171 / 255
ぴちぴち
まだ幼いくーちゃんは、身体に魔力が入ってくるのが、こわいかもしれない。
大人でも、あんまりそんなことしないから、聞いたことがないことをされるのは、びっくりしちゃうよね。
だからこそ体内の魔力探査は、なるべく早く終わらせてあげないと。ちょっとでも行くところが分かれば、はやく終われるかも!
恐がらせないように、くーちゃんの頭をやさしくなでなでして、真っ赤な顔をのぞきこむ。
「くーちゃん、お腹が痛いとか、息がくるしいとか、お手々が痛いとか、あるかな?」
微笑んで聞く僕に、くーちゃんの大きな藍の瞳が、さまよう。
「……ぼく……あつい」
ほっぺも、お手々も、あちあちだ。
「熱が出てるみたいだね。お手々も熱い。医士には診てもらったのかな?」
聞いたら、のーすちゃんがうなずいた。
「どうして発熱してるのか、分からないって。
……どんどん、くーが衰弱して、寝台から起きあがれなくなって……」
つらそうなのーすちゃんと、くーちゃんを見ているだけで、僕までつらい。
他の医士に分からないということは、きんにくひめと一緒だ。
身体のなかに、きっとなにか異常がある。
「やっぱり身体のなかを見なくちゃ。痛くないから、ね?」
きゅうっと唇を噛んだくーちゃんが、うなずく。
「じゃあ横になって、楽にしてね」
ふわふわの髪をなでなでした僕は、くーちゃんの隣に置いてある丸い木の椅子に座った。
魔力補給に慣れてきてくれたカイとセゥスが、一瞬で僕の魔力を充填してくれたから、たぶんいける!
しずかに目を閉じる。
くーちゃんの手をにぎる。
そうっと、そうっと、痛くないように、ほそくほそく、魔力の糸をのばした。
くーちゃんの身体のなかは、光の魔力でいっぱいだ。
くーちゃんの魔力を注がれたときは痛くて泣いちゃったけど、知りあってからちょっと経ったからかな? 僕の魔力とくーちゃんの魔力のなじみが、よくなっている気がする。
くーちゃんの指先から、そうっと僕は緑の細い細い糸みたいにして魔力を滑りこませた。
そうっと、そうっと。
痛くしないように、気をつけて、ほそく、ほそく。
初対面のきんにくひめの魔脈のなかを行ったときより、ずっとスムーズに魔力の糸がするする入ってゆく。
拒絶されていない。
思うだけで、うれしくて、にやけてしまいそうな頬を、あわてて引き締める。
どんどん流れていってしまうから、異常がないか見落とさないように、ていねいに、でも素早く、くーちゃんの身体のなかに、僕の魔力の糸を巡らせてゆく。
……とってもきれいだね。
とっても元気そうに見える、けど……
きんにくひめの中を見たときより、ぴちぴちしてる! きんにくひめより、さらに若いからね!
でも、きっとどこかに、異常がある、はず……
指先から、腕、胸、お腹、足……通ってきたけど……ぴかぴかしてる……?
こっちじゃない?
てことは、この上、頭……??
ぼ、僕の魔力を流しても、苦しくないかな……?
でも何とか探索しないと、きっと、よくないところが分からない。
もっと、もっと僕の魔力の糸を細く、細く、限界まで、細く──!
緑にきらめくひかりの糸が、のびてゆく。
「苦しくなったら、すぐ教えてね」
くーちゃんの手をにぎる指に、力をこめる。
「わかった、もっちもっち」
熱い手で、僕の手をにぎった、くーちゃんが、うなずいてくれた。
あなたにおすすめの小説
空港清掃員58歳、転生先の王宮でも床を磨いたら双子に懐かれ、国王に溺愛される
木風
恋愛
羽田空港で十五年、黙々と床を磨いてきた清掃員・田中幸子(58)は事故死し、没落寸前の子爵令嬢エルシアとして転生する。
婚約破棄の末に家を追われた彼女が選んだのは、王宮の清掃員――前世の技で空気まで変わるほど磨き上げていく仕事だった。
やがて母を亡くした双子王子王女に懐かれ、荒れた執務室の主である喪中の国王とも距離が縮まり……。
「泣くなら俺の胸で」――床も心も磨き直す、清掃令嬢の溺愛成り上がり。
【本編完結】断罪される度に強くなる男は、いい加減転生を仕舞いたい
雷尾
BL
目の前には金髪碧眼の美形王太子と、隣には桃色の髪に水色の目を持つ美少年が生まれたてのバンビのように震えている。
延々と繰り返される婚約破棄。主人公は何回ループさせられたら気が済むのだろうか。一応完結ですが気が向いたら番外編追加予定です。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年の乙女ゲー転生BLです。
田舎育ちの天然令息、姉様の嫌がった婚約を押し付けられるも同性との婚約に困惑。その上性別は絶対バレちゃいけないのに、即行でバレた!?
下菊みこと
BL
髪色が呪われた黒であったことから両親から疎まれ、隠居した父方の祖父母のいる田舎で育ったアリスティア・ベレニス・カサンドル。カサンドル侯爵家のご令息として恥ずかしくない教養を祖父母の教えの元身につけた…のだが、農作業の手伝いの方が貴族として過ごすより好き。
そんなアリスティア十八歳に急な婚約が持ち上がった。アリスティアの双子の姉、アナイス・セレスト・カサンドル。アリスティアとは違い金の御髪の彼女は侯爵家で大変かわいがられていた。そんなアナイスに、とある同盟国の公爵家の当主との婚約が持ちかけられたのだが、アナイスは婿を取ってカサンドル家を継ぎたいからと男であるアリスティアに婚約を押し付けてしまう。アリスティアとアナイスは髪色以外は見た目がそっくりで、アリスティアは田舎に引っ込んでいたためいけてしまった。
アリスは自分の性別がバレたらどうなるか、また自分の呪われた黒を見て相手はどう思うかと心配になった。そして顔合わせすることになったが、なんと公爵家の執事長に性別が即行でバレた。
公爵家には公爵と歳の離れた腹違いの弟がいる。前公爵の正妻との唯一の子である。公爵は、正当な継承権を持つ正妻の息子があまりにも幼く家を継げないため、妾腹でありながら爵位を継承したのだ。なので公爵の後を継ぐのはこの弟と決まっている。そのため公爵に必要なのは同盟国の有力貴族との縁のみ。嫁が子供を産む必要はない。
アリスティアが男であることがバレたら捨てられると思いきや、公爵の弟に懐かれたアリスティアは公爵に「家同士の婚姻という事実だけがあれば良い」と言われてそのまま公爵家で暮らすことになる。
一方婚約者、二十五歳のクロヴィス・シリル・ドナシアンは嫁に来たのが男で困惑。しかし可愛い弟と仲良くなるのが早かったのと弟について黙って結婚しようとしていた負い目でアリスティアを追い出す気になれず婚約を結ぶことに。
これはそんなクロヴィスとアリスティアが少しずつ近づいていき、本物の夫婦になるまでの記録である。
小説家になろう様でも2023年 03月07日 15時11分から投稿しています。
【本編完結】攻略対象その3の騎士団団長令息はヒロインが思うほど脳筋じゃない!
哀川ナオ
BL
第二王子のご学友として学園での護衛を任されてしまった騎士団団長令息侯爵家次男アルバート・ミケルセンは苦労が多い。
突撃してくるピンク頭の女子生徒。
来るもの拒まずで全ての女性を博愛する軽薄王子。
二人の世界に入り込んで授業をサボりまくる双子。
何を考えているのか分からないけれど暗躍してるっぽい王弟。
俺を癒してくれるのはロベルタだけだ!
……えっと、癒してくれるんだよな?
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?