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しょんもり?
辺境の街に在住62年のおじいちゃんの、信頼のおしわの顔を、僕は見あげる。
たいせつな、質問は、そう!
「おぃしい、おやさぃ、おにく、くだもにょ、やさんと、やくそぅ、くみあぃ、おしぇて、くだしゃい!」
目をまるくした、おじいちゃんが、カクってなった。
「さすが、ぽて!
まちがわない買い物、たいせつだよね」
うむうむしたムニャが、拍手してくれました。
やさしいむーちゃんに、僕のほっぺは、あちあちなのです。
モァフおじいちゃんの教えをもとに、僕はやさしくて、かわいいムニャと一緒に、市場でお買い物です!
鐘の塔のまるい広場には露店が立ち並び、色とりどりの天幕が、冬の冷たい風に、はためいた。
店先には、野菜や果物、お肉やお鍋、野獣と闘うための剣や防具が並べられている。
「いらっしゃい、いらっしゃい!」
「見てってー!」
「やすいよー!」
「お兄さん、ひとつどう!?」
元気な呼び声に、ムニャがすぐに足を止めるのを、僕のちいさな手が引っぱった。
「むーちゃん、ぜんぶ、かっちゃぅ!」
「ご、ごめんね、ぽて」
しょんぼりしちゃう、むーちゃんのちいさな頭を、なでなでする。
「いっしょに、ぉかいもの、しようね」
「うん!」
なよやかな手で、うれしそうに、僕のあかぎれの手をにぎってくれた。
『広場の隅っこにある野菜屋さんの野菜が、新鮮で、あまくて、おいしいんだ。こわそうな、むきむきおじちゃんがしてるから、すぐ分かるよ』
おじいちゃんが教えてくれたとおり、筋肉もりもりのおじちゃんが、つやつや緑のお野菜を並べていた。
お顔を見あげたら、いかつい頬骨、そげた頬、いかめしい眉毛が、もしゃもしゃ、つりあがってる。
こわこわ……!
まちがいない。
おいしい野菜屋さんだ!
並べられた野菜たちは、かごに入れられて、つやつや冬の陽を弾くようにきらめいた。
土がついているのは、お野菜の鮮度を保つためだ。
僕は、知っているのです!
洗うほうが、鮮度が落ちちゃうんだよ。
えへんと胸を張った僕は、新鮮そうな、とれたてなのだろうお野菜を見回した。
僕が暮らしていた街からはずいぶん離れて北に来たみたいだけど、僕が食べていたのと、あまり違わない、かな……?
見たことのないお野菜もいくつかある。
食べ方は、おじちゃんに聞くのが一番なのです。
そして、どれを食べたいのかは、むーちゃんに聞くのです!
「おやさぃ、むーちゃん、どれ、しゅき?」
見あげたら、ムニャの凛々しい眉が、たよりなく下がった。
「……にがて……」
ぴょこんと跳びあがった僕は、いかめしいお顔をつくる。
きゅっと、ほっぺを、引きしめるんだよ。
「たべなぃと、びょーきに、なちゃう!」
いけません!
目力をこめて見あげたら、ムニャのちいさな頭が、しおしお下がった。
「……はい……」
しょんぼりする、むーちゃんのために、苦くないお野菜を選ぶのです。
もちろん、僕のためにも!
僕とむーちゃんを、しずかに見守ってくれていた、おじちゃんが、肩を揺らして笑ってる。
「苦いのが苦手なのか」
聞かれたムニャが、うなずいた。
「野菜が、全般的に……」
いかつい眉をつりあげたおじちゃんが、ちいさく笑う。
「こいつは甘くておすすめだぞ。クセがない。ゆでると、かなりやわらかくなる。生でもいけるぞ」
見たことのない、真っ白な、もこもこのお野菜を渡してくれた。
「えぃよ、あゆ?」
「たぶん。まあ、栄養のありそうなのっつったら、こっちだな」
隣に並んでいた緑の、もこもこのお野菜を渡してくれる。
「こっちは、ちっと野菜っぽいが、まあそれでも野菜としては甘くて食いやすい」
「りょうほぅ、かう?」
見あげたら、ムニャが眉をさげた。
「……ぽて先生の、おっしゃるとおりに、いたします……」
しょんもりしてる!
かわいい!
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