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せかい
ふうわり赤くなったゴナが、うつむいた。
栗色の髪からのぞく赤い耳で、ぽそぽそ告げる。
「そ、そんなに、ほめてもらったの、はじめて、で……すげえ、うれしー。
ありがとな、ぽて」
大人よりはちいさい、けれど僕よりずっと大きな手で、頭をなでてくれた。
ムニャに逢ってから、まだ1日も経っていない。
昨日の僕は、あの人の馬車に乗せられて、凍えてしまいそうな荷台でふるえていた。
寒いのも、お腹がぺこぺこなのも、さみしいのも、殴られるのも、あたりまえだった。
それは、ほんのさっきのことなのに。
ムニャに逢った瞬間から、音をたてるように僕の世界は変わった。
あったかくて、お腹もいっぱいで、むーちゃんの隣にいられて、なでなでしてくれる。
──あなたが、抱きしめてくれる。
それだけでも、夢でさえも、見たことがないのに。
びっくりするくらい、僕に笑いかけてくれる人がいて、僕の頭をなでてくれる人がいるなんて。
なにもかもが、夢をはるか超えてゆく。
ほっぺを引っぱってみた僕は
「いひゃぃ……」
涙目になった。
「どうしたの、ぽて……!」
すぐに気づいて駆け寄ってくれるムニャが、やさしくて、だいすきで、涙がにじむ。
「ゆめ、より、うれしぃ、の」
しあわせに、こぼれる涙を、知りました。
そうっと、ムニャの手をにぎる。
ささやいたら、ムニャも自分の頬を引っぱった。
「……痛いね」
ムニャが、首をかしげる。
「痛い夢かもしれないね」
うむうむしちゃう僕とムニャに、ゴタとゴナが笑った。
「起きてるよ!」
ぽんぽん、僕の頭に、大きな手がふたつも降ってくる。
やっぱり、やっぱり、夢より、やさしい。
「ぽての採寸もするよ。ムニャは着替える?」
ゴタに聞かれたムニャは、まだちょっと、ぽやぽやした頬で、うなずいた。
「ああ、じゃあ服をいただけるかな。お代は、ふたり分で銀貨1枚だったね」
じゃらじゃらする、ふところから、なめらかに、きらきらを取りだすムニャの指は、魔法みたいだ。
……みたいじゃなくて、ほんとに魔法?
「まいどあり! 簡単になら調整できるから、おっきすぎるところがあったら、言ってくれたら直すよ。ゴナが!」
ゴタに背を押されたゴナが、よろけるように前に出る。
照れくさそうに頭をかいたゴナが、ほんのり赤い頬で笑った。
「お、おう! がんばるから、言ってくれ!」
まだちいさな、でも僕よりずっと大きな胸をたたいてくれる。
「ありがとう。着てみるね」
ほほえんだムニャは、着替え室に入った。
………………。
ごそごそしてる。
ちょっと心配になった僕は、大きな扉を見あげた。
「むーちゃん、ひとりで、できゆ? ぼく、おてつだぅ?」
扉の向こうから、あせったような、あわてたような、声が返る。
「へ、へいき。たぶん……!」
「たぶんなんだ……」
ゴナが笑って、ゴタが「こりゃ!」たしなめてる。
「うわ──!」
ムニャの悲鳴に続いて、扉が大きく
ドン──!
揺れた。
「むーちゃん──!」
悲鳴をあげた僕は、知る。
こんな声をあげたことなんて、なかった。
こんなに誰かを心配したことなんて、なかった。
こんなに胸が、ぎゅうぎゅうしたことなんて、なかった。
あなたが、しあわせをくれたから。
どきどきも、せつないも、くるしいも、降りつもって。
あなたばかりを、想うようになって。
あなただけが、世界になってく。
────────────────
ずっと読んでくださって、ほんとうにありがとうございます!
お話の雰囲気をこわしてしまってほんとうに申しわけないのですが……!
はじめての、あたらしいお服を作ってもらって、ぴょんぴょん跳ねる、ぽての動画ができたので(笑)もしよかったら!
インスタグラム @yuruyu0 絵もあがります!
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます!
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
ほのぼの、ぽて と むーちゃんのお話を、ずっと読んでくださる、あなたさま
お気に入りに入れてくださった方、いいねや、エール、ご感想を送ってくださって、応援してくださる方に、感謝の気もちで、いっぱいです。
ぽて と むーちゃんと一緒に、心から、ありがとうございます!
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