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らくえん
たどりついたムニャのちいさなお家が、茜に染まっている。
「……明るいところで、改めて見ると、くずれそうだね」
僕をおろしてくれたムニャが、凛々しい眉をさげた。
幽霊さんが『こんにちは』しそうで心配な、ちょっと、ぼろっとしたお家だけれど、夕陽にきらめくと愛らしく見えた。
「りっぱ!」
拍手する僕にも、ムニャの眉はさがったままだ。
「……せっかく、ぽてと一緒に住むのに、幽霊屋敷だよ……」
しょんぼりするムニャに、背伸びしたら、かがんでくれる。
ぽふぽふ、ムニャの肩をたたいて、笑う。
「おそーじ、したら、きれぃ、きれぃ!」
笑ったら、ムニャも笑ってくれる。
「ぽてと一緒だと、なんでも、すてきになるね。
ぜんぶ、きらきらだ」
僕を抱っこして、笑ってくれる。
「ぼく、ぼくも!」
ぎゅう!
抱きついたら
ぎゅうう!
抱きしめてくれる。
「僕と、ぽての、すてきなお家にしようね」
とろけるように笑ってくれる。
「むーちゃんと、ぼ、ぼくの、おうち……!」
あちあちの頬で、むーちゃんの腕から跳びあがりそうな僕に、やさしい声が降ってくる。
「ぽて と 僕の、おうち!」
冬の陽に輝くちいさな家が、楽園に見えた。
楽園の扉を開けたら
ファアァアア──!
舞いあがるのは、ほこりなのです……!
白い楽園だよ。
ふあふあだよ。
ちょこっと落ちこんだムニャをはげますように、ぽんぽんする。
「むーちゃん、ぼく、がんばゆ!」
「ぼ、僕も、が、がんばる、よ……!」
自信がないらしい、涙目で、ぷるぷるしてる、むーちゃんが、とっても、かわいーです!
ほんとうは、市場から帰ってからお掃除したかったのですが、大冒険で遅くなっちゃった。
お肉屋さんも、がんばったからね。
僕が『せちゅやく!』叫んでたからじゃ、ないよ!
……た、たぶん……!
帰ったらいちばんにする、おしごと!
それは!
ほこりっぽかったので、干してあったお布団を、取りこむのです!
出かける前に、ちゃんと干したんだよ。
がんばった、僕!
「あ、朝は、ぽてが、がんばってくれたから、今度は、ぼ、僕が、がんばるよ!」
ほこりを、かき分けたムニャが、果敢にお布団を取りこんでくれる。
「むーちゃん、すごぃ!」
ぺちぺち拍手したら、とろけるように笑ってくれた。
「えへへ。僕も、役に立つ?」
「めちゃくちゃ!」
背伸びしたら、かがんでくれるムニャの頭をなでなでする。
「でもね、むーちゃん、ゃくに、たちゅ、とか、どーでも、いーの。
むーちゃんが、わらって、くれたら、ぼく、しあわせ」
ちいさなムニャの頭を抱きしめたら、夜の瞳が泣きだしそうに揺れた。
「……ぽてが、笑ってくれたら、僕も、しあわせ」
ぎゅうぎゅう、抱きしめてくれた。
お布団を取りこんだら、次の大切な任務!
それは!
「ぉなべ!」
ムニャの大きな手を、僕のちいさな手がひっぱった。
「ぉなべ、たんさく!」
思いだしたようにムニャの顔が青くなる。
「がんばらないと、今日の夜ごはんは、生食……!」
ふたりでふるえて、ふたりで笑った。
ひとりぽっちじゃない。
かみしめるたび、笑顔がこぼれる。
ムニャのちいさな家には、1階と2階があって、屋根裏部屋もついていた。倉庫になっているみたいだ。
1階には、玄関と居間と台所、2階には寝室とお風呂と書斎がある、みたいだ。
ほこりに、うずもれていて、今ひとつ分からないけれど、たぶん!
「けほけほ、くしゃん!」
「……ぽて、これは大変だよ。生食でもいいんじゃないかな……」
むーちゃんが、もう、あきらめた!
「むーちゃん、あきらめ、はやぃ!」
つっこんだ!
「僕は、あきらめる男なんだ」
髪をかきあげるムニャは、とっても、かっこいーのですが!
「ぁきらめ、たら、なま!」
「……健康に、いいんじゃないかな……?」
ぽそぽそ、してる……!
「ずぅっと、なま!」
「……あぅう……」
うなだれる、むーちゃんも、かわいいです。
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