僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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しあわせのときも




 お野菜も、骨も、お肉も洗ったよ。

 その前に洗っておかなきゃだった!

 あわあわ僕は、ムニャを見あげる。

「むーちゃん、ぉなべも、ありゃうの!」

「お水がいるんだね。出すね」

 ムニャが、しゅわしゅわ出してくれるお水で、ぴかぴかの魔導具をていねいに洗う。

「なかにも、おみず、くだしゃい」

「はい!」

 しゅわしゅわ入れてくれたら、きれいに洗った骨を、どぼん!

「むーちゃん、おなべ……まどぅぐ、あっため、られゆ?」

「やってみるね」

 きらきらの壺についた、ふしぎな赤い石に、ムニャの長い指がふれる。

 パァアアア──!

 赤い光が舞いあがった、次の瞬間

 グラグラグラ──!

「も、もぅ、わいちゃた!」

 びっくりする僕に、ムニャがうなずく。

「水を沸かす魔導具だからね。これでいいのかな?」

 ふるふる僕は、首をふる。

「よわび! えとえと、かねちゅを、よわく、ちーさく、してくだしゃい!」

「はい、ぽて博士!」

 笑ったムニャが、指からあふれる光を押さえてくれる。
 赤い光が弱くなり、ことこと壺のなかで骨が煮えてゆく。

「わあ……! いい匂い」

 ムニャの高い鼻が動いて、僕は笑う。

「コゾのぉにく、ほにぇも、しんしぇん、なの! くしゃく、ないね。よかた!」

 骨をことこと煮ながら、僕は洗った野菜を、ぴかぴかの短剣で切り分けた。

「あくをー、しゅくうー……おたま! と、しょっき! きゃ──!」

 あわあわする僕に、首をかしげたムニャが、影に指をのばす。
 ぴかぴかの宝玉のついたちいさな器が現れた。

「これ?」

「きゃ──!」

 短剣と、おそろいの、ぴっかぴっか!

 のけぞる僕に、ムニャの眉が、さみしげに下がる。

「ちがった?」

「う、うぅん! ご、ごぅかで、ぼく、びっくり、したの……」

 ……むーちゃん、ましゃか、これを、お玉に……?

 宝石、ぴっかぴっかだよ……?


「飾りがちょっと邪魔だけど、使えるんじゃないかな」

 にこにこするむーちゃんが、じゃまって言った……!

「はぅう……!」

「だめ?」

 ぶんぶん僕は首をふる。

「え、えと、えと……じゃあ……」

 ぴかぴかの宝石のついたお椀を、ムニャが出してくれた水でていねいに洗ってから、アクをすくいました……

 宝玉が、アクまみれに……!

「洗えば落ちるよ」

 むーちゃんが、にこにこしてる!


「むーちゃん、つよつよ……!」

 驚嘆する僕に、ムニャの瞳が瞬いた。

「そ、そうかな? 僕、つよつよ?」

「とっても!」

 ムニャを抱っこして、ふたりで笑った。


「おぉ? にゃんか、よく、にえてゆ、きが、すゆ!」

 お鍋……魔導具のなかをのぞきこんだ僕は、首をかしげる。

「いいこと?」

 ムニャも僕と一緒のほうに首をかしげて、僕はこっくりうなずいた。

「じたん! しゅごぃ、むーちゃん!」

「時短? すごいね、ぽて!」

 ふたりで手をつないで、ふわふわ笑う。


 切ったお野菜を入れて、しばらく煮てから、お肉を入れる。

「たぶん、しゃっと、にた、ほうが、やーらかくて、おいしーの。いっぱい、にちゃうと、かすかす、に……!」

「さすが、ぽて博士!」

「えへへ」

 浮かんでくるアクを、宝石の器で、とりとりして、ムニャに水を出してもらって、洗う。

「よかった。使い道があって」

 アクとりになった器に、むーちゃんが、満足そうです……!

 さすが、むーちゃん!


「おお、はやぃ! もう、にえて、きたよ」

 こっくり煮えてきたお肉とお野菜の香りが、辺り一帯にくゆりはじめる。

「いい匂い」

 ムニャが笑ってくれたら、どきどきする。


「とろとろ、にえたら!」

 さっき、むーちゃんの、すごわざのおかげで摘めた香草を入れる。

 さわやかな香りが立ちのぼる。


「わあ……!」

 ムニャの瞳が輝いた。

 さっと煮えたら、できあがり!


「むーちゃん、たべて」

 きらきらのお椀で、すくったら、ムニャが首をふる。

「ぽてが先」

「むーちゃんが、さきにゃの!」

 ふたりで、ぷっくりして、ふたりで、笑う。


「じゃあ、いっしょに食べよう!」

 ふたりで、ほっぺをくっつけて、ふたりで、お椀を傾けた。

「あちち……!」

 ふたりで、目をみはる。


「おいし──!」

 あちあちのほっぺで、ふたりで笑った。


「コゾのぉにく、おじちゃんの、おやさい、おいしー!」

「ぽてが摘んでくれた香草が、とっても香り高いよ。お野菜もお肉も、あまくなるみたい」

 きっと高価な食事を食べ慣れているだろうに、お野菜とお肉を切って煮ただけのお料理に、とろけるようにムニャが笑ってくれる。

「ふぇえ……!」

「ど、どうしたの、ぽて……!」

 泣きだした僕に、びっくりしたみたいに、ムニャが抱っこしてくれた。


 むーちゃんの香りが、沁みてくる。

 むーちゃんの、ぬくもりが、沁みてくる。


「……ぼく、うれしぃ……」

 あなたの、隣が、うれしくて


 涙が、あふれた。



 かなしいとき、くるしいときばかりじゃない。


 しあわせなときも、涙はあふれるんだね、むーちゃん。







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