僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

文字の大きさ
20 / 98

ぐぅう




 焼きたての、あまーい、お菓子を頬張ったら、顔がとろける。

「おかしも、はんぶんこも、しぁわせ」

「ほんとに」

 むーちゃんと、ふたりで笑えるのが、きっと、いちばんの、しあわせ。




「ぼく、やくそぅ、くみあぃ、とうろく、したいでしゅ」

 手をあげたら、ホーおじいちゃんが微笑んでくれる。

「おお、歓迎する。どれか依頼をひとつこなしてくれたら、そのときに登録しよう」

「あい! よろしく、おねがぃ、しましゅ!」

「また、お菓子とお茶をいただきに、うかがいますね」

 ムニャが微笑む。

「やくそぅ、くみあい、なのに!」

 びっくりする僕に、ホーおじいちゃんが、片目をつぶる。

「何か困ったら、困ってなくても、いつでも来るといい。
 あまーいお菓子と、お役立ち情報を、やすーい良心的な価格で、ご提供じゃ!」

 とんがり帽子を揺らして、笑ってくれた。
  


 薬草組合の扉を出たら

 リンゴーン リンゴーン リンゴーン

 近くでそびえ立つ塔から、昼の鐘の音が響いた。
 露店の皆の手が止まる。

「昼の鐘だ!」

「お店はしばらく昼休みだよー!」

『お昼休みです』
 書かれた木の板が次々にあがり、並べられていた商品がしまわれてゆく。

「焼きたての串だよー!」

「あったまる、あまーい飲み物は、いかがですかー!」

 元気になったのは、食べ物や飲み物の露店だ。
 お昼休みになった露店の人やお店の人たちが、こぞって屋台に繰りだした。


「おひゆ! あしゃごはん、なかたね。まにあわなくて、ごめんなしゃぃ」

 胸に手をあてる僕に、ムニャはぶんぶん首をふった。

「ぽてが謝ることなんて、何もない!」

 ぎゅっと僕を抱きしめてくれる。

「ぽてに任せきりで、ごめんなさい。年上の僕が、しっかりしなきゃいけないのに」

 きょとんとした僕は、首をふった。


「とし、かんけぃ、なぃの。とくぃなこと、しゅゆ。
 ぼく、むーちゃん、まもゆの!」

 ぎゅう!

 ちいさな手を、めいっぱい伸ばして抱っこしたら、夜の瞳がまるくなる。

 泣きだしそうな星の瞳で、笑ってくれる。


「……ありがとう、ぽて」

 微笑んでくれたムニャの、ちいさな頭をなでなでしたら

「ぐぅううう」

 ふたりのお腹が、仲よく鳴った。


 さっき食べたお菓子が、ひさしぶりのご飯だった。昨日の朝から食べていなかったから、ちょこっと食べると余計にお腹が減ってしまったらしい。背中とお腹がくっつきそうだ。

 僕は、いつものことだけれど、むーちゃんは、違うかも!

 ムニャのちいさなお家から、街まではかなり歩いたので、今から家に帰って、ご飯を作っていたら、お夕飯になっちゃうかも!

「むーちゃん、ごはん、たべゆ?」

「はやく家に帰ろうか」

 はずかしそうに、ほんのり赤い頬で微笑むムニャに、僕は首をふる。

「いちば、やたぃ、あゆの! ごはん、たべられゆ!」

 ムニャの瞳が、まるくなる。

「やたい?」

「ごはん、うってゆの。いちゅも、たかぃ、から、せちゅやく。
 でも、むーちゃん、はらへり、せつにゃい!」

 眉をさげたムニャが、うなずく。

「昨日の朝から、ご飯を食べていないんだ。さっきのお菓子で余計にお腹が減ったみたい……」

 ぴょこんと僕は、跳びあがる。

「ぼくと、いしょ!」

「ぽても? たいへん!」

 真っ青になるムニャを、手まねく。

 ちいさな顔を寄せてくれたムニャに、ささやいた。

「むーちゃん、ぃま、おかね、もち!
 じゃら、じゃら、しゃんなの。
 ちょとなら、ぜぃたく、できゆ!」

 そう、僕の腹へりは我慢できるけど、むーちゃんの腹へりは、せつないのです……!

「なるほど。いつも、ぜいたくは、すぐ弾けちゃうけど、たまになら?」

「しあわせ!」

「なるほど」

 笑ったムニャが、僕を抱っこしてくれる。


「よし、じゃあ、やたい? を探そう! ぽて、何が食べたい?」

 ムニャの線の細い、たおやかなかんばせを見あげた僕は、心配に眉をさげた。

「むーちゃん、ほそぃの。おにく、たべゆ?」

「ぽての方が、心配になるくらい、ずっと細いよ! お肉がいいのかな?」

 ガリガリの僕を、ムニャの腕が守るように、やさしく抱いてくれる。

「ぉにく……! めったに、たべられなぃ、ごちそー、なの」

 両頬を、両の手で包んで、くねくねする僕に、目をまるくしたムニャが、とろけて笑う。

「じゃあ、たまのぜいたくだから、お肉にしようね」

「ぜいたく……! きょう、ぜぃたく、ししゅぎ?」

 はじめて、ばっかり……!

 どきどきしちゃう僕に、むーちゃんが片目をつぶる。


「たまの、ぜいたく。ね?」

 それは、とっても、いけないことに思えるのに。

 あなたと一緒なら、こんなにあまい。





感想 60

あなたにおすすめの小説

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

姉は不要と判断された~奪うことしか知らない妹は、最後に何も残らなかった~

ゆめ@マンドラゴラ
恋愛
妹にすべてを奪われ続けてきた姉。 ついには婚約者まで狙われ、「不要とされた」。 それは、誰にとっての「不要」だったのか。 「不要とされた」シリーズ第二弾。

三人の孤児の中から聖女が生まれると言われましたが、選ばれなかった私が“本物”でした

あきくん☆ひろくん
ファンタジー
フクシア神教国では、聖女になることは最高の誉れとされている。 ある日、予言者は三人の孤児を指してこう告げた。 「この中から、一人は聖女になる」と。 長女カヤ、次女ルリア、そして三女ケイト。 社交的で人望のある姉たちは「聖女候補」として周囲に期待され、取り巻きに囲まれていた。 一方でケイトは、静かで目立たず、「何にもなれない」と言われる存在。 ――だが。 王族が倒れ、教会の治癒でも救えない絶望の中。 誰にも期待されていなかった少女が、ただ「助かってほしい」と願った瞬間――奇跡は起きた。 その日、教会は“本物”を見つける。 そして少女は、まだその意味も知らないまま、聖女として迎えられることになる。 これは、誰にも選ばれなかった少女が、神に選ばれるまでの物語。

グラジオラスを捧ぐ

斯波良久@出来損ないΩの猫獣人発売中
BL
憧れの騎士、アレックスと恋人のような関係になれたリヒターは浮かれていた。まさか彼に本命の相手がいるとも知らずに……。

運命の番なのに別れちゃったんですか?

雷尾
BL
いくら運命の番でも、相手に恋人やパートナーがいる人を奪うのは違うんじゃないですかね。と言う話。 途中美形の方がそうじゃなくなりますが、また美形に戻りますのでご容赦ください。 最後まで頑張って読んでもらえたら、それなりに救いはある話だと思います。

追放された役立たず聖女、実は国家の回復システムでした。私が消えた途端に国は崩壊、今さら泣いても戻りません。元勇者の魔王様に独占されています

唯崎りいち
恋愛
「役立たずの聖女はいらない」と国王に追放された私。 だがその瞬間、国中の“宿屋で一晩寝れば全回復する仕組み”は崩壊した。 ――それは、私の力で成り立っていたから。 混乱する人間たちをよそに、私は元勇者だった魔王様に連れ去られる。 魔王様はかつて勇者として魔物を虐げていた過去を持ち、 今は魔物を守るために魔王となった存在だった。 そして私は気づく。 自分の力は、一人を癒すだけでなく――世界そのものを支えていたのだと。 やがて回復手段を失った勇者たちは崩壊し、 国王は失脚、国は混乱に陥る。 それでも私は戻らない。 「君は俺のものだ。一生手放さない」 元勇者の魔王様に囲われ、甘やかされ、溺愛されながら、 私は魔王城で幸せに暮らしています。 今さら「帰ってきて」と言われても、もう遅いのです。

将軍の宝玉

なか
BL
国内外に怖れられる将軍が、いよいよ結婚するらしい。 強面の不器用将軍と箱入り息子の結婚生活のはじまり。 一部修正再アップになります

愛されたいだけなのに

まさお
BL
我儘令息だったノアは一回目の人生で最愛の人からの裏切りの末、殺される。 気がつくと人生が巻き戻っていて人生二週目が始まる。 しかしまた殺される。 何度も何度も繰り返した人生の中で自分が愛されることを諦めてしまう。