僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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おなべ!




 むーちゃんは、とびきり、やさしい。

 だからこそ、よけいに、むーちゃんに、ひもじい思いをさせてしまうことが、せつない。

「ふぃい……!」

「ああ、ぽて……! 泣かないで……!
 僕も、泣いちゃう……!」

 ぐすぐす鼻をすするムニャに、あわあわ僕は目をこする。

「ご、ごめんな、しゃい、むーちゃん」

 ムニャはぶんぶん首をふった。

 何度もふった。


「ぽては、なんにも、わるくない!」

 叫んだムニャは、サビサビの、おなべを見つめる。


「これって、こういう形で、金属であればいいのかな?
 ほこりまみれじゃなくて、この、へんな茶色いのが、なければいい?」

 首をかしげるムニャに、うなずく。

「ひに、かけられたら、なんでも、いーの。
 きんじょく? ぴかぴかの、こーゆーの」

「なるほど」

 うなずいたムニャは、自分の影に手を入れた。

 ひらりと長い指がひるがえる。

 ムニャの手に現れたのは、ふしぎな、ぴかぴかの壺だ。

「お湯ができる魔導具なんだけれど、これって、おなべになる?」

「おぉおお……!」

 拍手する僕に、ムニャが胸を張る。

「僕、役に立った?」

 僕はムニャを見あげる。

「むーちゃんは、むーちゃんなだけで、しゅごぃの。
 ね?」

「……でも、ぽての役に、立ちたいよ」

 ぎゅう

 抱きしめてくれるムニャの背に、手をのばす。

 ぎゅうう

「……ぼくも、むーちゃんの、やくに、たちたぃ……」

「おそろい。ね?」

「うん!」

 あちあちのほっぺを、くっつけて、ふたりで笑う。

「むーちゃん、これ、おやさぃ、と、ぉにく、いれたら、こわれ、ちゃう? おみず、だけ?」

 ムニャは首をかしげた。

「水を沸かす魔導具としか聞いてないんだけれど……お野菜やお肉を入れてもいいんじゃないかな?」

 むーちゃんが、てけとーです!

「こ、こわれちゃったら、たぃへん……! まどうぐ、とっても、たっかぃ、の!」

 ぷるぷるする僕に、ムニャは笑った。

「これが壊れたら、お湯を沸かせばいいだけだよ。直してくれる人もいるかもしれないし。
 お湯しか沸かせない魔導具より、お料理ができる魔導具のほうが、ずうっといい。
 やってみよう、ぽて!」

 きらきらの瞳で、笑ってくれる。

「……ぃいの? むーちゃん……」

「ぽてとするなら、失敗も、楽しい」

 星のきらめく夜空の瞳で笑ってくれた。


「ありがとう、むーちゃん……!」

 こしこし目をぬぐった僕は、お台所を、むてきな両手で探索!


「おぉお!」

 包丁を見つけた!

 ……ほこりとサビで、どろどろでした……


「おぉお!」

 まな板を見つけた!

 ……ほこりとカビで、ドロドロでした……


「あぅう……!」

「ちいさな剣ならあるよ」

 ムニャが影に手をいれる。
 宝玉のついた短剣が輝いた。

「ぴゃ──! すごぃ、むーちゃん!」

「手切れ金だから」

 首をふるムニャの瞳が、さみしくて、僕は大きな身体を抱きしめる。

「ぼくが、いりゅ」

「……ありがとう、ぽて」

 かすれる声で、あたたかな腕で、ぎゅうぎゅう、抱きしめてくれた。





「……お、おぉおおお……!」

 ふるえる手で、ぴかぴかの短剣と、ぴかぴかの魔導具で、お夕飯をつくるよ……!

「きゃ──! き、きんちょー、しゅりゅ!」

「こわれても、平気だから。やってみよー!」


 むーちゃんが、とっても、元気です!

 さすが、むーちゃん!





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