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いってきます
「ユィリ──!」
セゥスの悲鳴も、ぬくもりも、香りも、まるで僕の夢みたいに、遠くなる。
「ああもう、うちにおいで。ロベナ王国にいたら、毎日こんなだろ」
くしゃりと髪をなでてくれる海くんも、遠くなる。
僕、やっぱり、ちょっとお休みしないと、だめみたいです……?
倒れた僕を抱っこして、海まで走ってくれようとする海くんのを止めたのは、セゥスだ。
「僕が運ぶ」
「いや重いだろ」
速攻つっこむ海くんが
「ひ、ひどい……! さっきは軽いって言ったのにぃい!」
泣いちゃうよ!
僕、ほっぺは、もっちもっちだけど、ぷにぷにだけど、メタボじゃないよ。
……たぶん……!
きっと……!
涙目になる僕の頭を、海くんが、ぽんぽんしてくれる。
「比較だよ。麦の粉の袋、でっかいのひとつ、かつぐより重いんだぞ!」
しかられました。その通りだ!
「……ふぇ、ごめんなさい……僕、歩く!」
「ぜっったい、だめ!」
皆に、しかられました……
最近、セゥス以外の皆も、僕のこと、しかってくれる?
いいことなのかな?
ふわふわ熱い頬で見あげたら、セゥスが抱っこしてくれる。
「僕が運ぶ」
「兄貴の腕が無理になったら、俺が運ぶよ」
のーすちゃんの言葉に、セゥスは首をふる。
「いや、ノゥスはクゥスを運べばいい」
「ぼく、もっちもっちより、かるーいの!」
くーちゃんが、胸を張る。
「ちっちゃいからな」
海くんが、うむうむしてる。
「じゃあ兄貴が無理になったら──」
「わたくしが」
ノゥスに答えるカイの微笑みが、かんぺきだ。
「……わーったよ。じゃあ、カイも無理になったら俺な」
「そ、そんな、こんなに苦しんでる、ゆりちゃんを運ぶなんて──!」
泣いちゃうおかあさんを止めたのは、カイだ。
「ゆりさまには、休養が大切なのです。ロドア家にいたら、まったく全然、休めませんでしょう。皆さまが可愛がってくださるので」
「あぅう……!」
皆で『お菓子食べる?』『ちゃんと寝てる?』『もっちもっち!』『ゆりちゃん、かぁわいぃねぇえ!』なでなでしてくれたりするので、あんまりお休みできないのでした……
「ごめんね、おかあさん、おとうさん、ロドお兄ちゃん、サザお兄ちゃん。
僕、ちょっとお休みしないと、つらいみたい?」
「あぁあ、ゆりちゃん……!」
泣いてくれるおとうさんの頭をなでなでしたら、皆が頭を差しだしてくれるので、皆の頭をなでなでしました。
「ではしばらく、海の島に行ってまいります。
この身に代えても必ずユィリをお守りします」
胸に手をあてて誓うセゥスに、僕の家族皆が、目をほそめる。
「……ひどい男と伴侶(予定)契約を結ばされたものだと思っていたけれど……」
「ゆりちゃんを本気で守ってくれそうだね」
「……くやしいが……」
「……ゆりちゃんが、セゥスさまを、だいすきだからなあ……」
おかあさんが、おとうさんが、ロドお兄ちゃんが、サザお兄ちゃんが、肩を落とす。
「いっておいで、ゆりちゃん。気をつけて」
やさしく頭をなでてくれるロドお兄ちゃんの手をにぎる。
「ありがとう、ロドお兄ちゃん」
「まだゆりちゃんは16歳なんだから、清らかな、おつきあいをね!」
ぎゅうぎゅう手をにぎってくれるサザお兄ちゃんに、燃える頬でうなずいた。
「わ、わかった!」
「いってらっしゃい──!」
「気をつけて──!」
見送ってくれる皆と一緒に、とんがり帽子が揺れる。
「ユィリおぼっちゃま。休めば魔力は回復しましょう。
使うときは、ゆっくり調子を見ながらですじゃ。無理をすると、また逆戻りですぞ」
「はい!」
魔導士おじいちゃんの言葉にうなずく。
僕の頭をなでてくれたおじいちゃんが、微笑んだ。
「魔力が枯渇するほど、魔力を使うことを繰り返すことは、命を削るような、まったくおすすめできんことですが。得られることも、あるやもしれません。
がんばりなされ」
「はい……!」
しわしわの手をにぎって、笑った。
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