僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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おなべ?




 おっきくて、頼りになるムニャを、僕は見あげる。

「むーちゃん、まど、あけられゆ?」

「やってみよう」

 長い腕をのばしたムニャが、ほこりで埋もれるような窓に、手をかけた。

 ガシャン──!

 ボファアア──!

「くしゅ、くしゅん!」

「ごほがは……! あ、開かないね?」

「むーちゃん、まんなか、かぎ、あゆの! くゆって、まわしゅ!」

「くるっ?」

 首をかしげたムニャが、僕を持ってくれた。
 ちっちゃな手をのばした僕が、ほこりまみれの、かたい鍵を開ける。

「うんしょ!」

 くるっ!

「おぉおお!」

 ちっちゃな手で、硬い窓を押してみた。

「わあ──!」


 窓が、開く──!


 サァア──!

 森の香りの風が吹きこんで、舞いあがるほこり──!

 ボファアァぁあアア──!

「きゃ──!」

「げほがはごへ──!」

 夜の髪も、まっしろに!

「むーちゃん!」

「へ、平気だよ。僕、つよつよだから」

 照れくさそうに、ムニャが笑う。

「むーちゃん、つよつよ!」

 ふたりで、笑う。


 ほこりにつつまれても、きらきらな、むーちゃん!

 感動している場合じゃなかった!


「むーちゃんも、ほっかみゅり、すゆの!」

 ゴナがお服につけてくれていた小さな袋に、ボロをしまってあるのです!

 むーちゃんのちっちゃいお顔を覆ってみた。

「さぃしょ、から、したら、よかった、ね。ごめんね、むーちゃん」

 ふるふるムニャが首をふる。

「僕が、よわよわで、すぐあきらめたからだよ。ごめんね、ぽて」

 ふるふる僕は首をふる。

「むーちゃん、つよつよ!」

 照れくさそうに笑ったムニャが、ちょこっと拳をかかげる。

「僕、つよつよ!」

 いっしょに拳をかかげて、ムニャと笑う。

 ふたりで笑ったら、森の風が吹きこんだ。



 ブァアァアア──!

 舞いあがるほこりで、視界が真っ白だ。


「くしゅ、くしゃん!」

「ごほ……! ほんとに、ひどいね……!」

 泣いちゃいそうなムニャのちいさな頭を、なでなでする。

 ものすごく、ほこりが舞ったけれど、強い風がほこりを吹き飛ばしてくれたらしい。

 ……向こうの部屋に流れ込んだだけみたいだけれど、台所っぽいところからは、ほこりがちょっと、少なくなったよ!

「おぉお! ちょこっと、みえゆ、よぅに!」

 しかしこれは、お手々でさわると、お手々が、大変なことになるアレなのです……!

「ぅーんと……そぅだ!」

 ボロを手にくるくる、まきつけてみた!
 手袋みたいだよ。

「むてき、ぽて!」

「ぽて、すごい!」

 むーちゃんが、ぱちぱち拍手してくれたら、ほっぺも、心も、あちあちなのです。


 さあ、お台所の探索だよ!

 まっしろな、ほこりの海を、ゆくのです!

 おなべー、おなべー♪

 あるかなー、あるかなー♪

 ほこりの山を、かき分けました!


「とだにゃ、あゆ!」

「おぉお!」

「あけゆ!」

「おぉお!」

 ボッファアア──!

「くしゅ、くしゅん!」

「ごほ……! ぽ、ぽて、苦しくない?」

「へぃき!」

 ふたりで真っ白になって、笑う。

 そーっとのぞきこんだ、戸棚のなかは、真っ暗だけど……

「なか、なんか、はいてゆ!」


「おぉお!」

「てりゃ!」

 むてきな両手で、ひっぱってみた!


「おぉおおお──!」

 おっきい!

 これは──!


 ……………………。


 ほこりまみれの、サビサビの、おなべでした……


「あぅう……!」

「これは、おなべ?」

 ムニャが、首をかしげる。

「ぉなべ。でも、さびさび、だから、ちゅかえ、ない……」


 しょんぼり、肩が落ちる。


「むーちゃん、ごめんな、しゃい。……ぼく、せちゅやく、しなかったら、きょうも、あったかい、ごはん、だった……」

 涙目でうなだれる僕を、ムニャが抱っこしてくれる。

「ぽてが、がんばってくれたから、今日も僕は生きてるんだよ」

 ムニャのおでこが、僕のおでこに、くっついた。


「ありがとう、ぽて」

 とろけるように、笑ってくれる。


「ふぇえ……!」

「わあ! な、泣かないで、ぽて……!
 ぽては、なんにもわるくないよ──!」

 抱っこして、頭をなでてくれる。


 むーちゃんの、ぬくもりが

 むーちゃんの、やさしさが


 肌に

 指に

 心に、沁みて


 涙になって、ゆくのです。






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