40 / 254
これからなのです
しおりを挟む「あ、そだ、リト、これ作ってみたんだよ。林檎入り。ジゼさまに、どうかなあ?」
こわもてで筋肉もりもりの料理長が持ってきてくれたのは、輝く緑色の青汁だ。
見るからに物凄く体育会系なおじちゃん料理長は、繊細な料理で味覚でも視覚でも楽しませてくれると大絶賛で、ジェディス家の晩餐は帝都でも評判だという。
そのこわもて料理長が、林檎と一緒にジゼが大きらいな緑の菜っ葉をわんさか粉砕して、青汁をわざわざつくってくれたという。
野菜が苦手なジゼのために!
料理長の愛が籠もった、毒々しい緑色の青汁が、朝の光にきらきらしてる。
皆から愛されるジゼ、尊い。
「料理、ちょ、ありあと、ござまし、おすすめ、しましあ!」
「おお、頼むぜ、リト!」
ふわふわ揺れるしっぽと一緒に、料理長の愛の青汁をジゼにお勧めしようと胸を叩いたリトは、ジゼの執務室へと戻る。
ジゼはお勉強の時間だ。
リトはジゼがどんな執務をしているのかちょこっと見ながら、要らなくなった資料を片づけたり、必要な資料を持ってきたり、領地に指示書や質問書を送る手配をしたりしつつ、ジゼの様子を観察する。
ややこしい学説や、領地の頭の痛い問題にジゼの眉根が寄る前に
「ジゼしゃま、お茶でし」
明光茶を淹れて、そっとお出しする。
瞬いたジゼは
「ありがとう、リト」
口をつけて、目を閉じる。
ほんのり笑みが唇に浮かんで、眉間がやわらかに開いてく。
「リトはよく気がつくな」
ふるふるリトは首を振った。
「セバ、教え。セバ、すごぃ!」
ぱちぱち拍手して、しっぽをぶんぶんするリトに、赤くなったジゼは頷いた。
「あぁ、うん、セバが家令になってくれてから、父上の執務は非常に楽になったようだよ。寝不足も進行してるようだけど」
喉を鳴らしてジゼが笑う。
「ねぶそく?」
首を傾げるリトに、ジゼの眦が朱くなる。
「……うん、俺たちは、これから」
赤い頬で、ジゼが手を握ってくれる。
「あい!」
ぎゅ
握るジゼのごつごつの手が、世界で一番、愛しい。
ジゼのお勉強が終わったら、朝ご飯だ。
ジゼの父ゲォルグと一緒に食べる。
ジェディス家の餐の間は筆頭侯爵家としてはびっくりするほどこじんまりしている。
テーブルの端っこと端っこで遠くで食べても家族一緒の食事じゃないからと、わざと部屋とテーブルをちっちゃくしたらしい。
白いクロスのかけられたテーブルの上座、奥の窓側にゲォルグが、その隣の辺にジゼが座る。
お母さんがいないっぽいのは、聞いたらだめなのかと思って聞いてない。
設定には微塵も出てこなかった、と思う。
攻略対象の両親が出張ってくるのは王子くらいなのかも。
家令はあまりしないらしいけど、ゲォルグの給仕をするのはセバだ。
ジゼの給仕をするのは、ありがたく勿体ないことに、リトだ。
「ジゼしゃま、お飲み物、こちら?」
料理長渾身の毒々しく輝く青汁をおすすめしてみた。
リトの期待の目に、ちょっと引き攣ったジゼが頷く。
「……あ、あぁ……飲んで……み、る……」
ひくひくする口元を隠すように目を伏せるジゼに、リトは胸を張った。
「りんご、入てる、でし。飲みやすぃ、でし!」
ジゼが大きらいな野菜もたっぷりの青汁を注ぐ。
鼻を摘みそうな勢いで、ぎゅっと目を閉じ、ぐっと呷ったジゼの瞳がまるくなる。
「……うまい」
「料理ちょ、よろこぶ、でし!」
ぽふぽふ揺れるしっぽに、ジゼが笑った。
3,102
あなたにおすすめの小説
記憶を無くしたら家族に愛されました
レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない…
家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
紳士オークの保護的な溺愛
こむぎこ7g
BL
■ 世界と舞台の概要
ここはオークの国「トールキン」。
魔法、冒険者、ギルド、ダンジョン、獣人やドラゴンが存在する、いわゆる“典型的な異世界”だが、この国の特徴はオークが長命で、理知的な文明社会を築いていることにある。
トールキンのオークたちは、
灰色がかった緑や青の肌
鋭く澄んだ眼差し
鍛え上げられた筋骨隆々の体躯
を持ち、外見こそ威圧的だが、礼節と合理性を重んじる国民性をしている。
異世界から来る存在は非常に珍しい。
しかしオークは千年を生きる種族ゆえ、**長い歴史の中で「時折起こる出来事」**として、記録にも記憶にも残されてきた。
⸻
■ ガスパールというオーク
ガスパールは、この国でも名の知れた貴族家系の三男として生まれた。
薄く灰を帯びた緑の肌、
赤い虹彩に金色の瞳孔という、どこか神話的な目。
分厚い肩と胸板、鍛え抜かれた腹筋は鎧に覆われずとも堅牢で、
銀色に輝く胸当てと腰当てには、代々受け継がれてきた宝石が嵌め込まれている。
ざらついた低音の声だが、語調は穏やかで、
貴族らしい品と、年齢を重ねた余裕がにじむ話し方をする。
● 彼の性格
• 極めて面倒見がよく、観察力が高い
• 感情を声高に表に出さないが、内側は情に厚い
• 責任を引き受けることを当然のように思っている
• 自分が誰かに寄りかかることだけは、少し苦手
どこか「自分は脇役でいい」と思っている節があり、それが彼の誠実さと同時に、不器用さでもあった。
⸻
■ 過去と喪失 ――愛したオーク
ガスパールはかつて、平民出身のオーク男性と結ばれていた。
家柄も立場も違う相手だったが、
彼はその伴侶の、
不器用な優しさ
朝食を焦がしてしまうところ
眠る前に必ず手を探してくる癖
を、何よりも大切にしていた。
しかし、その伴侶はすでにこの世を去っている。
現在ガスパールが暮らしているのは、
貴族街から少し離れた、二階建ての小さな屋敷。
華美ではないが、掃除が行き届き、静かな温もりのある家だ。
彼は今も毎日のように墓参りを欠かさない。
それは悲嘆というより、対話に近い行為だった。
⸻
■ 現在の生活
ガスパールは現在、
街の流通を取り仕切る代表的な役職に就いている。
多忙な職務の合間にも、
洗濯、掃除、料理
帳簿の整理
屋敷の修繕
をすべて自分でこなす。
仕事、家事、墓参り。
規則正しく、静かな日々。
――あなたが現れるまでは。
姉の代わりに舞踏会に行ったら呪われた第三王子の初恋を奪ってしまった
近井とお
BL
幼少期、ユーリは姉によく似ていることから彼女の代わりに社交の場に出席することが多々あった。ある舞踏会の夜、中庭に姿を眩ませたユーリに誰かがぶつかってくる。その正体は呪われていると噂の第三王子であったが、ぶつかられたことに腹を立てたユーリは強気に接し、ダンスを踊った後、彼を捜している気配を感じてからかいながら立ち去る。
それから数年後、第三王子は初恋の令嬢を探し始めたが、それはユーリに違いなく……。
初恋の相手を捜す第三王子×軽口令息
【8話完結】俺は推しじゃない!ただの冒険者だ!
キノア9g
BL
ごく普通の中堅冒険者・イーサン。
今日もほどほどのクエストを探しにギルドを訪れたところ、見慣れない美形の冒険者・アシュレイと出くわす。
最初は「珍しい奴がいるな」程度だった。
だが次の瞬間──
「あなたは僕の推しです!」
そう叫びながら抱きついてきたかと思えば、つきまとう、語りかける、迫ってくる。
挙句、自宅の前で待ち伏せまで!?
「金なんかねぇぞ!」
「大丈夫です! 僕が、稼ぎますから!」
平穏な日常をこよなく愛するイーサンと、
“推しの幸せ”のためなら迷惑も距離感も超えていく超ポジティブ転生者・アシュレイ。
愛とは、追うものか、追われるものか。
差し出される支援、注がれる好意、止まらぬ猛アプローチ。
ふたりの距離が縮まる日はくるのか!?
強くて貢ぎ癖のあるイケメン転生者 × 弱めで普通な中堅冒険者。
異世界で始まる、ドタバタ&ちょっぴり胸キュンなBLコメディ、ここに開幕!
全8話
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる