』
『だいすき』
『……ノゥスが……すき、なの……?』
『きみとの伴侶(予定)契約は、なかったことに』
『ごめん』
『ごめんなさい……!』
『あいしてる』
あなたの気もちが流れこんで、僕の気もちとひとつになって、とけてゆく。
涙と歓喜に、つつまれる。
あなたの『あいしてる』に、つつまれる。
きっと、これを、恍惚というのです。
「ユィリ──!」
「ゆーり──!」
「ゆりさま!」
「もっちもっち!」
「ユィリくん!」
叫んでくれる皆の声で、ぼんやり僕は、目を明ける。
「ユィリ……!」
あなたの涙が、僕の頬に落ちてくる。
「あいしてる」
ささやきは、やっぱり公開で。
みんないるのに。
はずかしいのに。
あふれる涙と、抱きしめてくれるから。
まだちょっと冷たい頬で、僕は、そっと手を伸ばす。
「……いかないで」
はずかしくて、ちょっとちがう言葉が、唇からこぼれた。
ぜんぶわかったみたいに、あなたが、涙の瞳で、笑ってくれる。
「ずっと、ずっと、そばにいる。
ユィリのそばに」
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