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おひめさま?
しおりを挟むじんとしたリトは、深々頭をさげた。
「ありあと、ござまし」
ジゼは首を振った。
「たすけが遅くなったことを、ルァル殿下も悔いておられる。勿論、俺も」
やさしい指が、リトの頭を撫でてくれる。
「皆、身体にも心にも傷を負っていて、人間が恐ろしいらしい。脅えて、治癒魔法をさせてもらえないと。ご飯はようやく食べてくれるようになったようだが、皆、人間が信じられないのだろうな」
ジゼの腕が、リトをやさしく抱きしめる。
「リトが話しかけてくれたら、皆、聞いてくれるかもしれないと。……もっと早くリトに協力を頼むべきだったが……俺はリトの体調を優先してしまった。すまない」
こぷこぷ血を吐いてたから、そんなので孤児院に来たら、いじめられて吐血してると勘違いされちゃう! ので、ジゼしゃまの対応は間違ってないよ! を、この口でどうやって言う!?
「僕、血、こぷこぷ、皆、びくり!
ジゼしゃま、やさし、まちがぅ、なぃない!」
サザの言葉だけじゃなく、リトの言葉も解ってくれるジゼが、抱きしめてくれる。
「……ありがとう、リト」
ふわふわの耳の間に挟まったジゼの頬が、熱い。
リトの頬も熱くなって、ふたりで笑う。
「……あのー、僕のこと、忘れてない……?」
拗ねたみたいなレォンの唇が尖っていて、とってもかわいー!
ぽくぽく歩を進めたサザと、ゆっくり街中を走ったセバとテデを乗せた馬車が孤児院という名の豪邸に到着する。
広やかな庭には噴水まで設えられ、青空に透きとおる飛沫を振りまいている。
「ひゃー! すごぃでし!」
ぱちぱち拍手するリトの腕のなかで、レォンが首をかしげてる。
「ジゼの家の十分の一もないぞ?」
「格、ちがぅ、でし!」
「なるほろ」
ジゼはそっと目を伏せた。
「……よくないことだと思う。父上は民のために財を使われるが、歴代のジェディス家当主はそうではなかった。民から搾取し築いた地位も財も、穢れた、あってはならないものだ。民にお返しすべきものだと思っている」
まっすぐなジゼの目を見あげたリトは、そっとジゼの手を握る。
「ジゼしゃま、道、おぅえん、すゆでし!」
ぽふぽふのしっぽで、笑う。
「ぼ、僕も! 困ったことがあるなら、言うといい!」
ぱたぱたの翼で、レォンが笑ってくれる。
拳で解決ですね、わかります。
ちがう、レォンしゃまなら
ゴォガァオオォオオオ──! ってちょっとお口を開けるだけで、解決だ!
さっとサザから降りたジゼが、リトに手を差し出してくれる。
おひめさまになった気もちだなんて、だめなのに、でもほっぺたが熱くて鼓動が駆けて、そっと、ジゼの手に、指を重ねる。
きゅ、と握られ、やさしく引き寄せられた。
ふわりと宙に舞った身体を、ジゼの腕が抱きとめてくれる。
やわらかに弧を描くふわふわのしっぽと、ほわほわの耳と一緒に、ジゼの腕のなかに飛び込んだ。
抱きしめてくれるジゼの腕のなかで、ジゼとリトの鼓動が、溶けあうように響いてく。
……おひめさま、みたい。
燃える頬で、ジゼの胸に顔を埋める。
「……あのー、僕、忘れてない?」
ちっちゃな翼でぱたぱたサザから降りたレォンの唇が尖ってる。
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