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きゃー!
僕と手をつないだままのムニャが、空いているほうの手で、やさしい風合いの布をなでた。
「おお! ほんとだ。
ぽてが飛んじゃうくらい、ふわふわですね!」
僕の頭をなでなでしてくれたムニャが、ふにゃりと笑う。
得意そうにゴタが胸を張った。
「だろ? やっぱ、こういうところに金を使えると違うんだよ」
うむうむするゴタの前で、しっかりムニャがうなずいた。
「これは買おう。ぜひ買おう、ぽて! ふあふあだよ!」
ムニャの目が、めずらしく爛々してる。
むーちゃんは、ふあふあ愛らしいです?
でもでも、きらきら、いっぱい使っちゃったよ……!
おかねを使いすぎて、めまいがするよ……!
「しぇ、しぇつやく……」
「稼ぐから! おねがいだから!」
涙目になっちゃうムニャは、とびきりかわいいのです……!
僕、むーちゃんのお願いは、ぜんぶ、ぜんぶ、かなえたいのです──!
「ぼ、ぼく、が、がんばって、かしぇぐょ、むーちゃん!」
ちょっと涙目で見あげたら、ムニャが力強くうなずいた。
「僕も、めいっぱい、がんばるよ、ぽて!」
手をにぎりあう僕とムニャに、ゴナとゴタが肩を揺らして笑ってる。
僕も、ムニャも、しっかり採寸してもらいました!
「んー、ちっと依頼が、つまっててな……早いほうがいいよな?」
「できれば」
眉をさげるムニャといっしょに、心からのお願いを表すために僕は胸に手をあてる。
「おねがぃ、しましゅ! ぼく、おかね、かしぇが、なくちゃ!」
使いすぎちゃった!
ちょっと青い顔の僕に、ゴナもゴタも目をみはる。
「いや、さっきは、そういう気もちってことだよなー、かわいーなーと思ったけど──本気で、真剣に、ぽてが、稼ぐのか!」
『ムニャじゃなくて?』みたいな目で見つめられたムニャが、ちいさくなってる。
「そ、その、僕は、ぽてを、全力でお手伝いします……!」
「な、なるほど……!」
ゴナも、ゴタも、納得してる!
「そうか、うぅーん……」
予定表を書いた木の板と、にらめっこするゴタの手元をのぞきこんだゴナが、指をさす。
「このお客さまは、確か急ぎじゃなかったよ。ここで縫えるんじゃね?」
「おお、さすがゴナ!
よし、じゃあ、1週間後くらいに来てくれたら、何とか仕上げておくぜ!」
「俺も手伝うから! 楽しみにしててくれよな!」
ちいさな、僕よりはずっと大きな胸を叩いたゴナが、つんつんの栗色の髪を揺らして笑ってくれた。
ナヒカの街の路地裏で、誰もいないことを、道も建物の上も確認した僕が、ちっちゃな腕を天にのばす。
○をつくった僕にうなずいたムニャは、二人分の着ていた服と、大きな敷布と布を、ふところに入れる。
真っ暗な闇のなかに星のひかりがきらめくような魔力が舞いあがり、ムニャのふところに吸いこまれるように消えた。
「むーちゃん、しゅごぃ!」
ささやいて拍手する僕に、ムニャが照れくさそうな朱い頬で笑ってくれる。
見あげたら、お日さまはずいぶん傾いていた。
「わあ! ぃそがな、くちゃ! かえゆの、ぉそく、なちゃう!」
「ほんとだね……!」
ホーおじいちゃんが描いてくれた地図を確かめながら、あわあわ市場に戻った僕とムニャは、あわあわ、いちばんきれいで、いちばん良心的な価格の麦の粉の見つけるために、ふたりで、くるくる露店を回った。
「ここ──!」
ふたりで指して、ふたりで笑う。
「むぎの、こな、くだしゃい!」
「あいよー。どれにする? やすいの、まあまあ、うまたか!」
お兄さんに、にこにこされたムニャが、拳をにぎる。
「うまたかで!」
ぴょこんと僕は、跳びあがる。
「きゃ──! むーちゃん、むーちゃん、おかね、しぇつやく……!」
ちょっと涙目な僕に、ムニャが首をふる。
「ぽて、ここはおかねを使わなくちゃ……!」
「む、むぎの、こな、ぅまたか、やすぃのの、3ばぃ、の、おかね……!
ぜ、ぜぜぜぃたく、ししゅぎ……!」
ぷるぷるしちゃう僕を、ムニャが抱っこしてくれる。
「かせぐから! ぽては今、しっかり食べないと、だめ!」
ちっちゃな僕を、ぎゅうぎゅう抱きしめてくれた。
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