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いっしょ
僕とムニャの動きに、引きつれたり、つっかえたりするところがないか、確かめるように目を細めていたゴタが、うなずいた。
「よさそうだな。
じゃあ、薬草採取用の、頑丈な服は、身体にあわせてちゃんと縫うから。ぽてのが銀貨1枚、ムニャのは銀貨2枚だ」
「わかった」
ふところを、じゃらじゃらさせて、銀貨を払おうとするムニャを、あわあわ止める。
「むーちゃん、あと、ばらぃ! ぉふくと、ひきかえ!」
「そ、そうなの?」
きょとんとするムニャに、あんぐりしたゴタも、うなずいた。
「今払ったら、持ち逃げされちまうぞ……!」
ムニャの顔が青くなる。
「まあ信用が大事だから、店を構えてると、あんまりねえけど。
露店とかだと、金を払っちまったら、絶対いなくなるからな。気をつけろ」
こくこく、僕もうなずいた。
「みちゅけて、『おかね、はらった!』しゃけんでも、『そんなの、しらなぃ、ぷー』いわれちゃぅ……!」
「ぷ──!」
真っ青になったムニャが、ぷるぷるしてる。
後ろのゴナが、真っ赤な顔で笑いをこらえるように、ぷるぷるしてる。
「わ、わかった。すまない、その……僕はあまり物を知らなくて」
情けなさそうに眉をさげて、うつむくムニャの手を、僕のちいさな指で、つつむ。
「むーちゃんに、おしえ、られゆの、ぼく、うれしー」
熱い頬で、笑う。
「……ぽて……ありがとぅ……」
ふうわり朱に染まる頬で、ムニャが笑ってくれる。
むーちゃんが『ありがとう』笑ってくれたら
むーちゃんの役に立てたら
『生まれてきて、よかった』
心から、思う。
はじめて、思う。
つらかったこと、くるしかったことまで、むーちゃんのために生きる僕の糧となるために与えられた試練になって
すべてが、やさしく、輝きはじめる。
「せっかく、いれたんだから、飲めよ」
ゴナがお茶をすすめてくれる。
「ありがとぅー!」
ぴょこぴょこ跳ねた僕は、ふわふわ笑ったムニャと一緒に、ゴナのお茶をいただいた。
お着換えしたり、くるくる回ったりしている間に冷めてしまっていたけれど──
「おいしー! おちゃ、にかぃめ!」
笑ったら、ゴナの目がまるくなる。
「に、2回目か……!」
ボロボロだった僕の服を思いだしたのだろう、ゴナもゴタも、いたましそうに眉をさげる。
「これから、いっぱい、飲もうね」
僕の手を、ムニャが、にぎってくれる。
「ぅん! ありがとぅ、むーちゃん。ありがとぅ、ゴナ」
「へへ。2回目かあ」
鼻をこするゴナに、ムニャが微笑む。
「とってもおいしい。ありがとう」
「おうよ!」
「お茶を買ったのは、俺だから」
胸を張るゴタにも
「ありがとぅ、ゴタ!」
「おうよ!」
みんなで、笑う。
こんなに笑ったのも、はじめて。
今まで、あまり使われていなかった、ほっぺが、痛い。
きっと、しあわせの痛みだ。
「ぽても、ムニャも見たことねえけど、近くに引っ越してきたのか?
何か困ったことがあったら、言えよ」
ゴナが、僕の頭をなでてくれる。
「仕立屋ゴタを、ごひいきに!」
もみ手するゴタに、皆で笑った。
「あ、そうだ、身体を拭く布や、敷布があればお願いしたい」
切実なお顔でお願いするムニャに、うれしそうにゴタが唇をつりあげる。
「おお、あるある! ふかふかの、いいのがあるぜえ!
ホーじいさんの紹介だからな、良心的価格で、敷布2枚、布5枚で銀貨1枚だ!」
出してくれた敷布も布も、僕がさわったことがないほど、ふあふあだった。
「ほわぁ……! すごぃ!」
ちょこっと、さわって、ぴょこんと跳ねる僕に、皆が笑う。
ちょっとふくれた僕の頭を、ムニャがなでなでしてくれた。
「ぽてが、かわいくて、笑っちゃうんだよ」
「……そぅ……?」
『かわいい』
言われると、ほっぺが熱くなって、どきどきしちゃう……!
「でもでも、かわぃーのは、むーちゃんなの」
ぎゅう。
むーちゃんの手をにぎったら、もっと、どきどきしちゃう……!
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