悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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もっちもっち?




 突然、目の前に舞い降りた、大変に凛々しくかっこいい、これぞ攻略対象みたいな人に、ぽかんと僕は口を開ける。

 つややかな闇の髪が闇の瞳を彩るさまは、カイにとてもよく似ていた。


「……え……?」

 きょとんとする僕を守ろうと、カイが前に出てくれる。


「意味不明なことを言って、わがきみを惑わせないでください」

 凛々しい眉を吊りあげるカイに、かっこいい人は瞬いた。

「いや、参戦資格があるのは、もっちもっちじゃなく、カェツァだ」

 初対面の人に『もっちもっち』呼ばれてしまう僕!
 せつない!

「ユィリは、とってもかわいいよ」

 しょんぼりする僕を守るように抱っこしてくれるセゥスが、あまやかし大王です。

「セゥス、僕、へいきだよ」

 きゅ

 手をにぎったら、ふうわり笑って、頭をなでてくれたセゥスがカイを振りかえる。


「知りあいか?」

 けげんそうにカイは首をふった。

「全く記憶にない。
 どなたかとお間違えでは?」

 凛々しい眉をしかめるカイに、かっこいい人の唇は笑みをえがいた。

「間違うはずがないだろう。カェザの血は、カェザの血を認識できる。
 お前が国境を越えた瞬間、ビリビリしたから転移門で飛んできてやったんだ」

 闇の髪が、舞いあがる。
 桜の唇が、楽しげにつりあがる。


「はじめまして、カェツァ。
 きみのお兄ちゃんで、きみの敵、カェザイ・ドゥ・カェザ。
 カェザ大公国、大公だ」




 あんぐり口を開けたのは、僕だけじゃなかった。セゥスの口も、カイの口もあんぐりしてる。

「……従僕にふさわしくないくらい顔面力が異常に高いなとは、ずっと思っていたけれど──カェザ大公の子息なのか……!」

 セゥスが驚くところを、はじめて見たかも!

「カイ、かっこよすぎるから、ぜったい攻略対象だと思ってた!」

 ちっちゃな拳をにぎる僕に、カイが首をかしげる。

「それは、ほめてくださっている?」

 ぶんぶんうなずいた。

「もちろん!」

 ふうわり、つりあがっていたカイのまなじりが、ほどけた。

「とてもうれしいです、ゆりさま」

 とろけるように笑って、僕を抱っこしてくれるカイが、今日もとびきりかっこいい僕の従僕です。



「……ちょっと待て。カェザ大公国、大公を無視するな──!」

 ザイお兄ちゃんが、激おこです。

「いや、いきなり言われても。俺は孤児なので。人違いです」

 言い切るカイに、カェザイは笑った。



「だからカェツァは大公家の血を継いでいるんだ」

 きょとんとする僕とカイとセゥスに、カェザイが告げる。

「我らカェザ大公国は、カィザ選王国と双子国と呼ばれている。名が似ているからでもあるが、統治者を決定する法が独特なんだ」

「カィザ選王国は、民が王を選ぶ国でしょう。すべての民が王を選ぶ義務を負う」

 セゥスの言葉に、カェザイがうなずく。

「ならカェザ大公国は?」

「大公家の血縁から選ばれると──」

 よどみなく答えるセゥスに、カェザイはふたたび、うなずいた。


「それ、ふつうじゃないですか?」

 つっこんでみた!


「もっちもっちは、ちょっと、おとなしくしていような」

 カェザ大公国、大公殿下に、頭をなでなでされて、おとなしくさせられてしまいました……


 ……もしかして、僕、やっぱりよわよわ!?






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