悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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どこの誰でも




 切れ長の瞳をさまよわせるカイの手を、僕はにぎる。

「カイが、やだったら、しなくていいよ。ね?」

 僕の頭をぽふぽふしたセゥスの若葉の瞳が、カイを見た。

「やさしい血縁と、地位とお金は、あるに越したことはないよ。
 ユィリときみを守る力になる」

 振り向くカイに、セゥスが微笑む。

「僕に地位と金がなくなってしまったから、カイが持ってくれるとうれしいなという打算もある」

 ちいさく舌をだすセゥスが、かわいすぎる……!


「セゥス、かわいー!」

 ぎゅう

 抱きついたら、セゥスと皆の目がまるくなる。


「……ユィリがほめてくれたら、うれしい」

 ほんのり紅い頬で、はずかしそうに、てれくさそうに笑うセゥスが、かわいすぎるぅう──!


「だいすき!」

 ぎゅう!

 もっちもっちの頬を押しつけるみたいに、抱きついてしまいました。


「僕も、ユィリがだいすき」

 ぎゅぅう!

 抱っこしてくれるセゥスが、やさしくて、見あげる瞳がうっとりする。

 なでなでしてくれる指も、ほそめられる若葉の瞳も、包みこまれるぬくもりも、胸を満たす香りも、なにもかもが、だいすき。


 セゥスのかんばせが近づいて、おでこに、ちゅうしてくれるのかな?? どきどき目を閉じようとしたら、セゥスの肩をカイがつかんだ。

「俺もいるので」

「俺もいるぞ」

 ザイお兄ちゃんも、手をあげてる。

「突然これか……!」

「いつもなんだ……!」

 ふたりが、わかりあってる!



「まあ、こっちはこっちで。ちょっと魔力を放出してみて。血縁なら、カェザ大公家に連なる人だし、俺と闘って勝ったら国をやる。地位も金も領地も、もらえるぞ」

 唇の端をあげるカェザイに、カイは首をかしげた。

「自分の地位をおびやかすような輩は、ふつう暗殺するのでは?」

 カイの発想が、物騒だよ!

「暗殺できるなら敵じゃないってことだ。カェザ大公家は、そういう家なんだよ。
 正々堂々闘って、勝った者が大公になる」

「かっこいー」

 ぱちぱち拍手する僕の頭を、ザイお兄ちゃんが、なでなでしてくれる。


「殺しあうわけじゃないし、ふつうに話せる弟ができるなら、喜ばしく思う。
 やってみてくれないか?」

『やれ』命令しないカェザイに、カイは目を閉じた。

「……俺は、ふつうの孤児なので。違うのが、あたりまえなので。皆さん、期待しないでくださいね」

 ぽそぽそつぶやくカイの手を、僕はにぎる。


「カイが、どこの誰でも、僕はカイが、だいすきだよ!」

「……っ……」

 息をのむカイを、まっすぐ見あげる。


「カイは、カイだよ。
 僕の、だいじな、カイ」

 大きなごつごつの手を、両の手で包んで、笑った。


「ゆりさま……」

 ふうわり、カイの耳が紅くなる。


「……ユィリ……?」

 セゥスの背中から、闇が噴いてる!



「だ、だってカイは僕の従僕だもん!」

 涙目な僕に、カイが笑う。


「ああ、そうです。俺が、どこの誰でも。
 俺は、ゆりさまのもの」

 微笑んだカイの夜空の髪が、舞いあがる。


「結界を張ってください。強めに」

「了解」

 カェザイが結界を強化する魔導具を起動した瞬間、カイの魔力が爆発した。



 魔力の、渦だ。
 そこにいるだけで、水の魔力に満たされる。

 僕の身体に、カイの魔力が満ちてゆく。

 共鳴するように僕の髪が舞いあがる。


「ユィリ……!?」

 セゥスが僕をかばうように前に立ってくれるのに、首をふる。


「だいじょうぶ。カイは──?」

 あふれゆく水の魔力の奔流の向こうで、カイの瞳が開いてく。



 夜空の瞳に、不思議な精霊文字が輝いた。






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