僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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きけん!




 むーちゃんに『め!』されて、『きゅん♡』してしまった僕は、もじもじしちゃった……!

 しかられるのも、叫ばれるのも、殴られるのも、あんなに辛くて、苦しかったのに。

 むーちゃんが、しかってくれると、どきどきしちゃう……!

 どうしてだろう。
 考えたら、すぐにわかった。

 僕のことを思い通りに、こき使おうとして、叫ばれたり、殴られるのは、苦しい。

 僕のことを心配して、僕のためを思ってしかってくれるのは、うれしい。


 ふわふわ熱い頬で、とくとく鳴る胸で、はじめての『しかられて、うれしい』をかみしめる。

 むーちゃんが、だいすきで、どきどきが止まらない。


 でもでも、りっぱなお服がだめなのは、ぜいたくだからじゃ、ないのです!

 熱い頬で、僕はムニャを見あげる。

「ち、ちがぅの。りっぱな、おふく、きてると、きけん──!」

 拳をにぎったら、ムニャの瞳がまるくなる。

「……あ……」

 おじちゃんも、少年もうなずいた。

「だな。間違いねえ。お兄ちゃんみたいな服を着てたら、強盗が寄ってくる」

「やばいよ。まあ、この辺りは比較的、品行方正な住民が住んでるけど」

 鼻をこすった少年が胸を張る。

「この地図も、ちゃんと危ないところを避けてる。だから、入り組んだ道になっちまってるんだ。さすがじいさん」

 おじちゃんが笑って、僕とムニャは顔を見あわせた。

 ナヒカの街は、とっても、きれいで、心配なく歩ける街、じゃなくて、ホーおじいちゃんが、選んでくれた道でした!
 こわーいところも、たくさんあるということだよね。

 青くなったムニャと、ぷるぷるの僕で手をつなぐ。

 そしてホーおじいちゃんには、感謝の気もちでいっぱいなのです!

「あの、この辺りになじむ服を、ぽてと僕の分を、今すぐお願いできますか。多少大きくても構いません」

 血の気のひいた顔で、真剣にお願いするムニャに、おじちゃんは胸を叩いた。

「もちろんでさあ。丁度、こいつが練習に縫ったのが、ありやしてね」

「れ、練習って、俺は本気で──!」

 跳びあがってふくれる少年の頭をぽんぽんした、おじちゃんが笑う。

「わーかってる。でもな、売り物にするには、ちいっと縫製があまい」

 指摘された少年の唇が、すねたように尖った。
 わしゃわしゃ少年の頭をなでたおじちゃんが、ムニャと僕に向きなおる。

「職人としての意見だから、まあふつうに着る分には全く問題ない。生地もちゃんとしてるし、大人用と子供用、標準的な体形で縫ってあるから……まあ、ふたりとも、ぶかぶかかもしれんが、入らねえってことはねえ。
 半人前の息子が縫ったのだから、お値段も勉強させてもらう」

 おじちゃんは、人さし指を立てた。

「二人分で、銀貨1枚!」

 飛びあがった僕の栗色の髪が、ほわほわ跳ねる。

「おやしゅい!」

 目を輝かせる僕に、ムニャも少年もおじちゃんも笑った。

「お願いします」

 心からの感謝とお願いをこめて胸に手をあてるムニャと一緒に、僕も胸に手をあてる。

「おねがぃ、しましゅ!」


 ぼく、むーちゃんに、おふくを買ってもらえる、みたいです……!





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