悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
180 / 196

おとうさん

しおりを挟む



「……おとうさま……」

 謝ったセァナに、誰よりも驚愕を表したのは、セゥスだった。
 ぼうぜんとしたように、つぶやくセゥスをセァナは見あげる。

「……僕には、顔と身分だけだった。……なのに陛下には……どちらも忌まわしいものだった。
 なら、顔も、頭も、資質も、性格もよかったら、そのうえで最高位の王になれば、きっとセゥスは愛される。誰からも愛されて……僕のようにはならない。……そう思って……僕は……セゥスに、厳しく……なのにユィリくんを愛して……ユィリくんに愛されるセゥスが……うらやましくて……憎らしく、なって……ぼく、は……」

 セァナの頬をつたう涙を見つめたセゥスは、うなずいた。

「……父上の苦しみを、知っています。だからこそ、父上の気もちに応えたいと尽力してきた。
 でも僕のユィリに手を出すなら、何もかもお終いなんです。
 わかるでしょう。母上を愛している父上なら」

 こくりとうなずくセァナの目から、涙が落ちた。

「……僕が、しっかりしなきゃ、僕のセゥスを守らなきゃ……そう、思っていただけだった。
 セゥスのためを思って……」

「わかっています。それが僕のためになったこともある。ならなかったこともある」

 セァナは、セゥスを見あげる。

「……もう僕より、大きくなったんだね」

「はい」

「……もう僕の手は、いらないんだね」

 涙にかすれる声に、セゥスはぎゅっと唇を噛んだ。


「……父上を、うらんでいました。僕とユィリを引き裂いた。すべての元凶だと。
 でも、そうじゃない。周りがなんと言おうと、僕は、僕の気もちを貫くべきだった。
 最後に決断するのは、いつだって自分です。
 選ぶのは、いつだって、自分です。
 ……あなたに罪を押しつけて、自分は悪くないなんて顔をする僕が、最低でした」

 セゥスのふるえる指が、僕の手をにぎる。


「教えてくれたのは、ユィリです」

 跳びあがった僕は、ぶんぶん首をふる。

「僕、なんにもしてないよ!」

 セゥスは首をふった。

「13年も結んだ伴侶(予定)契約を一方的に破棄した僕を、ひとことも糾弾することなく身を引いてくれたユィリを見たとき、分かったんだ。
 最低なのは僕で、間違ったのは僕で、ユィリがいないと生きられないのは、僕だって」

 抱きしめてくれるセゥスの肩が、ふるえてる。


「……父上とユィリなら、僕はユィリを選ぶって」

 かすれるささやきを、抱きしめる。


「選ばなくて、いいんだよ」

 ふるえる背を、抱きしめる。


「僕も、セァナさまも、いっしょにあいしてくれたら、大事にしてくれたら、とってもうれしい」

 セゥスの頬を、つつみこむ。


「どんなときだって凛々しくて、強くて、かっこいいセァナ殿下は、セゥスの目標で、セゥスの憧れで、セゥスのだいじな、おとうさまだ」

 くしゃりとセゥスのちいさな顔がゆがむ。


「セゥス」

 ふるえるセゥスの腕をやさしく離した僕は、セゥスの背を押した。

 おとうさんのほうへ。


 よろめいたセゥスが、父を見つめる。
 父の涙の瞳が、セゥスを見あげる。


「……厳しいことも、きついことも、あなたの愛だと知っていました。
 おかげで僕は、ユィリを守る頭と力を得た。
 ユィリを選ぶべきだった僕が、間違えてしまうくらい──」

 セゥスはひとつ、息をする。
 ふるえる声を、押しだした。


「おとうさまを、あいしています」


 愕然と見開かれたセァナの瞳から、涙があふれれる。


「……セゥスを……あい、してる……!」


 くずれ落ちる身体を、セゥスの腕が、抱きしめた。








しおりを挟む
感想 425

あなたにおすすめの小説

姉の聖女召喚に巻き込まれた無能で不要な弟ですが、ほんものの聖女はどうやら僕らしいです。気付いた時には二人の皇子に完全包囲されていました

彩矢
BL
20年ほど昔に書いたお話しです。いろいろと拙いですが、あたたかく見守っていただければ幸いです。 姉の聖女召喚に巻き込まれたサク。無実の罪を着せられ処刑される寸前第4王子、アルドリック殿下に助け出さる。臣籍降下したアルドリック殿下とともに不毛の辺境の地へと旅立つサク。奇跡をおこし、隣国の第2皇子、セドリック殿下から突然プロポーズされる。

悪役令嬢と同じ名前だけど、僕は男です。

みあき
BL
名前はティータイムがテーマ。主人公と婚約者の王子がいちゃいちゃする話。 男女共に子どもを産める世界です。容姿についての描写は敢えてしていません。 メインカプが男性同士のためBLジャンルに設定していますが、周辺は異性のカプも多いです。 奇数話が主人公視点、偶数話が婚約者の王子視点です。 pixivでは既に最終回まで投稿しています。

転生したので、今世こそは楽しく生きます!~大好きな家族に囲まれて第2の人生を謳歌する~

結笑-yue-
ファンタジー
『可愛いわね』 『小さいな』 『…やっと…逢えた』 『我らの愛しい姫。パレスの愛し子よ』 『『『『『『『『『『我ら、原初の精霊の祝福を』』』』』』』』』』 地球とは別の世界、異世界“パレス”。 ここに生まれてくるはずだった世界に愛された愛し子。 しかし、神たちによって大切にされていた魂が突然できた輪廻の輪の歪みに吸い込まれてしまった。 神たちや精霊王、神獣や聖獣たちが必死に探したが、終ぞ見つけられず、時間ばかりが過ぎてしまっていた。 その頃その魂は、地球の日本で産声をあげ誕生していた。 しかし異世界とはいえ、神たちに大切にされていた魂、そして魔力などのない地球で生まれたため、体はひどく病弱。 原因不明の病気をいくつも抱え、病院のベッドの上でのみ生活ができる状態だった。 その子の名は、如月結笑《キサラギユエ》ーーー。 生まれた時に余命宣告されながらも、必死に生きてきたが、命の燈が消えそうな時ようやく愛し子の魂を見つけた神たち。 初めての人生が壮絶なものだったことを知り、激怒し、嘆き悲しみ、憂い……。 阿鼻叫喚のパレスの神界。 次の生では、健康で幸せに満ち溢れた暮らしを約束し、愛し子の魂を送り出した。 これはそんな愛し子が、第2の人生を楽しく幸せに暮らしていくお話。 家族に、精霊、聖獣や神獣、神たちに愛され、仲間を、友達をたくさん作り、困難に立ち向かいながらも成長していく姿を乞うご期待! *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈ 小説家になろう様でも連載中です。 第1章無事に完走したので、アルファポリス様でも連載を始めます! よろしくお願い致します( . .)" *:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈*:;;;;;:*◈

当て馬だった公爵令息は、隣国の王太子の腕の中で幸せになる

蒼井梨音
BL
箱入り公爵令息のエリアスは王太子妃候補に選ばれる。 キラキラの王太子に初めての恋をするが、王太子にはすでに想い人がいた・・・ 僕は当て馬にされたの? 初恋相手とその相手のいる国にはいられないと留学を決意したエリアス。 そして、エリアスは隣国の王太子に見初められる♡ (第一部・完) 第二部・完 『当て馬にされた公爵令息は、今も隣国の王太子に愛されている』 ・・・ エリアスとマクシミリアンが結ばれたことで揺らぐ魔獣の封印。再び封印を施すために北へ発つ二人。 しかし迫りくる瘴気に体調を崩してしまうエリアス…… 番外編  『公爵令息を当て馬にした僕は、王太子の胸に抱かれる』 ・・・ エリアスを当て馬にした、アンドリューとジュリアンの話です。 『淡き春の夢』の章の裏側あたりです。 第三部  『当て馬にされた公爵令息は、隣国の王太子と精霊の導きのままに旅をします』 ・・・ 精霊界の入り口を偶然見つけてしまったエリアスとマクシミリアン。今度は旅に出ます。 第四部 『公爵令息を当て馬にした僕は、王太子といばらの初恋を貫きます』 ・・・ ジュリアンとアンドリューの贖罪の旅。 第五部(完) 『当て馬にした僕が、当て馬にされた御子さまに救われ続けている件』 ・・・ ジュリアンとアンドリューがついに結婚! そして、新たな事件が起きる。 ジュリアンとエリアスの物語が一緒になります。 S S 不定期でマクシミとエリアスの話をあげてます。 この2人はきっといつまでもこんな感じなんだと思います。 エリアス・アーデント(公爵令息→王太子妃) マクシミリアン・ドラヴァール(ドラヴァール王国の王太子) ♢ アンドリュー・リシェル(ルヴァニエール王国の王太子→国王) ジュリアン・ハートレイ(伯爵令息→補佐官→王妃) ※扉絵のエリアスを描いてもらいました ※本編はしばらくお休みで、今は不定期に短い話をあげてます。

虐げられた令息の第二の人生はスローライフ

りまり
BL
 僕の生まれたこの世界は魔法があり魔物が出没する。  僕は由緒正しい公爵家に生まれながらも魔法の才能はなく剣術も全くダメで頭も下から数えたほうがいい方だと思う。  だから僕は家族にも公爵家の使用人にも馬鹿にされ食事もまともにもらえない。  救いだったのは僕を不憫に思った王妃様が僕を殿下の従者に指名してくれたことで、少しはまともな食事ができるようになった事だ。  お家に帰る事なくお城にいていいと言うので僕は頑張ってみたいです。        

この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!

ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。 ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。 これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。 ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!? ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19) 公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。

徒花伐採 ~巻き戻りΩ、二度目の人生は復讐から始めます~

めがねあざらし
BL
【🕊更新予定/毎日更新(夜21〜22時)】 ※投稿時間は多少前後する場合があります 火刑台の上で、すべてを失った。 愛も、家も、生まれてくるはずだった命さえも。 王太子の婚約者として生きたセラは、裏切りと冤罪の果てに炎へと沈んだΩ。 だが――目を覚ましたとき、時間は巻き戻っていた。 この世界はもう信じない。 この命は、復讐のために使う。 かつて愛した男を自らの手で裁き、滅んだ家を取り戻す。 裏切りの王太子、歪んだ愛、運命を覆す巻き戻りΩ。 “今度こそ、誰も信じない。  ただ、すべてを終わらせるために。”

処理中です...