僕の、しあわせ辺境暮らし

  *  ゆるゆ

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おやしゅみ、なしゃい




 きれいにおなべ……ぴかぴか魔道具を洗って、食器……ぴかぴかの宝石を洗ったら、ほこりまみれだけれど、ムニャと僕の楽園なお家に帰還です!

 2階にあるムニャの寝室の隣にお風呂がついていて、真白な石でつくられているみたいです?

「いし、なのに、ぬくぬく?」

 首をかしげる僕に、ムニャも首をかしげる。

「お風呂だからね」

 そ、そういうものなのかな??

「ぼく、ぉふろ、しらなぃ、の。
 むーちゃん、ごめんなしゃぃ」

「ぽてが謝ることなんて、なにもない!
 僕のほうこそ、お風呂に入ってたくせに、お風呂のこと、あんまり知らない」

 胸を張る、むーちゃんが、さすがです!

「赤い魔石にふれると、お湯が出て、青い魔石にふれると水が出るんだよ」

「ぬくぬくと、ちべたい!」

「そうそう」

「むーちゃん、しゅごい!」

「えへへ」

 うれしそうに胸を張る、むーちゃんが、めちゃくちゃかわいー。

「これが湯船、昨日も一緒につかったよね」

「あい!」

「赤いお花のお皿のが髪を洗う、せっけんで、白いお花のお皿のが身体を洗う、せっけん」

「あい!」

「今日は、ひとりで洗ってみる?」

「むーちゃんの、かみ、あらって、あげゆ!」

 両手をあげる僕に、ムニャがとろけて笑った。

「ちょっと、はずかしいけど」

 赤い頬で、もじもじするムニャが、かわいー!

「むーちゃん、おほしさま、みたぃ」

 きゅう。

 抱っこしたら、ふうわりムニャの頬が朱くなる。

「……うれしぃ、けど……かっこいー、が、いい……」

 すねたみたいに、ムニャの唇が、ほんのりとがる。

「えへへ。むーちゃん、とびきり、かわいー!」

 ふるふるムニャが、首をふる。

「かっこいー、が、いーの!」

 ぷっくり、むーちゃんは、やっぱり

「かわいー!」

 なでなでしたら、ふくれたムニャが、涙目だ。

 やっぱり、むーちゃんは、とびきり、かわいーのです!




 赤いお皿のせっけんを泡立てて、つやつやの夜の髪を、ふわふわの泡でくるむ。

「むーちゃんの、かみ、ほしのそら、ね」

 やさしくなでたら、ムニャの瞳が、さまよう。

「……ぽては……僕の髪にふれるの、きもち、わるく、ない……?」

 揺れる、ささやきを、抱きしめる。

「むーちゃんのかみ、とっても、きらきら。
 ぼく、だぃしゅき!」

 なでなでして、笑う。


 むーちゃんの、さみしさが、くるしみが、かなしみが、一滴でも、癒えるように。

 ふわふわの湯気みたいな、あったかい気もちになってくれるように。


「……ありがとう、ぽて……」

 ムニャの頬を伝う涙を、すくおうとした指は、せっけんの泡々だ。

「あわあわ!」

 あわてて

「ふー!」

 とばしたら、白い泡が、湯気に舞う。

「わあ!」

 ムニャが、笑ってくれる。


「ぼくが、いりゅ。
 むーちゃん、だぃしゅき」


 何度でも、伝える。

 何度でも、抱きしめる。


 あなたの傷が、癒えるように。

 やさしい『僕がいる』が、降るように。

 あったかい『だいすき』で、つつまれるように。


「ぽて、だいすき」

 ぎゅうぎゅう抱きしめてくれるムニャの肩が、涙にふるえる。

 真っ白な湯気と、真っ白な泡といっしょに、ちいさな手で、抱きしめた。




 やさしくムニャの髪を洗い流したら、僕の髪を、ムニャが洗ってくれる。

「ぽての髪、ふあふあ!」

「? ぼく、じゅーっと、ガシガシ、なの……」

 井戸のお水は、ちべたかった!

 しょんぼり眉をさげる僕を、ムニャが抱っこしてくれる。

「ふあふあだよ、ぽて」

 夜の瞳で、笑ってくれる。

 ふたりでお互いの背中を流して、いっしょに、ぬくぬくのお風呂に入って、ほかほかにあったまる。

「まいにち、ぉふろ、ぜぃたく、しゅぎゆ……!」

 ぷるぷるしちゃう僕の髪を洗って、ムニャが笑った。

「寒かったから、あったまらないと、風邪をひいちゃう。身体もあちこち痛くなっちゃうよ」

「ぼく、いちゅも、ぃどの、ぉみずで、あらってた」

 ぎゅっと顔をしかめたムニャが、僕をぎゅうぎゅう抱っこしてくれる。

「これからは、ぽてに、いっぱい、いっぱい、ぜいたくさせてあげるから──!」

「きゃ──!」

 あわあわした僕は、ムニャを抱きしめる。

「ぼくも、むーちゃんに、ぜぃたく、させて、あげられゆ、ように、がんば、ゆ──!」

 できる気がしないけれど……!
 希望だけは──!

 ちょっと涙目な僕を抱っこして、ムニャが微笑む。


「ふたりで、もっと、しあわせになろうね」

 ふるふる僕は首をふる。


「もう、いっぱぃ、しゅぎゆ、くらぃ、しあわせ」


 むーちゃんを抱っこして、笑った。






 ゴナとゴタがやさしい価格で売ってくれた、ふあふあの敷布に包まれて、ふたりで眠る。

 あなたと一緒なら、とびきりやさしい夢が、見られる気がする。



 むーちゃんと出逢ってから、たったの1日で、僕の世界は、しあわせに染まりました。


 ……あぁ、ちがう。


 あなたに逢った瞬間から、僕のしあわせは、はじまったのです。







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