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きけん!
むーちゃんに『め!』されて、『きゅん♡』してしまった僕は、もじもじしちゃった……!
しかられるのも、叫ばれるのも、殴られるのも、あんなに辛くて、苦しかったのに。
むーちゃんが、しかってくれると、どきどきしちゃう……!
どうしてだろう。
考えたら、すぐにわかった。
僕のことを思い通りに、こき使おうとして、叫ばれたり、殴られるのは、苦しい。
僕のことを心配して、僕のためを思ってしかってくれるのは、うれしい。
ふわふわ熱い頬で、とくとく鳴る胸で、はじめての『しかられて、うれしい』をかみしめる。
むーちゃんが、だいすきで、どきどきが止まらない。
でもでも、りっぱなお服がだめなのは、ぜいたくだからじゃ、ないのです!
熱い頬で、僕はムニャを見あげる。
「ち、ちがぅの。りっぱな、おふく、きてると、きけん──!」
拳をにぎったら、ムニャの瞳がまるくなる。
「……あ……」
おじちゃんも、少年もうなずいた。
「だな。間違いねえ。お兄ちゃんみたいな服を着てたら、強盗が寄ってくる」
「やばいよ。まあ、この辺りは比較的、品行方正な住民が住んでるけど」
鼻をこすった少年が胸を張る。
「この地図も、ちゃんと危ないところを避けてる。だから、入り組んだ道になっちまってるんだ。さすがじいさん」
おじちゃんが笑って、僕とムニャは顔を見あわせた。
ナヒカの街は、とっても、きれいで、心配なく歩ける街、じゃなくて、ホーおじいちゃんが、選んでくれた道でした!
こわーいところも、たくさんあるということだよね。
青くなったムニャと、ぷるぷるの僕で手をつなぐ。
そしてホーおじいちゃんには、感謝の気もちでいっぱいなのです!
「あの、この辺りになじむ服を、ぽてと僕の分を、今すぐお願いできますか。多少大きくても構いません」
血の気のひいた顔で、真剣にお願いするムニャに、おじちゃんは胸を叩いた。
「もちろんでさあ。丁度、こいつが練習に縫ったのが、ありやしてね」
「れ、練習って、俺は本気で──!」
跳びあがってふくれる少年の頭をぽんぽんした、おじちゃんが笑う。
「わーかってる。でもな、売り物にするには、ちいっと縫製があまい」
指摘された少年の唇が、すねたように尖った。
わしゃわしゃ少年の頭をなでたおじちゃんが、ムニャと僕に向きなおる。
「職人としての意見だから、まあふつうに着る分には全く問題ない。生地もちゃんとしてるし、大人用と子供用、標準的な体形で縫ってあるから……まあ、ふたりとも、ぶかぶかかもしれんが、入らねえってことはねえ。
半人前の息子が縫ったのだから、お値段も勉強させてもらう」
おじちゃんは、人さし指を立てた。
「二人分で、銀貨1枚!」
飛びあがった僕の栗色の髪が、ほわほわ跳ねる。
「おやしゅい!」
目を輝かせる僕に、ムニャも少年もおじちゃんも笑った。
「お願いします」
心からの感謝とお願いをこめて胸に手をあてるムニャと一緒に、僕も胸に手をあてる。
「おねがぃ、しましゅ!」
ぼく、むーちゃんに、おふくを買ってもらえる、みたいです……!
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