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目覚めるのです
「あぅあ──! リト──♡」
悶えたアリアスが、首を振る。
「ひ、ひと、りで、だだだだいじょぶ、だから、り、リトは、離れ、て……!」
涙と鼻水でダラダラになりながらも、魔法陣の外へと押し出してくれるアリアスの手を握る。
「約束、守る、でし!」
ぎゅう
ふるえる肩を抱きしめる。
「うわあん! リト──!」
ぎゅうぎゅう抱きついてくるアリアスの震える背に腕を回す。
ちょっとでも落ち着いたらいいと、もふもふのしっぽで、ぽふぽふした。
「一緒、がんば、ましあ、アリアス、しゃま」
「リト……♡」
あふれ落ちる涙と鼻水を、セバが持たせてくれた白いハンカチで拭ってあげる。
「あうあう」
「お傍、いましあ」
「リト──♡」
抱き合うアリアスとリトに
「思ってたのと違う」
ついてきたノァが不服そうだ。
「は、離れろ──!」
ジゼが叫んで
「楽しい!」
ルァルの目がキラキラしてる。
ゴゴゴゴゴ……
どんな魔法の衝撃にも耐えるという重たそうな魔導壁の扉が開いてく。
「ほっほっほ、お待たせしましたの」
真っ白なお髭が床についている、いかにも魔導士なお爺ちゃんがいらっしゃいました。
アリアスが泣いてる。
手を握るくらいで励まされるか解らないけど、でも傍にいるから!
「ふぇえぇえ、リト──!」
「アリアスしゃま……!」
「あぁもう早く終わらせてくれ──!」
激おこなジゼに、しょんぼりする。
そうだよね。
最愛の主人公に、自分じゃない他の誰かがくっついてたら、厭な気分になるよね。
「……ごめなしぁ」
ぺしょりと垂れる耳としっぽで、ごめんなさい。
「ち、ちが……!」
ジゼがわたわたしてる。
しかしジゼの不興を買ったとしても、泣いて震えるアリアスを見捨てる訳にはいかない!
きゅ、とアリアスの手を握るリトと
ぎゅうう、とリトの手を握るアリアスと、ふたりの決死の覚悟を躱すような、軽やかな声が降る。
「じいちゃん、さくっと覚醒頼む」
気さくなルァルに、真っ白なもこもこ眉毛のしたで、おじいちゃん魔導士は頷いた。
「では、お覚悟はよろしいかな?」
ガタガタ震えるアリアスは、真っ青だ。
「よろしくないですって言いたいよう──!」
アリアスの涙が止まらない!
「いっしょ、がんば、ましあ!」
ぎゅう
涙のアリアスを抱きしめる。
ぽふぽふ、しっぽでも支えてあげる。
「リト──♡」
アリアスの目が♡になった瞬間
「では、参ります!」
おじいちゃん魔導士が、杖を掲げた。
まばゆい光が広やかな間を駆け、床を覆う魔紋が一際大きな輝きを放った瞬間、アリアスとリトは凄まじい衝撃に薙ぎ倒された。
「が、は──!」
………………え………………?
口から血が出た。
え!?
付き添いなのに!?
茫然とリトは、口から溢れゆく真紅の血を見つめる。
い、痛い痛い痛い──!
付き添いなのに痛いよう──!
ぎゅうぎゅうお互いの手を握りしめるアリアスが、白目を剥いてる。
剥いちゃうよ、痛いよ、わかるよ──!
あふれる光は、止まらない。
魔紋から噴きあがる光が、アリアスを、リトを包んで、膨張する。
「ご、は……! が……っ……!」
唇から、血が、あふれる。
ドロリとした、あたたかな命の雫が、喉を塞いでゆく。
「リト──!」
ジゼの悲鳴が、聴こえた気がした。
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