悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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ひみつ

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 僕たちの他には誰もいないのに、そっと海は声をひそめた。

 たいせつな秘密を明かすように。

「カェザ大公国の初代大公は、転生者だ。強い力が認められ、領土を割譲され、国をおこした。
 最初は『すんごい! ひゃっはー!』みたいな感じで楽しかったらしい。だが国まで与えられて、民の命を背負うようになって……転生者のチートは、この世界にあってはならないものなんじゃないかと思うようになった」

「やさしい人だったんだね」

 僕の言葉に、海も、セゥスも、カイも、カェザイも、微笑んでくれた。

「もっちもっちは、癒す力だ。でも初代の力は暗殺向きの力だ。……どんな強者も屠れてしまう」

 うつむくカェザイに、海は笑った。

「そんなことないっていうのは、ほんとうに強い人に逢ったらわかる」

 透夜や、よい子の隠密団の皆だね!

「まあでも、たいていのそこそこ強い人は、ぽこれるんだ。そんなチートを持った人が、この世界でうろうろして、この世界を変えてしまうのはよくないんじゃないかと初代は思った。
 でも国はもう、はじまってしまった。国を潰したら、それもまた誰かを苦しめることになる」

 海の言葉に、感心したようにカェザイが息をつく。

「正確に伝わっているんだな」

「改ざんされないように、すさまじい魔術式を組みこんで、初代が遺した映像記録の魔導具がある。
 そっちにも?」

「ある」

 うなずいたカェザイは、まるで何百年もたってようやく逢えた幼なじみを見るように、目をほそめた。
 息を吸ったカェザイが、つづける。

「初代には子どもがふたりいた。ひとりは水の魔力が異常に高く、ひとりは『気配完全隠蔽』を継いでいた。
 水の魔力が高いだけなら、まだ許されるだろう。そう判断して、水の魔力の高い子に国を譲った。『気配完全隠蔽』の技を持った子どもと伴侶とともにカェザ大公国を出たんだ」

 カェザイの青をおびた瞳が、海を見る。

「『子孫がこの世界にいるかもしれない、けれど決して逢わないように。頼らないように。
 この世界を、ぐちゃぐちゃにしてしまうかもしれないから』
 それが初代が遺した言葉だ」

 おおう!
『ぴんちのときは、皆でたすける!』転生者同盟とは逆な気がするけど、僕たちはひどいことを、しないからね!


「そうして初代と子どもは大陸を踏破し、毒の海を越えて見つけた島で、しあわせに暮らした。
 この世界には、まれに転生者が生まれてくるらしい。自分の強大な力が世界を変えてしまうことを恐れた転生者たちが、集まる島になった。
 自分の力を封じ、しあわせに、穏やかに暮らすための島に」

「それが、多紀くんと、おじいちゃんがいた、あそこ?」

 首をかしげる僕に、海がうなずく。


「子どもには、スキルが継がれることも、継がれないこともある。継がれないほうがいいと最初は思われていたんだが、ひどいことをする輩が、どこにでもいるだろう。
 そういうのから助けるために、強大な力を持っていないと太刀打ちできない時がある」

「……さらわれた、ゆりさまを奪還するために、トゥヤ師匠に頼ったみたいに?」

 ぼっそり告げるカイの目が、じっとりしていて、海は胸に手をあてた。


「ほんとうに、わるかった。ゆりにも、皆にも」

 心からの謝罪を表してくれた海の手を、ぽんぽんした僕は、微笑む。


「もう何度も謝ってくれたよ」

 ちいさな顔を歪める海の頭を、やさしくなでた。











────────────────


 ずっと読んでくださって、ありがとうございます!

 ふさわしい?(笑)もっちもっちユィリをお届けに(笑)元旦にも更新です(笑)
 見てくださる方、いらっしゃったら、ほんとうにありがとうございます!

 もしよかったら、ユィリと皆といっしょに、今年もどうぞよろしくお願い致しますー!





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