【完結】お義父さんが、だいすきです

  *  ゆるゆ

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ちっちゃくても

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 守護帥が僕を連れてきてくれたのは、精霊界の精霊門の近くにある守護精たちの宿舎らしい。

 奢侈を厭う精霊らしく装飾を削ぎおとした真白な建物に、規則的に丸い窓が並んでいる。
 そのうちのひとつを、のぞかせてくれた。

 真白な寝台で、輝く精霊と、真っ暗な髪の者が、抱きあっている。

「…………え…………?」

「ああして魔族の精を注がれると、魔界の瘴気に少しだが耐えられるようになる。
 我らは魔族と闘うことを想定して備えているからな。面白がった魔族が、ああやって精霊を喰いにやってくる。
 ……精霊界ではありえぬと言われているが、門番たちの間では、精霊と魔族は存外仲がよい」


 ──精霊と魔族は、決して相容れないものだと思っていた。

 ぼうぜんとする僕に、守護帥はささやく。

「きみはまだこどもだ。あれは無理だ。
 だが魔族なら、リィフェルさまを救うすべを知っているかもしれん」

「ちょ……! 守護帥! 何見てんすか!」

 窓の向こうの精霊が、あふれる力にバチバチ輝きながら叫んだ。

「ああ、すまん、リィフェルさまのために、魔族に話を聞きたくてな。
 よかったよ、本格的にはじまる前で」

「はァ!?」

 あんぐり口を開ける精霊を後ろから抱きしめたのは……魔族……?

 ひとめで魅入られてしまいそうな真っ暗な瞳が、僕の真っ暗な髪と、真っ暗な瞳、真っ暗な翼と、僕の腕のなかのリィフェルに、面白そうに閃いた。


「お前、魔族か」

 人型の魔族の声を、初めて聞いた。
 低く冷たく響くのに、どこかあまい声だった。

 暴虐も、残忍も、香らない。


「あ、あなたは……魔族……?」

 ささやくように聞いた僕に、つやめく闇の髪が揺れる。


「あまり見るな。魅入られるぞ」

 守護帥の低い声に意識を取り戻す。


 一度見たら目が離せなくなるような存在だった。

 ──魂を抜かれる。

 そう言われて恐れられる意味が、ほんの少しだけ分かった気がする。


「お前、面白いな。いろんな匂いがする」

 低く甘くかすれる、聞いているだけで頭の芯がしびれてゆくような声だった。


「おとーたを、たすける方法があるなら、教えてください──!」

 叫ぶ僕に、魔族が首をかしげる。


「その精霊が? お前の父?」

 うなずく僕に、魔族の闇の瞳にかすかなひかりが走る。


「あぁ、月のが拾った魔族の子が、お前か」

「おとーたを、たすける方法を──!」

 会話する時間も惜しくて叫ぶ僕に、魔族は即答する。


「精を喰ってやれ」

「まだ子どもで、できないから聞きに来たんだろう!」

 魔族の言葉を遮るように叫んだ守護帥に、魔族はちいさな僕を見おろした。


「あぁ、ちっちゃいな」

「ちっちゃくても、僕、おとーたをたすけるためなら、何でもする──!
 どんなことでもするから、命だってあげるから、だから、どうか、おとーたを……!」

 泣き崩れる僕に、守護帥も精霊も魔族も目を見開いた。

 淡く、淡く、消えてしまいそうになるまで瘴気に侵されたリィフェルを、僕の涙を見つめた魔族が、唇の端をあげる。


「くちづけろ」





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