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なま
おなべを知らない、むーちゃんも、とっても、かわいー!
背伸びする僕に、ムニャが、かがんでくれる。
ちいさなムニャの頭をなでなでした僕は、考える。
……お家に、おなべ、あったらいいなあ。
ちゃんと確認しなかった僕が、いけなかったのでした。
おなべが、なかったら困るけれど……でも、お家にあるのにおなべを買っちゃうのは、たぃへん!
おなべ、たっかいの!
きらきら、1枚以上しちゃう!
たっかいおなべが、ちゃんとお家にあるのに、さらに追加で買っちゃうなんて、泣いちゃう!
ムダ使いで大変すぎて、倒れちゃうので、ぜったい、ぜったい、だめなのです!
……と、いうことは?
「ぉなべ、なかったら、なましょく!」
胸を張った。
骨つきお肉と、麦の粉は、生食きけん。
お野菜は、生食できるのです!
えへん!
誇らしく胸を張る。
「……な、なま……?」
「なみゃ!」
そりかえる僕に、ムニャの、かっこいい頬が、ちょっぴり引きつってる。
「か、かみきれる、か、な……?」
泣いちゃいそうなムニャは、きっと、骨つき肉を、生でかじることを想像したんじゃないかな。
野性の、むーちゃん! かっこいー!
……じゃなかった。ちょっと心配になるよね。
うむうむした僕は、胸をたたいた。
「むぎの、こなと、ぉにく、なましょく、きけん!
ぽんぽん、いたいたに、なちゃう!」
「う、うん……!」
こくこくうなずくムニャが、かわいい。
「ぉやさい、いどで、ょくあらって、なましょく!
むーちゃん、おうちに、ぃど、あゆ?」
ムニャは首をかしげる。
「あったかな?」
知らないみたいです。
さすが、むーちゃん!
「ぼくに、ぉみず、くれたよ? おふろの、ぉみずは?」
くるりと闇の瞳をまわしたムニャが微笑む。
「魔導具だね」
ぴょこんと僕は、跳びあがる。
「むーちゃん、しー!」
ぴょこんと跳びあがったムニャが、こくこくうなずいた。
僕は、ムニャの大きな手を、ちいさな手でつかむ。
びっくりしたように目をまるくするムニャを、周りに人がいない、こわーい人たちもいない路地裏へと引っぱった。
建物のうえにも、道にも人がいないことを確認してから、ムニャを手招きする。
耳を寄せてくれたムニャに、ちいさな、ちいさな声で、叫ぶ。
「まどーぐ、とっても、たっかぃ、の!
ゴタの、ぉみせに、あったの、だいふんぱちゅ!」
「そ、そうなんだね……!」
ちいさな両の手をにぎった僕は、いかめしく眉をつりあげて、ちいさな、ちいさな声で、叫んだ。
「むーちゃん、ぉかねもち、なの、ひとの、いゆとこ、で、いったら、『め!』
こわーい、おにーさん、おじちゃん、おそって、くゆ!」
ちょっと涙目で『め』する僕に、ムニャの凛々しい眉が、しょぼんと下がる。
「……ごめんなさい、ぽて……」
ふるふる僕は首をふった。
「むーちゃん、しらなぃ、の。しかた、なぃの!
ひとちゅ、ひとちゅ、ぼくと、いっしょに、おぼえゆ、の!」
「……うん」
鼻をすするムニャに手をのばしたら、かがんでくれる。
ちいさな頭を、なでなでする。
「なかなくて、いーの、むーちゃん。
いぃこ、いぃこ。
むーちゃんは、とっても、やさしぃ、とっても、がんばゆ、いぃこなの!」
ちいさな腕を、めいっぱいのばして、抱きしめる。
ふうわり紅くなったムニャが、僕をぎゅうぎゅう抱っこしてくれる。
「……ありがとう、ぽて」
僕の肩に、ちっちゃなお顔をうずめて、高いお鼻をすんすんする、むーちゃんが、とっても、とっても、かわいーです!
冬の陽が傾いて、世界が茜に染まりはじめる。
見あげたムニャは、あわてたように立ちあがった。
「買い忘れてたら、また来よう。これ以上いると家に帰るまでに真っ暗になっちゃう!」
夜道は、きけん!
コゾが、教えてくれたよ。
大きなムニャの手が、僕の手をつかまえた。
ぎゅっとにぎってくれたら、ムニャのぬくもりが、しみてくる。
「帰ろうか」
ぴょこんと僕は、跳びあがる。
「あい!」
いっしょの家に、ムニャと帰る。
帰り道も、帰ったあとも、むーちゃんと、いっしょ!
それは、なんて、あまやかで
なんて、しあわせな
夢のような、お話。
夢みたいな、さいわい
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