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え?
いつもなら、びんぼーな僕は、お野菜は、ひとつしか買えないのです。
でも、今は、むーちゃんのおかげで、おかね、じゃらじゃら!
おかねもち!
うきうき、ぴょこぴょこ跳ねそうだった僕は、思いだした。
おかねもちだからと、じゃらじゃらお金を使っていては『あぁ……!』という間にお金はなくなってしまうのです……!
お隣のお兄ちゃんが教えてくれた。
『給料日になると、お金が、どーんって、もらえるんだよ。
うはうはして、いろいろ買ったり食べたり飲んだりしてたら、3日後には『あれ……?』ってなって、1週間したら青くなって、1か月したら、水でお腹をふくらませることになるから……!』
泣いてた。
「じゃあ、店主のおすすめと、ぽてのすきな野菜を買おうか。どれがいい?」
せつなそうな顔で、それでも僕に笑いかけてくれるムニャが、お金をじゃらじゃら、とりだそうとするのを、あわあわ止める。
「しぇつやく、だぃじ!
むーちゃん、おかね、たいしぇつに、つかぅの!」
「ぽて、えらいね」
なでなでしてくれるムニャが、僕のためだけに(たぶん、きっと全然むーちゃんのためじゃない)野菜を買いまくろうとするのを止める。
「だ、だめ、ちょっと、ずつ!」
「雪のなかに入れておけば、まあまあ持つけどな。
確かに、ちょっとずつ、新鮮なのを買うのが、うまくて、栄養があるぞ」
店主のおじちゃんが、教えてくれた。
たくさんいっぺんに売りつけようとしない、やさしいおじちゃんだ。
「おじちゃん、ありがとぅ」
「おうよ。今日のおすすめは、さっきの白いのと緑のだな。寒いから、甘くなってる」
『シロサイ 1.5』
『アオサイ 1.5』
書かれた値札を見つめて、真剣に考える僕に、僕の手をにぎったムニャが首をかしげる。
「ぽて、おかねより、ちいさい金額のおかねがあるの? 0.5?」
ふるふる僕は、首をふった。
「おやしゃい、1.5、ふたつで、おかね、3まい。
1.5って、かぃてあゆ、おやさぃ、ぜんぶ、よりどり2つで、3まい!」
「へえ! そうなんだね。さすが、ぽて先生」
感心したように、僕の頭をなでなでしてくれるムニャに、目をまるくしたおじちゃんが、ムニャの服と顔を見て、納得したように、うなずいた。
「おう、ちっこいのに、よく知ってるな」
「えへへ。ぼく、おかね、なぃ、から、いつも、おやしゃい、ひとつ、しか、かぇなかったの。
おかね、1まいしかないひと、おねがい、したら、ちぃさいの、きのうや、おとついの、たべられゆ、おやさぃ、1まいで、わけて、もらえゆの、しってゆ!」
「ぽて、すごい!」
拍手してくれるムニャに、ほっぺが、あちあちだ。
ほめてもらったのも、生まれてはじめてなのに、ほめられまくり……!
「はずかち、うれちー」
もだもだする僕を抱っこしたムニャが、とろけるように笑ってくれた。
「おお。うちもやってるよ。そっちにするか?」
照れくさそうに頭をかいた、おじちゃんが後ろの箱を出してくれようとするのを、ムニャが止める。
「い、いや、今日は、新鮮なものを」
ムニャが、おかねを、じゃらじゃらさせてる……!
オトナだ──!
「ふたりで喰うなら、ちいさいのひとつずつ2枚より、3枚のほうが味もよくて量もあって、お得だぞ」
「おじちゃん、しょーばぃ、じょーず!」
「まかせろ」
むきむきの胸を反らして、おじちゃんが笑う。
僕だけなら、節約一択だけれど、細いむーちゃんに、おいしいお野菜を食べてほしい……!
値札と白と緑のお野菜の大きさを見つめた僕は、こっくりうなずく。
「1.5、ひとちゅずちゅ、おねがぃ、しましゅ!」
「おうよ。銅貨3枚だ」
「では、こちらを」
ちゃりちゃり、ふところから、おかねを取りだしたムニャが、3枚、払ってくれる。
「むーちゃん、ありがとぅ」
「ぽても、ありがとうね」
微笑んで僕の頭をなでてくれたムニャが、ちょっと切なそうに大きなお野菜を受けとって、ふところへと滑らせる。
おっきいお野菜を、ふたつも、ふところに!
むーちゃん、もこもこに、なっちゃう!
「いやいや、はいらにゃい──」
あわあわ、つっこんだのに!
はいってゆ!
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