僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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なま




 おなべを知らない、むーちゃんも、とっても、かわいー!
 
 背伸びする僕に、ムニャが、かがんでくれる。
 ちいさなムニャの頭をなでなでした僕は、考える。

 ……お家に、おなべ、あったらいいなあ。

 ちゃんと確認しなかった僕が、いけなかったのでした。
 おなべが、なかったら困るけれど……でも、お家にあるのにおなべを買っちゃうのは、たぃへん!

 おなべ、たっかいの!
 きらきら、1枚以上しちゃう!

 たっかいおなべが、ちゃんとお家にあるのに、さらに追加で買っちゃうなんて、泣いちゃう!

 ムダ使いで大変すぎて、倒れちゃうので、ぜったい、ぜったい、だめなのです!

 ……と、いうことは?


「ぉなべ、なかったら、なましょく!」

 胸を張った。


 骨つきお肉と、麦の粉は、生食きけん。

 お野菜は、生食できるのです!

 えへん!

 誇らしく胸を張る。


「……な、なま……?」

「なみゃ!」

 そりかえる僕に、ムニャの、かっこいい頬が、ちょっぴり引きつってる。

「か、かみきれる、か、な……?」

 泣いちゃいそうなムニャは、きっと、骨つき肉を、生でかじることを想像したんじゃないかな。

 野性の、むーちゃん! かっこいー!


 ……じゃなかった。ちょっと心配になるよね。

 うむうむした僕は、胸をたたいた。

「むぎの、こなと、ぉにく、なましょく、きけん!
 ぽんぽん、いたいたに、なちゃう!」

「う、うん……!」

 こくこくうなずくムニャが、かわいい。

「ぉやさい、いどで、ょくあらって、なましょく!
 むーちゃん、おうちに、ぃど、あゆ?」

 ムニャは首をかしげる。

「あったかな?」

 知らないみたいです。

 さすが、むーちゃん!


「ぼくに、ぉみず、くれたよ? おふろの、ぉみずは?」

 くるりと闇の瞳をまわしたムニャが微笑む。

「魔導具だね」

 ぴょこんと僕は、跳びあがる。

「むーちゃん、しー!」

 ぴょこんと跳びあがったムニャが、こくこくうなずいた。

 僕は、ムニャの大きな手を、ちいさな手でつかむ。
 びっくりしたように目をまるくするムニャを、周りに人がいない、こわーい人たちもいない路地裏へと引っぱった。

 建物のうえにも、道にも人がいないことを確認してから、ムニャを手招きする。
 耳を寄せてくれたムニャに、ちいさな、ちいさな声で、叫ぶ。

「まどーぐ、とっても、たっかぃ、の!
 ゴタの、ぉみせに、あったの、だいふんぱちゅ!」

「そ、そうなんだね……!」

 ちいさな両の手をにぎった僕は、いかめしく眉をつりあげて、ちいさな、ちいさな声で、叫んだ。

「むーちゃん、ぉかねもち、なの、ひとの、いゆとこ、で、いったら、『め!』
 こわーい、おにーさん、おじちゃん、おそって、くゆ!」

 ちょっと涙目で『め』する僕に、ムニャの凛々しい眉が、しょぼんと下がる。

「……ごめんなさい、ぽて……」

 ふるふる僕は首をふった。

「むーちゃん、しらなぃ、の。しかた、なぃの!
 ひとちゅ、ひとちゅ、ぼくと、いっしょに、おぼえゆ、の!」

「……うん」

 鼻をすするムニャに手をのばしたら、かがんでくれる。
 ちいさな頭を、なでなでする。

「なかなくて、いーの、むーちゃん。
 いぃこ、いぃこ。
 むーちゃんは、とっても、やさしぃ、とっても、がんばゆ、いぃこなの!」

 ちいさな腕を、めいっぱいのばして、抱きしめる。

 ふうわり紅くなったムニャが、僕をぎゅうぎゅう抱っこしてくれる。


「……ありがとう、ぽて」

 僕の肩に、ちっちゃなお顔をうずめて、高いお鼻をすんすんする、むーちゃんが、とっても、とっても、かわいーです!




 冬の陽が傾いて、世界が茜に染まりはじめる。
 見あげたムニャは、あわてたように立ちあがった。

「買い忘れてたら、また来よう。これ以上いると家に帰るまでに真っ暗になっちゃう!」

 夜道は、きけん!
 コゾが、教えてくれたよ。

 大きなムニャの手が、僕の手をつかまえた。

 ぎゅっとにぎってくれたら、ムニャのぬくもりが、しみてくる。

「帰ろうか」

 ぴょこんと僕は、跳びあがる。


「あい!」


 いっしょの家に、ムニャと帰る。

 帰り道も、帰ったあとも、むーちゃんと、いっしょ!


 それは、なんて、あまやかで

 なんて、しあわせな


 夢のような、お話。


 夢みたいな、さいわい





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