悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ

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いってきます




「ユィリ──!」

 セゥスの悲鳴も、ぬくもりも、香りも、まるで僕の夢みたいに、遠くなる。

「ああもう、うちにおいで。ロベナ王国にいたら、毎日こんなだろ」

 くしゃりと髪をなでてくれる海くんも、遠くなる。

 僕、やっぱり、ちょっとお休みしないと、だめみたいです……?



 倒れた僕を抱っこして、海まで走ってくれようとする海くんのを止めたのは、セゥスだ。

「僕が運ぶ」

「いや重いだろ」

 速攻つっこむ海くんが

「ひ、ひどい……! さっきは軽いって言ったのにぃい!」

 泣いちゃうよ!
 僕、ほっぺは、もっちもっちだけど、ぷにぷにだけど、メタボじゃないよ。

 ……たぶん……!
 きっと……!

 涙目になる僕の頭を、海くんが、ぽんぽんしてくれる。

「比較だよ。麦の粉の袋、でっかいのひとつ、かつぐより重いんだぞ!」

 しかられました。その通りだ!

「……ふぇ、ごめんなさい……僕、歩く!」

「ぜっったい、だめ!」

 皆に、しかられました……


 最近、セゥス以外の皆も、僕のこと、しかってくれる?

 いいことなのかな?

 ふわふわ熱い頬で見あげたら、セゥスが抱っこしてくれる。

「僕が運ぶ」

「兄貴の腕が無理になったら、俺が運ぶよ」

 のーすちゃんの言葉に、セゥスは首をふる。

「いや、ノゥスはクゥスを運べばいい」

「ぼく、もっちもっちより、かるーいの!」

 くーちゃんが、胸を張る。

「ちっちゃいからな」

 海くんが、うむうむしてる。

「じゃあ兄貴が無理になったら──」

「わたくしが」

 ノゥスに答えるカイの微笑みが、かんぺきだ。

「……わーったよ。じゃあ、カイも無理になったら俺な」

「そ、そんな、こんなに苦しんでる、ゆりちゃんを運ぶなんて──!」

 泣いちゃうおかあさんを止めたのは、カイだ。

「ゆりさまには、休養が大切なのです。ロドア家にいたら、まったく全然、休めませんでしょう。皆さまが可愛がってくださるので」

「あぅう……!」

 皆で『お菓子食べる?』『ちゃんと寝てる?』『もっちもっち!』『ゆりちゃん、かぁわいぃねぇえ!』なでなでしてくれたりするので、あんまりお休みできないのでした……

「ごめんね、おかあさん、おとうさん、ロドお兄ちゃん、サザお兄ちゃん。
 僕、ちょっとお休みしないと、つらいみたい?」

「あぁあ、ゆりちゃん……!」

 泣いてくれるおとうさんの頭をなでなでしたら、皆が頭を差しだしてくれるので、皆の頭をなでなでしました。

「ではしばらく、海の島に行ってまいります。
 この身に代えても必ずユィリをお守りします」

 胸に手をあてて誓うセゥスに、僕の家族皆が、目をほそめる。

「……ひどい男と伴侶(予定)契約を結ばされたものだと思っていたけれど……」

「ゆりちゃんを本気で守ってくれそうだね」

「……くやしいが……」

「……ゆりちゃんが、セゥスさまを、だいすきだからなあ……」

 おかあさんが、おとうさんが、ロドお兄ちゃんが、サザお兄ちゃんが、肩を落とす。

「いっておいで、ゆりちゃん。気をつけて」

 やさしく頭をなでてくれるロドお兄ちゃんの手をにぎる。

「ありがとう、ロドお兄ちゃん」

「まだゆりちゃんは16歳なんだから、清らかな、おつきあいをね!」

 ぎゅうぎゅう手をにぎってくれるサザお兄ちゃんに、燃える頬でうなずいた。

「わ、わかった!」

「いってらっしゃい──!」
「気をつけて──!」

 見送ってくれる皆と一緒に、とんがり帽子が揺れる。

「ユィリおぼっちゃま。休めば魔力は回復しましょう。
 使うときは、ゆっくり調子を見ながらですじゃ。無理をすると、また逆戻りですぞ」

「はい!」

 魔導士おじいちゃんの言葉にうなずく。

 僕の頭をなでてくれたおじいちゃんが、微笑んだ。

「魔力が枯渇するほど、魔力を使うことを繰り返すことは、命を削るような、まったくおすすめできんことですが。得られることも、あるやもしれません。
 がんばりなされ」

「はい……!」

 しわしわの手をにぎって、笑った。





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