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……えぇえ……?
しおりを挟むカイの瞳のなかに現れた青い魔力に輝く精霊文字に、息をのむ僕たちの前で、カェザイの目がほそくなる。
「おかえり、カェツァ」
微笑んだカェザイは、セゥスと僕が、はらはら見守る前で結界の魔導具を止めた。
カイからあふれる水の魔力が、大公宮の庭を荒れ狂う。
烈しい魔力の渦に押されたカェザイが、背を大地に打ちつけるように倒れこんだ。
「ザイお兄ちゃん……!」
あわてた僕が駆け寄るのを制するように、駆け寄ってきた騎士たちに聞こえるような大声でカェザイが叫ぶ。
「うわぁあぁあ──! やられた──!」
……棒読みでした。
「…………えぇえ…………?」
ぼうぜんとする僕とセゥスとカイを横目に、駆け寄ってきた騎士や従僕たちにカェザイが宣言する。
「カェツァは、まごうことなきカェザ大公家の血を引く者、正々堂々と勝負し、俺を打ち果たした!
よって、カェツァがカェザ大公国、大公となる!」
「おぉおお!」
「カェツァ大公!」
「おかえりなさいませ!」
「おめでとうございます、カェツァ大公!」
皆の拍手と歓声に、カイの魔力がしゅるしゅる落ちて、ぼうぜんとカイは口を開けた。
「…………えぇえ…………?」
しばらく一緒に、あんぐりしていたセゥスが眉をそびやかして大地に倒れたままのカェザイを見やる。
「はめたの?」
低い声に、カェザイは笑った。
「いやだな、人聞きのわるい。カェツァは俺と勝負して勝ったんだ。それだけだ」
あんぐりしたままのカイがつぶやく。
「闘ってすらないだろう。魔力を放出しただけ……」
カェザイは、うなずく。
「あの魔力を見たら思うよ。かなわないなって。
……ひどい鍛錬をして、ひどい目に遭ったんだな。……たすけてやれずに、すまなかった」
カェザイの指が、ごつごつになったカイの手をなでる。
「あなたの手も、同じ苦しみを受けた手だ!
この大陸で孤児は酷い扱いを受ける。ルディア帝国でさえ、生きてゆくのが厳しい孤児もいるのに、どうして子どもを捨てるんだ──!」
カイの叫びに、跳びあがった僕もうなずいた。
「あんまりだよ!」
カェザイは、うなずく。
「酷い風習だ。……だからこそ、カェザ大公国の大公は強かった。皆を率いる圧倒的な力があった。
小国が大国に呑まれぬために、必死で繋いできた因習だ」
こぼれるため息とともに、カェザイが起きあがる。
「だが小国を維持することに、何の意味がある? 大陸を細々とした国で分けて、意地と見栄と差別で満たすだけじゃないか。カェザ大公国なんて、なくなっていいんだよ」
カェザイの手が、カイの肩を叩いた。
「だから、がんばって、カェツァ!
カェザ大公家ってのは脳筋でさ、俺、そういう難しいこと無理なんだ」
ぽんぽん肩を叩かれたカイが、仰け反った。
「いや俺も脳筋だから!」
承認してる!
「おつきがいるだろう。めちゃくちゃ頭の良さそうなのが」
目で指されたセゥスが、凛々しい眉をあげる。
「僕の頭はユィリのために使うのであって、カイのためじゃないんだけど」
「俺も、ゆりさまの従僕を辞める気はない」
言い切るカイに、カェザイの目がまるくなる。
「国のあるじになるより、もっちもっちの従僕でいることを選ぶのか!?」
ふんとカイが鼻を鳴らした。
「あたりまえだろう。
俺は、ゆりさまのものだから」
「うわあん! カイ! 僕もカイが、だいすきだよ……!」
ぎゅう!
カイに抱きついたら
「…………ユィリ……?」
セゥスの頭に激おこマークがついてる。
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