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どこの誰でも
切れ長の瞳をさまよわせるカイの手を、僕はにぎる。
「カイが、やだったら、しなくていいよ。ね?」
僕の頭をぽふぽふしたセゥスの若葉の瞳が、カイを見た。
「やさしい血縁と、地位とお金は、あるに越したことはないよ。
ユィリときみを守る力になる」
振り向くカイに、セゥスが微笑む。
「僕に地位と金がなくなってしまったから、カイが持ってくれるとうれしいなという打算もある」
ちいさく舌をだすセゥスが、かわいすぎる……!
「セゥス、かわいー!」
ぎゅう
抱きついたら、セゥスと皆の目がまるくなる。
「……ユィリがほめてくれたら、うれしい」
ほんのり紅い頬で、はずかしそうに、てれくさそうに笑うセゥスが、かわいすぎるぅう──!
「だいすき!」
ぎゅう!
もっちもっちの頬を押しつけるみたいに、抱きついてしまいました。
「僕も、ユィリがだいすき」
ぎゅぅう!
抱っこしてくれるセゥスが、やさしくて、見あげる瞳がうっとりする。
なでなでしてくれる指も、ほそめられる若葉の瞳も、包みこまれるぬくもりも、胸を満たす香りも、なにもかもが、だいすき。
セゥスのかんばせが近づいて、おでこに、ちゅうしてくれるのかな?? どきどき目を閉じようとしたら、セゥスの肩をカイがつかんだ。
「俺もいるので」
「俺もいるぞ」
ザイお兄ちゃんも、手をあげてる。
「突然これか……!」
「いつもなんだ……!」
ふたりが、わかりあってる!
「まあ、こっちはこっちで。ちょっと魔力を放出してみて。血縁なら、カェザ大公家に連なる人だし、俺と闘って勝ったら国をやる。地位も金も領地も、もらえるぞ」
唇の端をあげるカェザイに、カイは首をかしげた。
「自分の地位をおびやかすような輩は、ふつう暗殺するのでは?」
カイの発想が、物騒だよ!
「暗殺できるなら敵じゃないってことだ。カェザ大公家は、そういう家なんだよ。
正々堂々闘って、勝った者が大公になる」
「かっこいー」
ぱちぱち拍手する僕の頭を、ザイお兄ちゃんが、なでなでしてくれる。
「殺しあうわけじゃないし、ふつうに話せる弟ができるなら、喜ばしく思う。
やってみてくれないか?」
『やれ』命令しないカェザイに、カイは目を閉じた。
「……俺は、ふつうの孤児なので。違うのが、あたりまえなので。皆さん、期待しないでくださいね」
ぽそぽそつぶやくカイの手を、僕はにぎる。
「カイが、どこの誰でも、僕はカイが、だいすきだよ!」
「……っ……」
息をのむカイを、まっすぐ見あげる。
「カイは、カイだよ。
僕の、だいじな、カイ」
大きなごつごつの手を、両の手で包んで、笑った。
「ゆりさま……」
ふうわり、カイの耳が紅くなる。
「……ユィリ……?」
セゥスの背中から、闇が噴いてる!
「だ、だってカイは僕の従僕だもん!」
涙目な僕に、カイが笑う。
「ああ、そうです。俺が、どこの誰でも。
俺は、ゆりさまのもの」
微笑んだカイの夜空の髪が、舞いあがる。
「結界を張ってください。強めに」
「了解」
カェザイが結界を強化する魔導具を起動した瞬間、カイの魔力が爆発した。
魔力の、渦だ。
そこにいるだけで、水の魔力に満たされる。
僕の身体に、カイの魔力が満ちてゆく。
共鳴するように僕の髪が舞いあがる。
「ユィリ……!?」
セゥスが僕をかばうように前に立ってくれるのに、首をふる。
「だいじょうぶ。カイは──?」
あふれゆく水の魔力の奔流の向こうで、カイの瞳が開いてく。
夜空の瞳に、不思議な精霊文字が輝いた。
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