もふもふ獣人に転生したら最愛の推しに溺愛されています

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
121 / 262

たったひとつの

しおりを挟む



 とても離れがたいのだけれど、帰る時間になってしまった。

 皆を抱きしめて鼻をすするリトに、もふもふの皆がぎゅうぎゅう抱きついた。


 お別れは、いつも、さみしい。


「今度は、甘いお菓子もいっぱい持ってくるね」

 名残惜しそうにテデが皆に手を振った。

「また近いうちに伺おう」

 やさしく頭をなでてくれるジゼの言葉に、リトは蕩けて笑う。


 次がある。

 きっと、また逢える。

 そう思えることが、どんなに希少でありがたく、あたたかいことなのか、リトはもう知ってる。


「ありあと、ござまし。皆、元気、でね!」

 ちっちゃな獣人の皆を抱きしめて、涙の滲む瞳で笑ったときだった。


「リト、俺、成人したんだ。青狼の血を引いてる。獣人のなかでは、かなり強いと思う」

 突然のアオの自己紹介にきょとんとしたリトは、こくりと頷いた。

 獣人の強さは、何の獣の血が流れているかに因る。
 強いのは虎や熊や狼、自然界で強い獣と同じなのだけれど、獣人の場合、自然界の獣にはあまりない色を継ぐ者がいる。
 赤虎や青狼だ。
 一見しただけで誰もが解るほど、強い。
 だからいつも獣人たちの群れの頭になる。

 人間でいうなら王族みたいな感じかな?
 圧倒的に強いので、皆を護り導く盾と剣になってくれる。

「さぃきょー、一角、でし!」

 照れくさそうに頷いたアオが、リトのちっちゃな手を握る。

 あんなにちっちゃかったアオが、こんなに大きくなったのか。
 包み込まれた手にびっくりするリトに、真っ赤な頬でアオが告げる。


「リトの伴侶に、なりたい」


 まっすぐな群青の瞳に見つめられたリトのしっぽが、爆発した。


「………………え………………?」


「リトが成人するまで、ずっと待つから! ずっとリトと一緒にいたい。俺と暮らそう、リト!」


 真っ赤な頬と、燃える瞳と、ふるえる、あたたかな手に、つつまれる。


 茫然とリトはアオを見あげる。


 嘘や冗談を言う目じゃなかった。
 耳まで真っ赤になって、ふるえる手で、リトの指を握って、懸命に言葉を紡ぐアオを見あげる。

 リトはジゼの従僕だ。
 最愛の推しが、最高にしあわせになるために尽力する、ゲームのどこにも出て来ない、モブでさえない存在だ。


 リトは、ずっとずっと、ジゼの傍にいたいけれど。
 リトにできることは、ジゼを応援することだけ。

 ジゼの傍にいられることは、至上のさいわいだけれど。

 ジゼと誰かがしあわせになるところを見続けるのは、リトの胸を砕き続けるだろう。



 アオと一緒になって、しあわせに暮らして、ジゼを応援する。

 それは、最上の道に思えた。


 リトがしあわせになれる、唯一の道にさえ、思えた。



 ぎゅ、とリトは唇を噛む。


「……ごめなしぁ」


 ふるえる、ちいさな、ちいさな声に、アオの顔が歪む。


「……僕、ジゼしゃま、従僕、終生、ぉ仕え」

 リトは顔をあげる。



「僕、いちばん、だぃじ、ジゼしゃま、でし」


 一番大事にできないなら、絶対に、傷つけてしまうから。



 ジゼが誰を選んで、誰としあわせになろうと


 僕は、ジゼのものだから




「……ごめなしぁ」


 あふれる涙と、頭をさげた。





しおりを挟む
感想 415

あなたにおすすめの小説

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

【完結】僕の大事な魔王様

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。 「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」 魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。 俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ 2023/12/11……完結 2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位 2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位 2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位 2023/09/21……連載開始

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】召喚された勇者は贄として、魔王に美味しく頂かれました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢
BL
美しき異形の魔王×勇者の名目で召喚された生贄、執着激しいヤンデレの愛の行方は? 最初から贄として召喚するなんて、ひどいんじゃないか? 人生に何の不満もなく生きてきた俺は、突然異世界に召喚された。 よくある話なのか? 正直帰りたい。勇者として呼ばれたのに、碌な装備もないまま魔王を鎮める贄として差し出され、美味しく頂かれてしまった。美しい異形の魔王はなぜか俺に執着し、閉じ込めて溺愛し始める。ひたすら優しい魔王に、徐々に俺も絆されていく。もういっか、帰れなくても……。 ハッピーエンド確定 ※は性的描写あり 【完結】2021/10/31 【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、エブリスタ 2021/10/03  エブリスタ、BLカテゴリー 1位

禁書庫の管理人は次期宰相様のお気に入り

結衣可
BL
オルフェリス王国の王立図書館で、禁書庫を預かる司書カミル・ローレンは、過去の傷を抱え、静かな孤独の中で生きていた。 そこへ次期宰相と目される若き貴族、セドリック・ヴァレンティスが訪れ、知識を求める名目で彼のもとに通い始める。 冷静で無表情なカミルに興味を惹かれたセドリックは、やがて彼の心の奥にある痛みに気づいていく。 愛されることへの恐れに縛られていたカミルは、彼の真っ直ぐな想いに少しずつ心を開き、初めて“痛みではない愛”を知る。 禁書庫という静寂の中で、カミルの孤独を、過去を癒し、共に歩む未来を誓う。

紳士オークの保護的な溺愛

flour7g
BL
■ 世界と舞台の概要 ここはオークの国「トールキン」。 魔法、冒険者、ギルド、ダンジョン、獣人やドラゴンが存在する、いわゆる“典型的な異世界”だが、この国の特徴はオークが長命で、理知的な文明社会を築いていることにある。 トールキンのオークたちは、 灰色がかった緑や青の肌 鋭く澄んだ眼差し 鍛え上げられた筋骨隆々の体躯 を持ち、外見こそ威圧的だが、礼節と合理性を重んじる国民性をしている。 異世界から来る存在は非常に珍しい。 しかしオークは千年を生きる種族ゆえ、**長い歴史の中で「時折起こる出来事」**として、記録にも記憶にも残されてきた。 ⸻ ■ ガスパールというオーク ガスパールは、この国でも名の知れた貴族家系の三男として生まれた。 薄く灰を帯びた緑の肌、 赤い虹彩に金色の瞳孔という、どこか神話的な目。 分厚い肩と胸板、鍛え抜かれた腹筋は鎧に覆われずとも堅牢で、 銀色に輝く胸当てと腰当てには、代々受け継がれてきた宝石が嵌め込まれている。 ざらついた低音の声だが、語調は穏やかで、 貴族らしい品と、年齢を重ねた余裕がにじむ話し方をする。 ● 彼の性格 • 極めて面倒見がよく、観察力が高い • 感情を声高に表に出さないが、内側は情に厚い • 責任を引き受けることを当然のように思っている • 自分が誰かに寄りかかることだけは、少し苦手 どこか「自分は脇役でいい」と思っている節があり、それが彼の誠実さと同時に、不器用さでもあった。 ⸻ ■ 過去と喪失 ――愛したオーク ガスパールはかつて、平民出身のオーク男性と結ばれていた。 家柄も立場も違う相手だったが、 彼はその伴侶の、 不器用な優しさ 朝食を焦がしてしまうところ 眠る前に必ず手を探してくる癖 を、何よりも大切にしていた。 しかし、その伴侶はすでにこの世を去っている。 現在ガスパールが暮らしているのは、 貴族街から少し離れた、二階建ての小さな屋敷。 華美ではないが、掃除が行き届き、静かな温もりのある家だ。 彼は今も毎日のように墓参りを欠かさない。 それは悲嘆というより、対話に近い行為だった。 ⸻ ■ 現在の生活 ガスパールは現在、 街の流通を取り仕切る代表的な役職に就いている。 多忙な職務の合間にも、 洗濯、掃除、料理 帳簿の整理 屋敷の修繕 をすべて自分でこなす。 仕事、家事、墓参り。 規則正しく、静かな日々。 ――あなたが現れるまでは。

【完結】最強公爵様に拾われた孤児、俺

福の島
BL
ゴリゴリに前世の記憶がある少年シオンは戸惑う。 目の前にいる男が、この世界最強の公爵様であり、ましてやシオンを養子にしたいとまで言ったのだから。 でも…まぁ…いっか…ご飯美味しいし、風呂は暖かい… ……あれ…? …やばい…俺めちゃくちゃ公爵様が好きだ… 前置きが長いですがすぐくっつくのでシリアスのシの字もありません。 1万2000字前後です。 攻めのキャラがブレるし若干変態です。 無表情系クール最強公爵様×のんき転生主人公(無自覚美形) おまけ完結済み

親友と一緒に異世界転生したら俺だけ神獣だった件 ~伝説の召喚術師になったあいつの溺愛が物理的に重すぎます~

たら昆布
BL
親友と異世界転生したら召喚獣になっていた話 一部完結

処理中です...