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もっちもっち?
しおりを挟む突然、目の前に舞い降りた、大変に凛々しくかっこいい、これぞ攻略対象みたいな人に、ぽかんと僕は口を開ける。
つややかな闇の髪が闇の瞳を彩るさまは、カイにとてもよく似ていた。
「……え……?」
きょとんとする僕を守ろうと、カイが前に出てくれる。
「意味不明なことを言って、わがきみを惑わせないでください」
凛々しい眉を吊りあげるカイに、かっこいい人は瞬いた。
「いや、参戦資格があるのは、もっちもっちじゃなく、カェツァだ」
初対面の人に『もっちもっち』呼ばれてしまう僕!
せつない!
「ユィリは、とってもかわいいよ」
しょんぼりする僕を守るように抱っこしてくれるセゥスが、あまやかし大王です。
「セゥス、僕、へいきだよ」
きゅ
手をにぎったら、ふうわり笑って、頭をなでてくれたセゥスがカイを振りかえる。
「知りあいか?」
けげんそうにカイは首をふった。
「全く記憶にない。
どなたかとお間違えでは?」
凛々しい眉をしかめるカイに、かっこいい人の唇は笑みをえがいた。
「間違うはずがないだろう。カェザの血は、カェザの血を認識できる。
お前が国境を越えた瞬間、ビリビリしたから転移門で飛んできてやったんだ」
闇の髪が、舞いあがる。
桜の唇が、楽しげにつりあがる。
「はじめまして、カェツァ。
きみのお兄ちゃんで、きみの敵、カェザイ・ドゥ・カェザ。
カェザ大公国、大公だ」
あんぐり口を開けたのは、僕だけじゃなかった。セゥスの口も、カイの口もあんぐりしてる。
「……従僕にふさわしくないくらい顔面力が異常に高いなとは、ずっと思っていたけれど──カェザ大公の子息なのか……!」
セゥスが驚くところを、はじめて見たかも!
「カイ、かっこよすぎるから、ぜったい攻略対象だと思ってた!」
ちっちゃな拳をにぎる僕に、カイが首をかしげる。
「それは、ほめてくださっている?」
ぶんぶんうなずいた。
「もちろん!」
ふうわり、つりあがっていたカイのまなじりが、ほどけた。
「とてもうれしいです、ゆりさま」
とろけるように笑って、僕を抱っこしてくれるカイが、今日もとびきりかっこいい僕の従僕です。
「……ちょっと待て。カェザ大公国、大公を無視するな──!」
ザイお兄ちゃんが、激おこです。
「いや、いきなり言われても。俺は孤児なので。人違いです」
言い切るカイに、カェザイは笑った。
「だからカェツァは大公家の血を継いでいるんだ」
きょとんとする僕とカイとセゥスに、カェザイが告げる。
「我らカェザ大公国は、カィザ選王国と双子国と呼ばれている。名が似ているからでもあるが、統治者を決定する法が独特なんだ」
「カィザ選王国は、民が王を選ぶ国でしょう。すべての民が王を選ぶ義務を負う」
セゥスの言葉に、カェザイがうなずく。
「ならカェザ大公国は?」
「大公家の血縁から選ばれると──」
よどみなく答えるセゥスに、カェザイはふたたび、うなずいた。
「それ、ふつうじゃないですか?」
つっこんでみた!
「もっちもっちは、ちょっと、おとなしくしていような」
カェザ大公国、大公殿下に、頭をなでなでされて、おとなしくさせられてしまいました……
……もしかして、僕、やっぱりよわよわ!?
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