悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
156 / 196

……えぇえ……?

しおりを挟む



 カイの瞳のなかに現れた青い魔力に輝く精霊文字に、息をのむ僕たちの前で、カェザイの目がほそくなる。

「おかえり、カェツァ」

 微笑んだカェザイは、セゥスと僕が、はらはら見守る前で結界の魔導具を止めた。

 カイからあふれる水の魔力が、大公宮の庭を荒れ狂う。
 烈しい魔力の渦に押されたカェザイが、背を大地に打ちつけるように倒れこんだ。


「ザイお兄ちゃん……!」

 あわてた僕が駆け寄るのを制するように、駆け寄ってきた騎士たちに聞こえるような大声でカェザイが叫ぶ。


「うわぁあぁあ──! やられた──!」

 ……棒読みでした。


「…………えぇえ…………?」

 ぼうぜんとする僕とセゥスとカイを横目に、駆け寄ってきた騎士や従僕たちにカェザイが宣言する。


「カェツァは、まごうことなきカェザ大公家の血を引く者、正々堂々と勝負し、俺を打ち果たした!
 よって、カェツァがカェザ大公国、大公となる!」


「おぉおお!」

「カェツァ大公!」

「おかえりなさいませ!」

「おめでとうございます、カェツァ大公!」

 皆の拍手と歓声に、カイの魔力がしゅるしゅる落ちて、ぼうぜんとカイは口を開けた。


「…………えぇえ…………?」

 しばらく一緒に、あんぐりしていたセゥスが眉をそびやかして大地に倒れたままのカェザイを見やる。


「はめたの?」

 低い声に、カェザイは笑った。

「いやだな、人聞きのわるい。カェツァは俺と勝負して勝ったんだ。それだけだ」

 あんぐりしたままのカイがつぶやく。

「闘ってすらないだろう。魔力を放出しただけ……」

 カェザイは、うなずく。

「あの魔力を見たら思うよ。かなわないなって。
 ……ひどい鍛錬をして、ひどい目に遭ったんだな。……たすけてやれずに、すまなかった」

 カェザイの指が、ごつごつになったカイの手をなでる。

「あなたの手も、同じ苦しみを受けた手だ!
 この大陸で孤児は酷い扱いを受ける。ルディア帝国でさえ、生きてゆくのが厳しい孤児もいるのに、どうして子どもを捨てるんだ──!」

 カイの叫びに、跳びあがった僕もうなずいた。

「あんまりだよ!」

 カェザイは、うなずく。

「酷い風習だ。……だからこそ、カェザ大公国の大公は強かった。皆を率いる圧倒的な力があった。
 小国が大国に呑まれぬために、必死で繋いできた因習だ」

 こぼれるため息とともに、カェザイが起きあがる。

「だが小国を維持することに、何の意味がある? 大陸を細々とした国で分けて、意地と見栄と差別で満たすだけじゃないか。カェザ大公国なんて、なくなっていいんだよ」

 カェザイの手が、カイの肩を叩いた。

「だから、がんばって、カェツァ!
 カェザ大公家ってのは脳筋でさ、俺、そういう難しいこと無理なんだ」

 ぽんぽん肩を叩かれたカイが、仰け反った。

「いや俺も脳筋だから!」

 承認してる!


「おつきがいるだろう。めちゃくちゃ頭の良さそうなのが」

 目で指されたセゥスが、凛々しい眉をあげる。


「僕の頭はユィリのために使うのであって、カイのためじゃないんだけど」

「俺も、ゆりさまの従僕を辞める気はない」

 言い切るカイに、カェザイの目がまるくなる。


「国のあるじになるより、もっちもっちの従僕でいることを選ぶのか!?」

 ふんとカイが鼻を鳴らした。


「あたりまえだろう。
 俺は、ゆりさまのものだから」


「うわあん! カイ! 僕もカイが、だいすきだよ……!」

 ぎゅう!

 カイに抱きついたら


「…………ユィリ……?」

 セゥスの頭に激おこマークがついてる。






しおりを挟む
感想 425

あなたにおすすめの小説

姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました

彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。 姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

蒼井梨音
BL
箱入り公爵令息のエリアスは王太子妃候補に選ばれる。 キラキラの王太子に初めての恋をするが、王太子にはすでに想い人がいた・・・ 僕は当て馬にされたの? 初恋相手とその相手のいる国にはいられないと留学を決意したエリアス。 そして、エリアスは隣国の王太子に見初められる♡ (第一部・完) 第二部・完 『当て馬にされた公爵令息は、今も隣国の王太子に愛されている』 ・・・ エリアスとマクシミリアンが結ばれたことで揺らぐ魔獣の封印。再び封印を施すために北へ発つ二人。 しかし迫りくる瘴気に体調を崩してしまうエリアス…… 番外編  『公爵令息を当て馬にした僕は、王太子の胸に抱かれる』 ・・・ エリアスを当て馬にした、アンドリューとジュリアンの話です。 『淡き春の夢』の章の裏側あたりです。 第三部  『当て馬にされた公爵令息は、隣国の王太子と精霊の導きのままに旅をします』 ・・・ 精霊界の入り口を偶然見つけてしまったエリアスとマクシミリアン。今度は旅に出ます。 第四部 『公爵令息を当て馬にした僕は、王太子といばらの初恋を貫きます』 ・・・ ジュリアンとアンドリューの贖罪の旅。 第五部(完) 『当て馬にした僕が、当て馬にされた御子さまに救われ続けている件』 ・・・ ジュリアンとアンドリューがついに結婚! そして、新たな事件が起きる。 ジュリアンとエリアスの物語が一緒になります。 S S 不定期でマクシミとエリアスの話をあげてます。 この2人はきっといつまでもこんな感じなんだと思います。 エリアス・アーデント(公爵令息→王太子妃) マクシミリアン・ドラヴァール(ドラヴァール王国の王太子) ♢ アンドリュー・リシェル(ルヴァニエール王国の王太子→国王) ジュリアン・ハートレイ(伯爵令息→補佐官→王妃) ※扉絵のエリアスを描いてもらいました ※本編はしばらくお休みで、今は不定期に短い話をあげてます。

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

徒花伐採 ~巻き戻りΩ、二度目の人生は復讐から始めます~

めがねあざらし
BL
【🕊更新予定/毎日更新(夜21〜22時)】 ※投稿時間は多少前後する場合があります 火刑台の上で、すべてを失った。 愛も、家も、生まれてくるはずだった命さえも。 王太子の婚約者として生きたセラは、裏切りと冤罪の果てに炎へと沈んだΩ。 だが――目を覚ましたとき、時間は巻き戻っていた。 この世界はもう信じない。 この命は、復讐のために使う。 かつて愛した男を自らの手で裁き、滅んだ家を取り戻す。 裏切りの王太子、歪んだ愛、運命を覆す巻き戻りΩ。 “今度こそ、誰も信じない。  ただ、すべてを終わらせるために。”

お決まりの悪役令息は物語から消えることにします?

麻山おもと
BL
愛読していたblファンタジーものの漫画に転生した主人公は、最推しの悪役令息に転生する。今までとは打って変わって、誰にも興味を示さない主人公に周りが関心を向け始め、執着していく話を書くつもりです。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...